CAARS(コナーズ成人ADHD評価尺度)とは?

CAARSとは?

CAARS(Conners’ Adult ADHD Rating Scales:コナーズ成人ADHD評価尺度)は、成人のADHD(注意欠如・多動症)の症状を詳しく評価するための質問票です。

成人ADHD研究の第一人者であるC. Keith Conners(C・キース・コナーズ)らによって開発され、現在では世界中の精神科や心療内科、発達障害専門外来、研究機関などで広く使用されています。

ASRS(Adult ADHD Self-Report Scale)が「ADHDの可能性があるか」を調べるスクリーニング検査であるのに対し、CAARSは症状の重症度や特徴をより詳しく評価することを目的としています。

そのため、診断の参考だけでなく、治療前後の症状の変化や治療効果の評価にも用いられています。

何を評価する検査なのか?

CAARSでは、成人ADHDにみられる次のような特徴を総合的に評価します。

  • 不注意
  • 多動性
  • 衝動性
  • 情緒面の問題
  • 自己概念(Self-concept)
  • 注意・記憶・遂行機能

DSMの診断基準だけでは十分に評価しきれない、成人特有の症状や日常生活への影響まで把握できることが大きな特徴です。

質問票の種類

CAARSには複数の版があります。

① 通常版(Long Version)

66項目で構成されており、最も詳しく症状を評価できます。

日本語版として利用できるのは、この通常版です。

② 短縮版(Short Version)

26項目で構成され、海外では外来診療や研究で広く利用されています。

③ 自己記入式(Self-Report)

本人が自分の症状について回答します。

④ 観察者評価式(Observer Version)

配偶者や家族など、本人をよく知る人が回答します。

本人の自己評価と周囲の評価を比較できることもCAARSの特徴です。

評価される主な領域

CAARSでは、以下のような領域を評価します。

DSMの不注意症状

例えば、

  • 集中力が続かない
  • 忘れ物が多い
  • ケアレスミスが多い
  • 話を最後まで聞けない

などを評価します。

DSMの多動性・衝動性

例えば、

  • 落ち着いて座っていられない
  • 順番を待つことが苦手
  • 会話の途中で相手の話を遮る

などを評価します。

不注意・記憶の問題

成人では特に問題となりやすい

  • 注意力
  • 作業記憶(ワーキングメモリ)
  • 遂行機能(計画・段取り・実行する力)

についても詳しく評価します

多動・内面的な落ち着きのなさ

成人では子どものように走り回ることは少なくなりますが、

  • 常にそわそわしている
  • 心の中が落ち着かない
  • じっとしていることが苦痛

といった「内面的な多動性」を評価します

衝動性・情緒面

成人ADHDでは、

  • イライラしやすい
  • 怒りっぽい
  • 感情のコントロールが苦手

といった情緒面の問題も少なくありません。

CAARSでは、このような特徴についても評価します。

自己概念(Self-concept)

成人ADHDでは、

  • 自信が持てない
  • 自己評価が低い
  • 「自分はうまくできない」と感じやすい

ことが多いため、自己概念も重要な評価項目です。

採点方法

各項目について、

  • 0:まったく当てはまらない/まったくない
  • 1:ほんの少し当てはまる/ときどきある
  • 2:ほとんど当てはまる/しばしばある
  • 3:非常によく当てはまる/とても頻繁にある

の4段階で回答します。

回答結果は年齢や性別を考慮してTスコアへ換算されます。

Tスコアとは?

Tスコアとは、

  • 平均:50点
  • 標準偏差:10点

となるよう標準化された得点です。

一般的には、

Tスコア評価
45~55平均的
56~60平均よりやや高い
61~65平均より高い
66~70かなり高い
71以上非常に高い

と解釈されます。

一般的には65点以上になると、臨床的に意味のある症状である可能性が高いと考えられます。

DSM-Ⅳ 総合ADHD症状のTスコアが44未満、DSM-Ⅳ 不注意型症状のTスコアが54未満だとADHDを否定できると報告されています1)。

ASRSが「ADHDの可能性」を調べる入口の検査であるのに対し、CAARSは症状の特徴や重症度を詳しく把握するための検査といえます。

ASRSとの違い

ASRSCAARS
目的ADHDのスクリーニング症状の詳細な評価
質問数18項目66項目(日本語版)
DSM症状評価する評価する
情緒面ほとんど評価しない詳しく評価する
自己概念評価しない評価する
他者評価なしあり
治療効果判定限定的可能

CAARSの長所

CAARSには次のような利点があります。

  • 成人ADHD症状を詳しく評価できる
  • 情緒面や自己概念まで評価できる
  • 家族などによる他者評価も可能
  • 治療前後の症状変化を評価できる
  • 世界中で広く利用され、信頼性・妥当性が高い

CAARSの限界

① CAARSだけで診断はできない

CAARSはADHDの診断を補助する検査であり、CAARS単独でADHDを診断することはできません。

診断には、

  • 発達歴
  • 臨床面接
  • DSM-5の診断基準
  • 日常生活への影響

などを総合的に評価する必要があります。

② ADHD以外でも高得点になることがある

次のような疾患でも高得点となることがあります。

  • うつ病
  • 不安症
  • 双極症
  • 睡眠障害
  • ストレス関連疾患

そのため、結果は慎重に解釈する必要があります。

③ 自己評価の影響を受ける

CAARSは自己記入式質問票であるため、

  • 症状を過小評価する
  • 症状を過大評価する

可能性があります。

より客観的な評価を行うためには、家族などによる観察者評価を併用することが望ましい場合があります。

まとめ

CAARS(コナーズ成人ADHD評価尺度)は、成人ADHDの症状を詳しく評価するための質問票です。

ASRSがスクリーニングを目的とするのに対し、CAARSは不注意、多動性、衝動性だけでなく、情緒面や自己概念など成人特有の特徴まで詳しく評価できます。

一方で、CAARSはあくまでも評価尺度であり、ADHDの診断そのものを行う検査ではありません。

診断には発達歴や臨床面接などを含めた総合的な評価が必要です。CAARSは、診断の補助や症状の重症度評価、治療効果の確認などに有用な検査として、現在も世界中で広く利用されています。

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文献

  • 1)Kwan D, et al.: Determining cutoff scores on the Conners’ adult ADHD rating scales that can definitively rule out the presence of ADHD in a clinical sample. Appl Neuropsychol Adult, 33: 144-154, 2026.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医