WURS(ウェンダー・ユタ評価尺度)とは?

WURS(Wender Utah Rating Scale:ウェンダー・ユタ評価尺度)は、成人ADHD(注意欠如・多動症)の診断を補助するために開発された自己記入式の質問票です。

成人になってからADHDが疑われる場合、診断のためには「現在ADHDの症状があること」だけでなく、「子どもの頃から症状が続いていたこと」を確認する必要があります。

WURSは、子どもの頃の自分を振り返りながら回答することで、幼少期のADHD症状の有無を評価するための検査です。

なぜ子どもの頃の様子を確認する必要があるのか

ADHDは発達障害の一つであり、子どもの頃から症状が存在していることが特徴です。

そのため成人ADHDの診断では、

  • 現在ADHDの症状があるか
  • 子どもの頃から症状が続いているか

の両方を確認する必要があります。

しかし実際には、

  • 小学校の通知表が残っていない
  • 母子手帳が見つからない
  • 保護者から詳しい話を聞けない

といったケースも少なくありません。 そのような場合に、本人に6~12歳頃の様子を振り返ってもらうための補助的な評価尺度としてWURSが利用されています。

WURSを開発したのは誰ですか?

WURSは、精神科医のPaul H. Wenderらによって開発されました 1)。

ADHD研究で有名なユタ大学(University of Utah)のグループによって作成されたため、「ユタ評価尺度」と呼ばれています。

WURS-25とは

もともとのWURSは61項目(WURS-61)で構成されていました。

その後、ADHDの人とそうでない人を最も正確に区別できる25項目が抽出され、現在広く使用されているWURS-25が作成されました。

現在の臨床現場では、ほとんどの場合WURS-25が使用されています。

研究では、WURS-25は感度91%、特異度92%で成人ADHDを識別できることが報告されています 2)。

どのようなことを質問するのか

WURSでは、子どもの頃について次のような特徴を評価します。

  • 落ち着きがなかった
  • 集中力が続かなかった
  • 気が散りやすかった
  • 忘れ物が多かった
  • 衝動的だった
  • 学校で問題を起こしやすかった
  • かんしゃくを起こしやすかった

また、現在のADHD診断基準には含まれていない、

  • 怒りっぽさ
  • 感情の不安定さ
  • 対人関係の問題
  • 行動上の問題

なども評価します。

そのため、WURSは単なる「不注意」や「多動」だけでなく、子どもの頃の生活全体を振り返ることができる尺度といえます。

採点方法

各項目について、

  • 0点:全くない
  • 1点:たまに
  • 2点:ときどき
  • 3点:しばしば
  • 4点:しょっちゅう

の5段階で評価します。

25項目の合計点は0~100点になります。

WURSの結果の見方

一般的には46点以上がカットオフとして用いられています。

研究では、

  • ADHD患者の約86%
  • ADHDではない人の約99%

を正しく判別できたと報告されています。

ただし、この点数だけでADHDと診断することはできません。

あくまで「ADHDの可能性があるかどうか」を判断するための参考資料です。

WURSとASRSの違い

成人ADHDの評価では、WURSとASRSがよく併用されます。

WURS

子どもの頃のADHD症状を評価する

ASRS

現在のADHD症状を評価する

つまり、

  • WURS=過去を振り返る検査
  • ASRS=現在の状態を評価する検査

と考えるのがわかりやすいといえます。

両者を併用することで、より識別性が高まることがわかっています 3)、(図1)。

図1

WURSの限界

① 記憶に頼るため誤差が生じる

大人が子どもの頃を思い出して回答するため、

  • 記憶違い
  • 思い込み

が影響することがあります。

これを「回想バイアス」と呼びます。

② ADHD以外でも高得点になることがある

WURSの得点はADHDだけで高くなるわけではありません。

例えば、

  • うつ病
  • 双極症(双極性障害)
  • 不安症
  • パーソナリティ障害

などでも高得点になることがあります。

③ WURSだけで診断はできない

WURSはあくまでスクリーニングや診断補助のための検査です。

診断には、

  • 発達歴の確認
  • 学校生活の様子
  • 家族からの情報
  • 現在の症状評価
  • 医師による診察

などを総合的に判断する必要があります。

まとめ

WURS(ウェンダー・ユタ評価尺度)は、成人ADHDの診断を補助するために、子どもの頃のADHD症状を振り返って評価する質問票です。

成人ADHDの診断では、現在の症状だけでなく幼少期からの症状の存在を確認することが重要です。WURSはその確認を助ける有用な検査ですが、単独で診断を行うことはできません。

気になる症状がある場合は、精神科・心療内科・発達障害外来などで専門的な評価を受けることをおすすめします。

WURS-25

参考

  • 1) Ward MF, et al.; The Wender Utah Rating Scale: an aid in the retrospective diagnosis of childhood attention deficit hyperactivity disorder. Am J Psychiatry, 150: 885-90, 1993.
  • 2) Gift TE, et al.: Wender Utah Rating Scale: Psychometrics, clinical utility and implications regarding the elements of ADHD. J Psychiatr Res, 135:181-188, 2021.
  • 3) Brevik EJ, et al.: Validity and accuracy of the Adult Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD) Self-Report Scale (ASRS) and the Wender Utah Rating Scale (WURS) symptom checklists in discriminating between adults with and without ADHD. Brain Behav, 10: e01605, 2020

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医