公開日 2024.2.5
作用・特徴
呉茱萸湯は手足が冷えやすい人の片頭痛、慢性頭痛、嘔吐等に使用されます(図1)。
図1 呉茱萸湯の作用と効果
片頭痛が頻回となった場合は、予防治療が重要で、片頭痛予防治療の漢方薬といえば呉茱萸湯というくらいに頭痛治療では有名な漢方薬です。
慢性頭痛の診療ガイドラインでも推奨度Bで掲載され、片頭痛、緊張型頭痛いずれにも高い有効性を示すことが報告されています1)。
ロキソプロフェン(ロキソニン)やトリプタン製剤等の頻回の使用による頭痛(薬剤の使用過多による頭痛;MOH)にも有効性が示され、使用されています2)、3)。
使用目標(証)は、比較的体力の低下した冷え症の人で、反復性に起こる激しい頭痛を訴える場合に用います。
- 1)項や肩のこり、嘔吐などを伴う場合
- 2)心窩部に膨満感、痞塞感あるいは振水音を認める場合
とされています。
図2 呉茱萸湯の東洋医学的使用目標
呉茱萸湯は片頭痛治療薬のトリプタン製剤と同じくセロトニン5-HT1D受容体等に作用し、血管収縮作用を示すことが報告されています4)。
また、構成生薬の主成分である呉茱萸と生姜が血小板の凝集を抑制し、片頭痛を改善することも示唆されています5)。
同様に主成分である呉茱萸の成分であるエボジアミンが、TRPV1受容体を介し、鎮痛効果を発揮している可能性も示唆されています6)、(図3)。
図3 呉茱萸湯の薬理作用
呉茱萸湯は以下の生薬から構成されています(図4)。
- 大棗
- 呉茱萸
- 人参
- 生姜
図4 呉茱萸湯の構成生薬
剤型
医薬品のツムラの漢方薬(31番)は1包顆粒2.5gとなっています(図5)。
図5 呉茱萸湯の剤型(ツムラ医療用)
効能・効果
手足の冷えやすい中等度以下の体力のものの次の諸症:
- 習慣性偏頭痛
- 習慣性頭痛
- 嘔吐
- 脚気衝心
用法・用量[ツムラ呉茱萸湯(医療用)]
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に内服します。
なお、年齢、体重、症状により適宜増減します。
副作用
頻度は不明ながら以下が挙げられています。
- 発疹
- 蕁麻疹
- 肝機能異常
参考
- 1) 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会. 慢性頭痛の診療ガイドライン2021.
- 2) Hasegawa YU, Kuratsu JI. : Goshuyuto Reduced the Monthly Intake of Anti-headache Drugs and Improved Pain Status in Patients with 20-Year History of Medication Overuse Headache in an Outpatient Setting. Kurume Med J, 68 : 153-156, 2023.
- 3) Katsuki M, et al. : The Efficacy of Japanese Herbal Kampo Medicine as an Acute and Prophylactic Medication to Treat Chronic Daily Headache and Medication Overuse Headache:-Single Arm Retrospective Study. Cureus, 14 : e25419, 2022.
- 4) Hibino T, et al. : Goshuyuto, a traditional Japanese medicine, and aqueous extracts of Evodiae Fructus constrict isolated rat aorta via adrenergic and/or serotonergic receptors. Biol Pharm Bull, 32 : 237-41, 2009.
- 5) Hibino T, et al. : Goshuyuto, a traditional Japanese medicine for migraine, inhibits platelet aggregation in guinea-pig whole blood. J Pharmacol Sci, 108 : 89-94, 2008.
- 6) 小林 義典. : 呉茱萸アルカロイド“エボジアミン”のTRPV1を介した生理活性. 日薬理誌, 146 : 135-139, 2015.
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