アリピプラゾール(エビリファイ)の特徴・作用・副作用

特徴・作用

アリピプラゾール(エビリファイ)はドパミンのバランスを適度に調整する作用を有します。

それにより、統合失調症の精神症状、双極性障害の躁症状、うつ病・うつ状態、ASDの易刺激性、チック症等を改善します1)~7)、(図1~4)。

うつ病、強迫症(強迫性障害)では、抗うつ薬で十分改善効果が得られない場合に、アリピプラゾール(エビリファイ)を上乗せで使用すること(増強療法と呼びます)で改善効果を示します8)、9)、(図5、6)。

図1 統合失調症治療におけるアリピプラゾールの有効性

統合失調症ではおおよそ2週間で効果発現を認めます。

図2 双極症躁病相におけるアリピプラゾールの有効性

図3 アリピプラゾールのASDの過敏性に対する効果

図4 児童・AYA世代のチック症に対するアリピプラゾールの効果

図5 抗うつ薬の増強療法におけるアリピプラゾールの有効性

抗うつ薬の増強療法に使用される薬剤の有効性

抗うつ薬の増強療法では、約1週間で効果を認めます。

図6 強迫性障害に対するSSRIへの増量療法の各薬剤の有効性の比較

強迫性障害に対するSSRIへの増強療法の各薬剤の有効性

近年、少量のアリピプラゾールが睡眠・覚醒相後退障害を含む概日リズム障害に有効であることが報告されています10)。

この効果は、アリピプラゾールが概日リズムを調節する視床下部視交叉上核に作用することよってもたらされることが報告されています11)。

従来の統合失調症治療薬に使用される抗精神病薬は、脳のドパミンD2受容体を遮断するアンタゴニストとして作用する薬が主でした(図7)。

図7 (A)ドパミンD2受容体アンタゴニスト

ドパミンD2受容体アンタゴニスト

大塚製薬が開発したアリピプラゾールは、従来のドパミンD2受容体アンタゴニストと作用が異なります。

ドパミンが過剰な状態ではアンタゴニストして作用し、ドパミン活性が低下している状態では、部分アゴニストとして作用します(図8)。

図8 アリピプラゾール(エビリファイ)の薬理作用

アリピプラゾールの薬理作用

このような特性からアリピプラゾールはドパミン伝達を過度に遮断することなく、バランスの良い伝達を維持します1)、(図9)。

この効果はドパミン・システムスタビライザー(DSS)と呼ばれています。

図9 アリピプラゾール(エビリファイ)のドパミン・システムスタビライズ機能

アリピプラゾールのドパミン・システムスタビライズ機能

他にセロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト、セロトニン5HT2A受容体アンタゴニスト作用をもっています。

ドパミンD2、D3受容体に高い親和性を示します(強くくっつきます)が、ヒスタミンH1には中程度、ムスカリンM1、M2、M3には低い親和性である(弱くくっつきます)ことがわかっています。

このような薬剤プロフィールから他剤との比較で体重増加を認めにくい、プロラクチンというホルモンの上昇が生じないといった特性が挙げられます2)。

薬剤による高プロラクチン血症は性機能障害や乳汁分泌をきたすことがありますが、長期的には骨密度の低下に伴う骨粗鬆症のリスクを増加させます。

アリピプラゾールはプロラクチン値を正常に保ち、骨代謝を安定することが示されています12)。

剤型

剤型は以下があります(図10)。

  • エビリファイ錠 1mg・3mg・6mg・12mg
  • エビリファイ OD錠 3mg・6mg・12mg・24mg
  • エビリファイ散 1%
  • エビリファイ内用液 0.1%

図10 アリピプラゾール(エビリファイ)の剤型

アリピプラゾールの剤型

アリピプラゾール(後発医薬品)の先発医薬品がエビリファイで、有効成分は同じものになります。

効果・効能

保険適応における効能・効果は以下となっています。

  • 統合失調症
  • 双極性障害における躁症状の改善
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限ります。)
  • 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性となっています。
    (24mgOD錠は統合失調症と双極性障害における躁症状の改善のみの適応です。)

アメリカでは統合失調症、双極Ⅰ型障害における躁病エピソード又は混合性エピソード、うつ病への追加療法、自閉スペクトラム症に伴う易刺激性、トゥレット症で適応を得ています。

米国では、トゥレット症(チック症)に保険適応を得ており、日本でも治療の現場では使用されていたことから、2022年にチック症に対し、保険承認における適応外使用が保険審査上認められることになりました。

用法・用量

統合失調症

統合失調症では以下となっています。

  • エビリファイ錠・OD錠・散:
    通常、成人では、1日6~12mgを開始用量、1日6~24mgを維持用量とし、1回又は2回に分けて内服する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は30mgを超えないこと。
  • エビリファイ内用液:
    通常、成人では、1日6~12mg(6~12mL)を開始用量、1日6~24mg(6~24mL)を維持用量とし、1回又は2回に分けて内服する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は30mg(30mL)を超えないこと。

双極性障害

双極性障害における躁症状の改善では以下となっています。

  • エビリファイ錠・OD錠・散:
    通常、成人では、12~24mgを1日1回内服する。なお、開始用量は24mgとし、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は30mgを超えないこと。
  • エビリファイ内用液:
    通常、成人では、12~24mg(12~24mL)を1日1回内服する。なお、開始用量は24mg(24mL)とし、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は30mg(30mL)を超えないこと。

うつ病・うつ状態

うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)では以下となっています。

  • エビリファイ錠・OD錠(24mg錠は除く)・散:
    通常、成人では、3mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、増量幅は1日量として3mg とし、1日量は15mgを超えないこと。
  • エビリファイ内用液:
    通常、成人では、アリピプラゾールとして3mg(3mL)を1日1回内服する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、増量幅1日量として3mg(3mL)とし、1日量は15mg(15mL)を超えないこと。

小児期の自閉スペクトラム症

小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性では以下となっています。

  • エビリファイ錠・OD錠(24mg錠は除く)・散:
    通常、1日1mgを開始用量、1日1~15mgを維持用量とし、1日1回内服する。なお、症状により適宜増減するが、増量幅は1日量として最大3mgとし、1日量は15mgを超えないこと。
  • エビリファイ内用液:
    通常、1日1mg(1mL)を開始用量、1日1~15 mg(1~15mL)を維持用量とし、1日1回内服する。なお、症状により適宜増減するが、増量幅は1日量として最大3mg(3mL)とし、1日量は 15mg(15mL)を超えないこと

薬物動態

アリピプラゾール6mgを空腹時に1回内服した際の血中濃度は約3.6時間に最高血中濃度に達し、約61時間後に半減します。

薬としての作用を発揮する主要代謝産物であるOPC-14857は約70時間後に最高血中濃度に達し、約279時間後に半減します(図11)。

図11 アリピプラゾール(エビリファイ)6mgを1回内服した際の血中濃度の推移

アリピプラゾール6mgを1回内服した際の血中濃度の推移

アリピプラゾールを毎日内服すると、おおよそ2週間で一定の血中濃度に維持されます(図12)。

図12 アリピプラゾール(エビリファイ)を毎日内服した際の血中濃度の推移

アリピプラゾールを毎日内服した際の血中濃度の推移

アリピプラゾールは CYP3A4とCYP2Dによって脱水素化と水酸化を受け、CYP3A4によって N-脱アルキル化を受けます(図13)。

主要代謝産物のOPC-14857は未変化体のアリピプラゾールと同等の薬理活性(薬の作用・効果)を有します。

図13 アリピプラゾール(エビリファイ)の代謝

アリピプラゾールの代謝

禁忌

禁忌として以下が設定されています。

  • 昏睡状態の患者[昏睡状態を悪化させるおそれがある。]
  • バルビツール酸誘導体・麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[中枢神経抑制作用が増強されるおそれがある。]
  • アドレナリンを投与中の患者(アドレナリンをアナフィラキシーの救急治療、又は歯科領域における浸潤麻酔もしくは伝達麻酔に使用する場合を除く)
  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

アリピプラゾールは糖尿病の患者さんに使用可能ですが、「糖尿病又はその既往歴もしくはその危険因子を有する患者には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与することとし、投与にあたっては、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと」と警告が付されています。

副作用

調査症例1,490例中980例(65.8%)に副作用発現を認め、主なものは以下でした(図14)。

  • アカシジア(18.72)
  • 不眠症(15.97)
  • 振戦(10.4)
  • 傾眠(8.86)
  • 体重増加(6.91)
  • 流涎過多(5.03)
  • 体重減少(4.9)
  • 便秘(4.63)
  • 不安(4.56)
  • 悪心(4.56)
  • 筋固縮(4.56)
  • 激越(4.09)
  • 倦怠感(4.03)

図14 アリピプラゾール(エビリファイ)の主な副作用

アリピプラゾールの副作用

アリピプラゾールの副作用では、一般的に特にアカシジアと激越に注意が必要とされています。

激越では、興奮、焦燥が強まる賦活化(activation:アクティベーション;SSRI開始後に不安、焦燥が生じるアクティベーションシンドロームとは別です)と呼ばれる状態が生じることがあります13)。

そのため、入院時などに興奮、焦燥が強い場合は、気分安定薬や静穏化作用を有する抗精神病薬を一時的に併用します。

頻度はまれですが、過去にギャンブル依存や衝動行為などの病歴がなかった人がアリピプラゾール内服開始後に病的なギャンブルや衝動的な行為が生じることがあります。

脳の大脳辺縁系と呼ばれるところは報酬系と呼ばれ衝動や依存症との関連が指摘されています。

大脳辺縁系のドパミンD3受容体が刺激されると衝動制御障害が起こると想定されています14)。

これは、アリピプラゾールがドパミンD2だけでなくD3に対しても部分活性化薬として作用することから、この症状が生じると考えられています15)。

アリピプラゾールの体重増加のリスク

アリピプラゾールの副作用では、約7%に体重増加を認めました。

しかし、現在使用されている第2・第3世代抗精神病薬の中では、リスクが低いことが報告されています16)、(図15)。

図15 第2世代抗精神病薬における体重増加のリスクの比較

アリピプラゾールは、副作用を用量反応性(用量の増加に応じて副作用がどのように増減するか)で見た時、アカシジアは、約10mgまでリスクが漸増し、その後は横ばいになる結果でした17)。

体重では、用量を増やすことによってごくわずかに体重が漸増(10mgで約0.5㎏増)し、おおむね横ばいの結果でした18)、(図16)。

図16 アリピプラゾールのアカシジアと体重増加の用量反応関係

アリピプラゾールのアカシジアと体重増加の用量反応関係

おひとりで悩んでいませんか?

幻覚・妄想で日常生活、社会生活に支障が生じている際は、早めに精神科・心療内科の受診をおすすめします。

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文献

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執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医