原因不明の耳鳴りに対する薬物治療 有効性の比較

はじめに

耳鳴りの有病率は約11%~30%と高く、女性と比較し男性の有病率が高く、年齢が高くなるにつれ有病率も高くなることが報告されています1)。

メニエール病や聴神経腫瘍に伴う耳鳴りといった疾患に伴い生じるものと、発症要因が特定できない耳鳴りがあります2)。

中でもうつ病との関係で、うつ病に併存して耳鳴りが生じることがあり、また耳鳴りが抑うつ状態を悪化させることがあります3)、4)。

そのため、うつ病や不眠に対するアプローチが必要になり、耳鼻咽喉科と連携し精神科・心療内科が治療にあたることがあります。

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症流行後は、感染流行に伴う不安とストレスが耳鳴りに影響を与えたことが報告されています5)。

また、新型コロナウイルス感染により難聴、耳鳴り、めまいが生じるリスクが指摘されています6)。

耳鳴りの原因

近年、耳鳴りには炎症が関与し、炎症性サイトカインのTNF-α、IL-1βの増加が耳鳴りの原因となっている可能性が指摘されています7)、(図1)。

図1 耳鳴りと炎症の関連

現在までのエビデンス

耳鳴りに対する薬物治療では、主に以下の薬剤の有効性が報告されていました8)。

  • 抗うつ薬:アミトリプチリン(トリプタノール)
  • 抗不安薬:アルプゾラム(ベンゾジアゼピン)、クロナゼパム(ランドセン・リボトリール)
  • 抗てんかん薬:カルバマゼピン(テグレトール)、ガバペンチン(ガバペン)
  • 断酒補助薬:アカンプロサート(レグテクト)
  • 亜鉛
  • メラトニン

最新のエビデンス

Chen JJらは、2021年に原因が特定できない耳鳴りに対する薬物治療の有効性の比較の解析を報告しています9)。

耳鳴りの重症度の改善では以下の順で改善率が高い結果でした(図2)。

  • アミトリプチリン(トリプタノール)
  • アカンプロサート(レグテクト)
  • ガバペンチン(ガバペン)+リドカイン皮内注射

図2 原因不明の耳鳴りに対する薬物治療の有効性の比較 重要度の改善

治療奏功率では以下の順に優れている結果でした(図3)。

  • 鼓室内デキサメタゾン注射+メラトニン
  • メラトニン+sulodexide(日本未承認)
  • メラトニン
  • アミトリプチリン(トリプタノール)
  • アカンプロサート(レグテクト)
  • 亜鉛
  • ガバペンチン(ガバペン)+リドカイン皮内注射

図3 原因不明の耳鳴りに対する薬物治療の有効性の比較 奏功率

ガバペンチン(ガバペン)はNMDAグルタミン酸神経系を抑制し、GABA神経系を増強する作用があります。

またアカンプロサート(レグテクト)は、NMDAグルタミン酸受容体伝達を調整し、GABA受容体を間接的に調節すると考えられています10)。

これらは、炎症と耳鳴りのメカニズムで指摘されている、NMDA受容体活性の増強とGABA受容体活性の減少に対しての治療効果を有することが想定されます。

おわりに

うつ病やストレスは耳鳴りに関連し、症状は持続することがあります。

ストレスの軽減といった環境要因への配慮とともに、うつ病等の背景疾患に応じた薬物選択も治療の選択肢になるといえます。

文献

  • 1)McCormack A, et al. : A systematic review of the reporting of tinnitus prevalence and severity. Hear Res, 337 : 70-9, 2016.
  • 2)Savage J, Waddell A. : Tinnitus. BMJ Clin Evid, 20 : 0506, 2014.
  • 3)Choi J, et al. : Association of Tinnitus with Depression in a Normal Hearing Population. Medicina (Kaunas), 57 : 114, 2021.
  • 4)Bhatt JM, et al. : Relationships between tinnitus and the prevalence of anxiety and depression. Laryngoscope, 127 : 466-469, 2017.
  • 5)Beukes E, et al. : The Impact of COVID-19 and the Pandemic on Tinnitus: A Systematic Review. J Clin Med, 10 : 2763, 2021.
  • 6)Jafari Z, et al. : Hearing Loss, Tinnitus, and Dizziness in COVID-19: A Systematic Review and Meta-Analysis. Can J Neurol Sci, 49 : 184-195, 2022.
  • 7)Mennink LM, et al. : The Role of Inflammation in Tinnitus: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Clin Med, 11 : 1000, 2022.
  • 8)Kim SH, et al. : Review of Pharmacotherapy for Tinnitus. Healthcare (Basel), 9 : 779, 2021.
  • 9)Chen JJ, et al. : Efficacy of pharmacologic treatment in tinnitus patients without specific or treatable origin: A network meta-analysis of randomised controlled trials. EClinicalMedicine, 39 : 101080, 2021.
  • 10)Kalk NJ, et al, : The clinical pharmacology of acamprosate. Br J Clin Pharmacol, 77 : 315-23, 2014.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医