ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)とは?

ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)は、成人のADHD(注意欠如・多動症)の症状を本人が自己評価するためのスクリーニング検査です。

成人ADHDでは、「集中できない」、「忘れ物が多い」、「片付けが苦手」、「仕事を最後まで終えられない」、「落ち着きがない」などの症状がみられます。

しかし、これらの症状は本人にとって当たり前になっていることも多く、自覚しにくい場合があります。

ASRSは、そのようなADHDの特徴を簡便に評価するために開発された質問票であり、現在世界中で広く利用されています。

どのようにASRSは作られたのか

ASRSは、世界保健機関(WHO)とKesslerらによる成人ADHD作業グループによって開発されました1)。

質問項目は、アメリカ精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第4版改訂版(DSM-IV-TR)』におけるADHD診断基準に基づいて作成されています。

そのため、成人ADHDのスクリーニング尺度として高い信頼性が報告されています。

ASRSでわかること

ASRSはADHDの可能性を評価するためのスクリーニングツールです。

しかし、「ADHDらしい特徴があるかどうか」を調べることはできますが、ASRSのみでADHDと診断することはできません2)。

ADHDの診断には、

  • 幼少期から症状があったか
  • 学校生活や仕事に支障があるか
  • 他の病気で説明できないか

などを含めた専門的な診察が必要です。

ASRSの構成

ASRS-v1.1は18項目で構成され、

  • パートA(6項目)
  • パートB(12項目)

に分かれています。

各項目について、過去6か月間の状態を以下の5段階で評価します。

  • 全くない
  • めったにない
  • ときどき
  • 頻繁
  • 非常に頻繁

パートA(6項目)

パートAは、成人ADHDのスクリーニングに特に有用な質問で構成されています。

質問項目

  • 1. 難しい部分は終わったのに、最後まで仕上げることが困難だったことがありますか。
  • 2. 計画性を要する作業を順序立てることが困難だったことがありますか。
  • 3. 約束や用事を忘れたことがありますか。
  • 4. 集中力を必要とする課題を避けたり先延ばししたりすることがありますか。
  • 5. 長時間座っている際に手足をそわそわ動かすことがありますか。
  • 6. 何かに駆り立てられるように活動的になることがありますか。
ASRS パートA

パートB(12項目)

パートBは、注意力の問題や衝動性、多動性が日常生活にどの程度影響しているかをより詳しく評価するための補足的な質問群です。

診察では、パートAだけでなく、パートBの内容も参考にしながら総合的な評価を行います。

ASRS パートB

結果の見方

パートAでは、各設問ごとに定められたカットオフがあります。

6項目中4項目以上が基準を満たす場合、成人ADHDの可能性が示唆されるとされています。

感度は68.7%、特異度は99.5%と報告されています1)。

点数をつける代替スコアリング法では、以下のようにパートAの質問に配点します3)。

  • 全くない:0点
  • めったにない:1点
  • ときどき:2点
  • 頻繁:3点
  • 非常に頻繁:4点

配点は、0~24点でカットオフ値は14点が妥当とされています4)。

ただし、これは診断を意味するものではありません。

ASRSで陽性ならADHDなのか?

ASRSで陽性となっても、必ずしもADHDとは限りません。

例えば、

  • うつ病
  • 不安症
  • 双極症
  • 睡眠障害
  • ストレス
  • 認知機能の低下

などでも、ADHDに似た症状がみられることがあります。

逆に、ADHDであってもASRSのみでは、十分に検出できない場合があります。

そのため、ASRSはあくまで「受診の参考となるセルフチェック」と考えることが大切です。

ASRSの強み

① 短時間で実施できる

ASRSは18項目(短縮版は6項目)で構成されており、5分程度で回答できます。

成人ADHDの特徴を効率よく把握できる

ASRSは、

  • 不注意
  • 多動性
  • 衝動性

といった、成人ADHDの代表的な症状をバランスよく評価できます。

特に短縮版(ASRS Part A)は、ADHDの可能性が高い人を見つけるスクリーニングとして高い精度が報告されています。

② 世界中で使用されている

ASRSはWHO(世界保健機関)の協力のもとで開発され、多くの国で翻訳・検証されています。

加えて、日本語版についても信頼性・妥当性が確認されており、日本人にも使用できる質問票です。

③ 診察のきっかけになる

例えば「仕事でミスが多い」、「忘れ物が多い」、「集中できない」といった症状が、ADHDによるものかどうかを考えるきっかけになります。

中でも、早期受診につながる点もASRSの大きな利点です。

ASRSの限界

① 診断を確定する検査ではない

最も重要なのは、ASRSだけではADHDと診断することはできません。

特に、ASRSはあくまでスクリーニング検査であり、

  • 幼少期から症状があったか
  • 日常生活への影響
  • 他の精神疾患との区別

などを医師が総合的に評価する必要があります。

② 他の精神疾患でも点数が高くなる

ADHDではなくても、

  • うつ病
  • 不安症
  • 双極症
  • 睡眠不足
  • ストレス

などによって集中力が低下すると、ASRSの点数が高くなることがあります。

そのため、ASRSだけでADHDとは判断できません。

③ 自己評価である

ASRSは本人が回答する質問票です。

そのため、

  • 自分の症状を過小評価する人
  • 逆に過大評価する人

もいます。

そのため、家族や職場からの情報が診断の参考になることもあります。

④ 子どもの頃の症状は十分評価できない

ADHDは発達障がいであり、12歳以前から症状が存在していることが診断上重要です。

しかし、ASRSは、現在の症状を中心に評価するため、幼少期の様子までは十分に把握できません。

そのため、WURS(ウェンダー・ユタ評価尺度)など幼少期を振り返る質問票を併用することがあります。

ASRSを受ける際のポイント

ASRSで高得点だったからといって、必ずしもADHDとは限りません。

一方で、点数が低くてもADHDを完全に否定できるわけでもありません。

そのため、ASRSは「診断するための検査」ではなく、「ADHDの可能性を調べるための入り口」と考えることが大切です。

気になる症状がある場合は、精神科や心療内科などの専門医に相談し、必要に応じて詳しい診察を受けることをおすすめします。

参考

  • 1)Kessler RC, et al.: The World Health Organization Adult ADHD Self-Report Scale (ASRS): a short screening scale for use in the general population. Psychol Med, 35: 245-56, 2005.
  • 2)ADHDの診断・治療方針に関する研究会, 齊藤 万比古.: 注意欠如・多動症-ADHD-の診断・治療ガイドライン 2019.
  • 3)Kessler RC, et al.: Validity of the World Health Organization Adult ADHD Self-Report Scale (ASRS) Screener in a representative sample of health plan members. Int J Methods Psychiatr Res, 16: 52-65, 2007.
  • 4)van de Glind G, et al.: Validity of the Adult ADHD Self-Report Scale (ASRS) as a screener for adult ADHD in treatment seeking substance use disorder patients. Drug Alcohol Depend, 132: 587-96, 2013.

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執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医