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044-455-7500ADHD(注意欠如・多動症)というと、
といった不注意・多動性・衝動性を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし近年、ADHDについて考える際には、このような中心症状だけでなく、一緒に生じやすい精神疾患や身体的な健康問題にも目を向けることが重要と考えられています。
2024年、KangらはADHDとさまざまな健康状態との関連について、これまでに行われたメタ解析をさらに統合したアンブレラレビュー(umbrella review)を発表しました1)。
この研究は、一つの臨床試験や観察研究ではありません。
複数の研究を統合した「メタ解析」を、さらにまとめて評価するアンブレラレビューです。
研究では、
という非常に大規模なデータが検討されました。 さらに、単に「関連があった・なかった」だけでなく、GRADEという方法を用いて、それぞれの結果についてエビデンスの確実性も評価しています。
まず、精神科診療で重要なのが他の精神疾患との関連です。
研究では、ADHDと複数の精神・神経学的状態との間に以下の関連が認められました。

特に、双極性障害、統合失調症、パーソナリティ障害については、エビデンスの確実性が「High」と評価されました。
うつ病についてもOR 3.00という有意な関連が認められ、エビデンスの確実性は「Moderate」でした。
ただし、この数字には注意が必要です。
例えば、
「ADHDがあると、ADHDが原因となって双極性障害を5.88倍発症する」
という意味ではありません。
OR(オッズ比)は、この研究ではADHDとそれぞれの健康状態との関連の強さを示す指標として理解する必要があります。
興味深い結果の一つが、pragmatic language skills(語用論的言語能力)です。
ADHDでは、
という関連が認められ、エビデンスの確実性はHighでした。
語用論的言語能力とは、単純に「言葉をたくさん知っている」ということではありません。
例えば、
といった、社会的な場面で言語を適切に使用する能力に関係します。
ADHDを理解するうえでは、不注意や衝動性だけでなく、こうしたコミュニケーションの側面にも注意する必要があることを示唆する結果です。
現在までの研究で、ADHDでは、睡眠に関するさまざまな問題との関連も報告されています。
今回の研究では、
などとの関連が示されました。
このうち、夜間覚醒との関連についてはHigh certaintyと評価されています。
一方で、睡眠関連の結果の中にはエビデンスの確実性が低いものもあります。
そのため、
「ADHD=睡眠障害」ではありませんが、ADHDの診療では睡眠状態について確認することも重要
と考えるのが適切といえます。
ADHDと身体的な健康状態との関連も報告されています。
代表的なのが肥満と2型糖尿病です。
2型糖尿病
成人の肥満
でした。
特に成人の肥満との関連についてはHigh certaintyと評価されました。
著者らは考えられる背景の一つとして、ADHDにみられることがある計画、整理、意思決定などの実行機能の問題が、食生活や身体活動などの生活習慣に影響する可能性を挙げています。
ただし、これについても「ADHDが肥満を直接引き起こす」と証明されたわけではありません。
ADHDとアレルギー関連疾患との関連も検討されています。
今回の研究では、
との関連が示されました。
特に、小児・青年期の喘息との関連はHigh certaintyと評価されています。
著者らは、慢性的なストレスに関連した免疫反応や炎症、さらに共通する遺伝的要因などを、こうした関連を説明する可能性のある要因として挙げています。
今回の研究では、視覚に関する関係についても研究され、以下のような結果でした。

このうち、乱視・遠視・斜視についてはエビデンスの確実性がHighと評価されています。
ADHDというと脳や行動の特徴に注目しがちですが、こうした結果は身体的な健康状態にも幅広く目を向けることの重要性を示しています。
精神科診療において特に注意すべき結果が、自殺関連行動との関連です。
研究では、以下の関連が報告されました。

特に自殺念慮についてはHigh certaintyと評価されています。
ただし、ここでも注意が必要です。
この結果から、
「ADHDそのものが自殺を直接引き起こす」
と結論づけることはできません。
ADHDには他の精神疾患が併存することがあり、心理社会的な要因なども関係します。
それでも、自殺念慮などとの関連が示されていることは、ADHDを診療する際に現在の気分や希死念慮などについても適切に評価することの重要性を示す結果と考えられます。
今回検討された76の健康状態のうち、次の12項目についてHigh certaintyのエビデンスが認められました。
です。
精神疾患だけでなく、睡眠、代謝、歯科、眼科、アレルギーなど非常に幅広い領域が含まれていることが分かります。

今回の研究から見えてくる重要なポイントは、
ADHDを不注意・多動・衝動性だけの問題として捉えないこと
だと思います。
ADHDでは精神疾患だけでなく、
など、幅広い健康状態との関連が報告されています。
そのため著者らは、ADHDのある人を診療するときには、精神・神経疾患だけでなく、睡眠、自殺関連、代謝、筋骨格、口腔、アレルギー、視覚なども含めた包括的・全人的な評価が重要であると結論づけています。
今回の研究で示されたのは基本的にADHDとさまざまな健康状態との「関連」です。
因果関係が証明されたわけではありません。
研究には小児・青年と成人など異なる集団が含まれており、横断研究と縦断研究も混在していました。そのため著者らも、ADHDと各健康状態の時間的な前後関係を明確にすることが難しいとしています。
さらに、76のメタ解析のうち34.2%では大きな異質性があり、20.5%では出版バイアスの統計学的証拠が認められました。
したがって、
「ORが高い=必ずその病気になる」
という解釈は適切ではありません。
2024年に発表された大規模アンブレラレビューでは、22件のメタ解析、544件の一次研究、76種類の健康状態、2億3,400万人以上のデータが検討されました。
その結果、ADHDは、
双極性障害・統合失調症・パーソナリティ障害・うつ病などの精神疾患
だけでなく、
睡眠問題、肥満、2型糖尿病、喘息、視覚異常、自殺関連行動など
幅広い健康状態と関連することが示されました。
特に、双極性障害、パーソナリティ障害、統合失調症、語用論的言語能力、夜間覚醒、肥満、初期う蝕面、乱視、遠視、斜視、喘息、自殺念慮の12項目については、エビデンスの確実性がHighと評価されています。
ADHDの診療では、不注意・多動・衝動性だけを見るのではなく、こころと身体の両方を含めて、その人が抱えている困難を総合的に評価することが重要と考えられます。
1)Kang J, et al.: Comorbid health conditions in people with attention-deficit/hyperactivity disorders: An umbrella review of systematic reviews and meta-analyses. Asian Journal of Psychiatry, 99:104135, 2024.
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