新型コロナウイルス感染・ワクチン接種と抗うつ薬の内服について

はじめに

新型コロナウイルスの繰り返す流行とワクチン接種に伴い、抗うつ薬を内服中の際の感染時の内服の継続・中断について、また、ワクチン接種時の継続・中断について対応がわからず不安に思われる方が多くおられます。

そのため、現在までの新型コロナウイルス感染と抗うつ薬についての関係を記載したいと思います。

抗うつ薬の新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果について

抗うつ薬の中でSSRIのフルボキサミン(ルボックス・デプロメール)に新型コロナウイルスに対す抗ウイルス効果があることが報告されています1)。

フルボキサミンによる治療で呼吸器症状の悪化、入院、死亡のリスクが低下したことが報告されています2)~6)、(図1、2)

図1 フルボキサミンによる新型コロナウイルスによる呼吸器症状悪化の抑制

図2 COVID-19感染によるICU入院患者における標準治療VS標準治療+フルボキサミンの生存率

また、もともとSSRISNRI、トラゾドン(デジレル・レスリン)を内服していたメンタルヘルス疾患の患者さんは、新型コロナウイルスに感染するリスクが低かったことも報告されています7)。

フルボキサミンは日本では最初に承認されたSSRIで古くから使用されています。

薬剤の特徴として、SSRIとしてのセロトニンの再取り込み阻害作用を有するだけでなく、シグマ-1受容体アゴニスト作用という作用を有しています。

中枢神経に発現しているシグマ-1と呼ばれる受容体(図3)に結合することにより、神経細胞内のシグナル伝達を促進し、精神科領域では抗うつ効果や記憶・認知機能の維持に作用することと考えられています8)。

図3 シグマ-1受容体

感染症領域では、シグマ-1受容体アゴニスト作用を介し、主に抗炎症作用をもたらし、新型コロナウイルス感染症の症状を改善するとされています5)、9)、(図4)。

図4 フルボキサミンの新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果

フルボキサミンはSSRIの中で特に強いシグマ-1受容体アゴニスト作用を有していることがわかっています9)、(図5)。

図5 シグマ-1受容体に対する各抗うつ薬の親和性(アゴニスト作用)

フルオキセチン(日本未承認)は弱いシグマ-1受容体アゴニスト作用を有していますが、フルボキサミンと同様に、新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果があることが報告されています4)、10)。

おわりに

  • 抗うつ薬の中でSSRI(特にフルボキサミン)は新型コロナウイルスに対し、抑制的な役割を果たすため、感染時もワクチン接種時も中止することなく内服を継続して問題ありません。(その他の抗うつ薬も継続して問題ありません)。
  • ワクチン接種時に抗うつ薬を内服していることでワクチンの効果が減弱することはなく、むしろ良好な効果が得られる可能性が示唆されています11)。
  • SSRIでうつ病や不安障害を治療中の場合、新型コロナウイルスに対し、予防的な効果を発揮するとともに、感染後の抑うつ症状にも有効であり12)、感染症とメンタルヘルスの両面から使用の継続が推奨されます。

おひとりで悩んでいませんか?

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

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文献

  • 1)Wen W, et al. : Efficacy and safety of three new oral antiviral treatment (molnupiravir, fluvoxamine and Paxlovid) for COVID-19:a meta-analysis. Ann Med, 54 : 516-523, 2022.
  • 2)Lenze EJ, et al. : Fluvoxamine vs Placebo and Clinical Deterioration in Outpatients With Symptomatic COVID-19: A Randomized Clinical Trial. JAMA, 324 : 2292-2300, 2020.
  • 3)Reis G, et al. : Effect of early treatment with fluvoxamine on risk of emergency care and hospitalisation among patients with COVID-19: the TOGETHER randomised, platform clinical trial. Lancet Glob Health, 10 : e42-e51, 2022.
  • 4)Oskotsky T, et al. : Mortality Risk Among Patients With COVID-19 Prescribed Selective Serotonin Reuptake Inhibitor Antidepressants. JAMA Netw Open, 4 : e2133090, 2021.
  • 5)Calusic M, et al. : Safety and efficacy of fluvoxamine in COVID-19 ICU patients: An open label, prospective cohort trial with matched controls. Br J Clin Pharmacol, 88 : 2065-2073, 2022.
  • 6)Lee TC, et al. : Fluvoxamine for Outpatient Management of COVID-19 to Prevent Hospitalization: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Netw Open, 5 : e226269, 2022.
  • 7)Clelland CL, et al. : Analysis of the impact of antidepressants and other medications on COVID-19 infection risk in a chronic psychiatric in-patient cohort. BJPsych Open, 8 : e6, 2021.
  • 8)Sałaciak K, Pytka K. : Revisiting the sigma-1 receptor as a biological target to treat affective and cognitive disorders. Neurosci Biobehav Rev, 132 : 1114-1136, 2022.
  • 9)Hashimoto Y, et al. : Mechanisms of action of fluvoxamine for COVID-19: a historical review. Mol Psychiatry, 27 : 1898-1907, 2022.
  • 10)Fred SM, et al. : Antidepressant and Antipsychotic Drugs Reduce Viral Infection by SARS-CoV-2 and Fluoxetine Shows Antiviral Activity Against the Novel Variants in vitro. Front Pharmacol, 12 : 755600, 2022.
  • 11)Seifert J, et al. : Vaccination Against COVID-19 in Patients Treated with Psychotropic Drugs.  Psychiatr Prax. 48 : 399-403, 2021.
  • 12)Mazza MG, et al. : Rapid response to selective serotonin reuptake inhibitors in post-COVID depression. Eur Neuropsychopharmacol, 54 : 1-6, 2022.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医