エスケタミン(日本未承認薬)の特徴・作用・副作用

はじめに

過去のコラムですでに、日本未承認薬の新規抗うつ薬で、以下の抗うつ薬を記載させて頂きました。

今回、米国で2019年3月に、治療抵抗性うつ病に対する治療薬として承認された、エスケタミンについて記載致しました。

ズラノロン、オーヴェリティが1週間で効果を認める即効性がありますが、エスケタミンはそれを上回る24時間以内で、抗うつ効果を認める即効性があります。

また、自殺念慮の改善を得られることも示されており、治療抵抗性うつ病に対する治療薬として注目を集めています。

エスケタミンの特徴

エスケタミンはケタミンの鏡像異性体で24時間以内に抗うつ作用を発揮します。

早ければ4時間で効果が生じます1)、2)、(図1)。

図1 治療抵抗性うつ病に対するエスケタミンの治療効果

また、自殺念慮の改善も同じく24時間以内に、早ければ4時間で得られることが示されています1)、(図2)。

図2 エスケタミンによる重症度の自殺念慮の改善

ケタミンは静脈投与ですが、エスケタミンは点鼻噴霧投与となっています(図3)。

図3 エスケタミンの剤型

エスケタミンはケタミンのS-鏡像異性体で、(S)-Ketamineと表記されます(図4)。

図4 ケタミンとエスケタミンの化学構造式

エスケタミンの作用機序

エスケタミンはNMDAグルタミン酸受容体を選択的に阻害します3)。

その結果、GABA伝達系を抑制し、グルタミン酸神経系の興奮を高めます。

それにより、グルタミン酸が放出され、AMPA受容体を介し、BDNF産生が増加することや、神経新生がおこることにより抗うつ作用がもたらされると想定されています4)、(図5)。

図5 エスケタミンの作用機序

エスケタミンのNMDA 受容体阻害作用は他のNMDA 受容体阻害剤と比較して、比較的強いことが報告されています5)、6)、(図6)。

図6 エスケタミンのNMDA 受容体阻害作用の強さ

エスケタミンの効能・効果

米国では以下の保険承認を得ています。

  • 成人における治療抵抗性うつ病(TRD)
  • 自殺念慮また自殺行動を伴う成人の大うつ病性障害のうつ症状

エスケタミンの用法・用量

各鼻腔に2回ずつ噴霧となっています(図7)。

図7 エスケタミンの使用法

副作用

治験における主な副作用は以下でした(図8)。

  • 解離
  • めまい
  • 嘔気
  • 鎮静
  • 回転性めまい
  • 頭痛
  • 味覚異常
  • 感覚鈍麻
  • 不安
  • 無気力
  • 血圧上昇

図8 エスケタミンの主な副作用

終わりに

エスケタミンは日本で治験が行われていましたが、治験第2相で基準を満たさず、残念ながら、一旦中止となっています。

現在、承認されている向精神薬には、過去に1回目の治験が中断するも、再トライで承認され、治療に貢献している薬剤もあります。

今後、エスケタミンの再度の治験開始にも期待したいです。

また、現在、大塚製薬がアールケタミンの開発を行っており、こちらも同様に期待がもたれます。

おひとりで悩んでいませんか?

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

ハートを包み込むイメージ

文献

  • 1)Popova V et al.: Efficacy and Safety of Flexibly Dosed Esketamine Nasal Spray Combined With a Newly Initiated Oral Antidepressant in Treatment-Resistant Depression: A Randomized Double-Blind Active-Controlled Study. Am J Psychiatry, 176: 428-438, 2019.
  • 2)Ionescu DF, et al.: Esketamine Nasal Spray for Rapid Reduction of Depressive Symptoms in Patients With Major Depressive Disorder Who Have Active Suicide Ideation With Intent: Results of a Phase 3, Double-Blind, Randomized Study (ASPIRE II). Int J Neuropsychopharmacol, 24: 22-31, 2021.
  • 3)Kaur U, et al.: Esketamine: a glimmer of hope in treatment-resistant depression. Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci, 271: 417-429, 2021.
  • 4)Ahmed et al.: Management of treatment-resistant depression with esketamine nasal spray: clinical questions for daily practice in Gulf Cooperation Council countries. 7:99, 2023.
  • 5)Hashimoto K.: Ketamine’s antidepressant action: beyond NMDA receptor inhibition. Expert Opin Ther Targets, 20: 1389-1392, 2016.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医