AQ-J(自閉スペクトラム指数日本語版)とは?

AQ-Jは、自閉スペクトラム症(ASD)の特性を評価するための自己記入式質問票です。

もともとは、サイモン・バロン=コーエンらが2001年に開発したAQ(Autism-Spectrum Quotient:自閉症スペクトラム指数)を、日本語化・標準化した尺度です 1)。

AQ-Jの目的

AQ-Jは、ASDかどうかを診断する検査ではなく、ASD特性を評価するスクリーニング尺度です 1)。

そのため、AQ-JだけでASDと診断することはできません。

質問数

AQ-Jは50項目で構成されています。
回答は以下の4件法です。

  • あてはまる
  • どちらかといえばあてはまる
  • どちらかといえばあてはまらない
  • あてはまらない

評価する領域

AQ-Jは以下の5つの領域を評価します。

① 社会的スキル

  • 一人でいる方が楽
  • 初対面の人との会話が苦手

② 注意の切り替え

  • 予定変更が苦手
  • 同時に2つ以上の作業をすることが苦手

③ 細部への注意

  • 小さな違いによく気づく
  • パターンを見つけるのが得意

④ コミュニケーション

  • 会話の意図を理解しにくい
  • 冗談や皮肉が分かりにくい

⑤ 想像力

  • 架空の状況を想像することが苦手
  • 他人の立場を想像しにくい

採点方法

各項目は以下のように採点します。総得点は0~50点になります。

  • ASD特性あり → 1点
  • ASD特性なし → 0点

カットオフ

AQ-Jのカットオフは33点と日本語版で設定されています。

しかし、2023年のYoshinagaらの、アメリカ精神医学会のDSM-5をもとにASDと診断した群と定型発達群のAQ-Jスコアを比較解析した研究では、カットオフ23点で感度92.9%、特異度85.7%となり、最適値であると報告しています 2)。

このため、33点は1つの目安であると考えるのが望ましいです。

AQ-Jの限界

① 診断はできない

AQ-J高得点=ASDではありません。

② ADHDでも高得点になる 3)

ADHDでも以下の要素から、AQ-Jが高くなることがあります。

  • 対人トラブル
  • コミュニケーションの困難

③ 社交不安症でも高得点になる 4)

社交不安症の人は以下の理由でAQ-Jが高くなることがあります。

  • 人付き合いを避ける
  • 会話が苦手

④ うつ病や不安症の影響を受ける

気分状態によって回答が変化することがあります。

ADHD+ASDとADHDの鑑別スクリーニングにおけるAQ-J

ADHDでは、AQ-Jの得点は高い傾向になり、また、ADHDとASDの併存は多いことがわかっています。

AQ-Jの総得点のみでは、ADHD+ASDとADHDの鑑別スクリーニングにはならないものの、想像力の指標が鑑別になると報告されています5)。

ADHD単独よりも、想像力の点数が、ADHD+ASDでは高くなり、それ以外の指標では差がみられません(図1)。

図1 ADHD単独とADHD+ASDのAQ-Jの下位尺度の異なり

ADHD+ASDとASDの鑑別スクリーニングにおけるAQ-J

ADHD+ASDとASDの鑑別スクリーニングでは、細部への関心の得点が、ASD単独よりADHD+ASDで高くなることが報告されています6)。

それ以外の指標では差はみられず、鑑別の1つの指標になるとされています(図2)。

図2 ASD単独とADHD+ASDのAQ-Jの下位尺度の異なり

文献

  • 若林 明雄, 他.: 自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版の標準化-高機能臨床群と健常成人による検討-. 心理学研究, 75: 78-84, 2004.
  • Yoshinaga K, et al.: Usefulness of the autism spectrum quotient (AQ) in screening for autism spectrum disorder and social communication disorder. BMC Psychiatry, 23: 831, 2023.
  • Nakagawa A, et al.: Similarity of subjective symptoms between autism spectrum disorder and attention-deficit/hyperactivity disorder in adults: Preliminary findings. Neuropsychopharmacol Rep, 41: 237-241, 2021.
  • Minami K, Horikawa E.: Social anxiety tendency and autism spectrum disorder in Japanese adolescence. Pediatr Int, 63: 903-909, 2021.
  • Bemmouna D, et al.: The utility of the autism-spectrum quotient to screen for autism spectrum disorder in adults with attention deficit/hyperactivity disorder. Psychiatry Res, 312:114580, 2022.
  • Pehlivanidis A, et al.: Trait-Based Dimensions Discriminating Adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder (ADHD), Autism Spectrum Disorder (ASD) and, Co-occurring ADHD/ASD. Brain Sci, 11: 18, 2020.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医