LSAS-Jとは?

2026.07.23

はじめに

LSAS-J(Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版)は、社交不安症(SAD:Social Anxiety Disorder)の症状の重症度を評価するための質問票です。

もともとは精神科医 Michael R. Liebowitz によって開発された LSAS を、日本語で利用できるように標準化したものです。

面接に基づく評価と自己記入式による2通りの検査が可能ですが、経時的な臨床症状の評価に使用するときは、面接に基づく評価が望ましいとされています。

LSAS-Jの対象年齢は?

明確な年齢規定はありませんが、一般的には18歳以上です。

18歳未満では、成人版ではなく

LSAS-CA-J(Liebowitz Social Anxiety Scale for Children and Adolescents 日本語版)が 使用されます。

LSAS-Jで何がわかるのですか?

LSAS-Jでは、社交場面における

  • 不安・恐怖の強さ
  • その場面を避ける程度

を評価します。

例えば、

  • 人前で話す
  • 初対面の人と会話する
  • 電話をかける
  • 会議で発言する
  • 人前で食事をする

など、24種類の日常場面について回答します。

24種類の状況は「社交状況」と「行為状況」にわかれています。

「不安」と「回避」を別々に評価

LSAS-Jの特徴は、不安の強さだけでなく、「その場面を避けているかどうか」も評価することです。

各項目について、

不安・恐怖

  • 0:全く感じない
  • 1:少しは感じる
  • 2:はっきりと感じる
  • 3:非常に強く感じる

回避

  • 0:全く回避しない
  • 1:回避する(確率1/3以下)
  • 2:回避する(確率1/2以下)
  • 3:回避する(確率2/3以上または100%)

の4段階で回答します。

採点方法は?

24項目について

  • 不安(0~72点)
  • 回避(0~72点)

を合計し、総得点は0~144点になります。

LSAS-Jの結果の見方

面接に基づく評価のカットオフ値は42点

自己記入式のカットオフ値は44点

となっています。

また、重要度評価は、一般的には以下とされることが多いです。

  • 30点:境界域
  • 50~70点:中等度
  • 70~90点;中等度~重度
  • 90点以上:重度

信頼性・妥当性

LSAS-Jは、

  • 内的一貫性(Cronbach‘s α)は0.95
  • 級内相関係数(ICC)は0.92
  • 面接に基づく評価のカットオフ値42点の感度86.7%、特異度90.0%
  • 自己記入式のカットオフ値44点の感度93.3%、特異度90.0%

であり、信頼性・妥当性の高い質問表であることが示されています。

LSAS-Jの長所

LSAS-Jには次のような特徴があります。

  • 社交不安症の重症度を客観的に評価できる
  • 治療前後の改善度を比較できる
  • 国内外の研究で広く使用されている
  • 不安だけでなく回避行動も評価できる

そのため、診断の補助だけでなく、治療効果の判定にも役立ちます。

LSAS-Jの限界

LSAS-Jは優れた評価尺度ですが、いくつかの限界もあります。

  • 診断を確定する検査ではない
  • 自己評価(または半構造化面接)であるため、回答に個人差がある
  • うつ病や他の不安症でも点数が高くなることがある
  • 症状の背景や生活への影響までは十分に評価できない

そのため、LSAS-Jの結果だけで社交不安症と診断することはできず、医師による診察とあわせて総合的に判断する必要があります。

LSAS-Jはどのような人におすすめですか?

次のような悩みがある方では、LSAS-Jが参考になることがあります。

  • 人前で話すことが極端に苦手
  • 初対面の人と話すと強い緊張を感じる
  • 注目される場面を避けてしまう
  • 人前で食事や電話をすることに強い不安がある
  • 不安のために仕事や学校生活に支障が出ている

まとめ

LSAS-Jは、社交不安症(SAD)の重症度を評価する日本語版の標準的な質問票です。

特に、24の社交場面について、「不安・恐怖」と「回避」の両方を評価することで、症状をより詳しく把握できます。

ただし、LSAS-Jは診断を確定する検査ではなく、診察や生活状況の確認と組み合わせて総合的に評価することが大切です。

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医