公開日 2023.12.25
作用・特徴
半夏厚朴湯は不安や気分の落ち込みをやわらげ、ストレスによるのどのつかえ感を改善する作用があります1)、(図1)。
図1 半夏厚朴湯の作用と効果
ストレスによるのどのつかえ感はヒステリー球と呼ばれています。
妊娠悪阻(つわり)や、妊娠中の不安・うつ状態の治療にも使用されます。
妊娠中の使用での胎児への有害事象の増加は認められないことが報告されています2)。
誤嚥性肺炎の予防効果があることが示されています3)。
使用目標(証)は、体力中等度以下の人で、顔色がすぐれず、神経症的傾向があり、咽喉が塞がる感じ(いわゆるヒステリー球)を訴える場合に用います(図2)。
- 1)気分がふさぎ、不眠、動悸、精神不安などを訴える場合
- 2)呼吸困難、咳嗽、胸痛などを伴う場合
- 3)心窩部の振水音を伴う場合
とされています。
図2 東洋医学的使用目標
半夏厚朴湯は脳内でセロトニン・ノルアドレナリン・ドパミンの濃度を上昇させることが報告されています4)、(図3)。
図3 半夏厚朴湯による脳内のセロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン濃度の増加
抗うつ薬に似たこの作用により、抗不安・抗うつ作用を有すると考えられています。
半夏厚朴湯は以下の生薬から構成されています(図4)。
- 半夏
- 茯苓
- 厚朴
- 蘇葉
- 生姜
図4 半夏厚朴湯の構成生薬
厚朴に含まれるホノキオールという成分が抗不安作用に関与しているとされています5)。
剤型
医薬品のツムラの漢方薬(16番)は1包顆粒2.5gとなっています(図5)。
図5 半夏厚朴湯の剤型(ツムラ医療用)
効能・効果
気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症がみられます。
- 不安神経症
- 神経性胃炎
- つわり
- せき
- しわがれ声
- 神経性食道狭窄症
- 不眠症
用法・用量[ツムラ半夏厚朴湯(医療用)]
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に内服します。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減します。
副作用
頻度は不明ながら以下が挙げられています。
- 発疹
- 発赤
- そう痒
- 肝機能異常
参考
- 1) Kagohashi K, et al. : Effect of a traditional herbal medicine, hangekobokuto, on the sensation of a lump in the throat in patients with respiratory diseases. Biomed Rep, 4 : 384-386, 2016.
- 2) Michihata N, et al. Safety of Japanese herbal Kampo medicines for the treatment of depression during pregnancy. Int J Gynaecol Obstet, 159 : 865-869, 2022.
- 3) Kawago K, et al. : A Double-Blind Randomized Controlled Trial to Determine the Preventive Effect of Hangekobokuto on Aspiration Pneumonia in Patients Undergoing Cardiovascular Surgery. Ann Thorac Cardiovasc Surg, 25 : 318-325, 2019.
- 4) Kaneko A, et al. : Hange-koboku-to, a Kampo medicine, modulates cerebral levels of 5-HT (5-hydroxytryptamine), NA (noradrenaline) and DA (dopamine) in mice. Phytother Res, 19 : 491-5, 2005.
- 5) Kuribara H, et al. : The anxiolytic effect of two oriental herbal drugs in Japan attributed to honokiol from magnolia bark. J Pharm Pharmacol, 52 : 1425-9, 2000.
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めまい、動悸、神経症などに使用されます。
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- 寝つきが悪い
- やる気が起きない
- 不安で落ち着かない
- 朝寝坊が多い
- 人の視線が気になる
- 職場に行くと体調が悪くなる
- 電車やバスに乗ると息苦しくなる
- うつ病
- 強迫性障害
- 頭痛
- 睡眠障害
- 社会不安障害
- PMDD(月経前不快気分障害)
- パニック障害
- 適応障害
- 過敏性腸症候群
- 心身症
- 心的外傷後ストレス障害
- 身体表現性障害
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- ADHD(注意欠如・多動症)
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