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044-455-7500双極症は、躁状態やうつ状態を繰り返す可能性があります。
そのため、症状が改善した後も再発や再入院を予防するための維持治療が重要です。
では、実際の診療現場では、どのような薬物療法が精神科への再入院予防と関連しているのでしょうか。
2026年、Okumuraらは、日本の大規模医療データを用いて、315,046人の双極症患者を対象に、気分安定薬や抗精神病薬の単剤療法・併用療法と精神科入院との関係を検討しました1)。
この研究では、日本のNational Database of Health Insurance Claims and Specific Health Check-ups(NDB)が使用されました。
対象は20歳以上の双極症患者315,046人で、追跡期間の中央値は7.1年でした。主要な評価項目は精神科への入院です。追跡期間中、83,621人(26.5%)が精神科入院を経験しました。
この研究の特徴は、患者同士を単純に比較するのではなく、同じ患者の異なる治療期間を比較する個人内比較(within-individual design)を用いたことです。
患者ごとの変わりにくい背景因子による影響をできるだけ小さくする工夫がされています。
まず、気分安定薬の単剤療法が検討されました。
気分安定薬を使用していない期間と比較した精神科入院の調整ハザード比(aHR)は、以下の通りでした。

4剤すべてで、使用期間は非使用期間と比較して精神科入院リスクの低下と関連していました。
なかでもリチウムのaHRが最も低い値でした。
しかし、著者らは他の3剤との差はそれほど大きくないことも指摘しています。
抗精神病薬についても、多くの薬剤で精神科入院リスクの低下との関連が認められました。
特に論文で低いaHRを示したものは、以下でした。

一方、明確な関連が確認されなかった薬剤もあり、抗精神病薬の結果にはかなりの違いが認められました。
また、クエチアピンでは用量による違いもみられ、300 mg/日以上ではaHR 0.75、300 mg/日未満では0.85でした。
ただし、著者らは他の研究とは結果が一致していないことにも言及しており、用量と効果についてはさらなる研究が必要です。
この研究でもう一つ注目されるのが、気分安定薬への薬剤追加を検討している点です。
リチウム単剤療法と比較すると、以下の併用療法で精神科入院リスクが有意に低くなっていました。

つまり、リチウム単剤よりも、特定の薬剤を追加した期間の方が精神科入院リスクが低いという関連が認められました。
ただし、すべての併用療法が単剤療法を上回ったわけではありません。
特に興味深いのがアリピプラゾールです。
アリピプラゾールを追加した場合、以下の結果でした。

となり、リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンのいずれの気分安定薬に追加した場合にも、各気分安定薬単剤より低い精神科入院リスクとの関連が認められました。
著者らも、アリピプラゾールがこれら3種類の気分安定薬で一貫して追加的なベネフィットを示したことを注目すべき結果として取り上げています。
この結果を読むうえで非常に重要なのは、今回の研究がランダム化比較試験(RCT)ではなく観察研究であることです。
そのため、例えば「aHRが最も低かった薬が最も優れた薬である」と単純に結論づけることはできません。
また、研究では症状の重症度など時間とともに変化する要因を完全には調整できず、処方記録から実際の服薬状況を完全に把握することもできません。
さらに、対象者には研究期間中にリチウム200 mg/日以上を少なくとも2回処方された患者という条件が設定されています。
そのため、研究結果をすべての双極症患者にそのまま当てはめることには注意が必要です。
そして今回の主要評価項目は「躁病やうつ病の再発」そのものではなく、精神科入院です。
特に、入院に至らない気分エピソードの予防効果については、この研究だけでは十分に評価できません。
今回の日本の31万人を超える大規模研究では、リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、カルバマゼピンはいずれも精神科入院リスクの低下と関連していました。
さらに、気分安定薬単剤だけでなく、一部の併用療法でも追加的なリスク低下との関連が認められました。
なかでもアリピプラゾールは、リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンのいずれに追加した場合にも一貫した関連がみられた点が注目されます。
一方、併用療法では薬剤数が増えることで、アカシジア、錐体外路症状、体重増加、高プロラクチン血症などの副作用が増える可能性があります。
著者らも、入院予防だけでなく、副作用、服薬継続、生活の質などを含めて治療を考える必要があると指摘しています。
したがって、今回の研究は「この薬を使えば再入院を防げる」と証明したものではありませんが、日本の実臨床における双極症の長期薬物療法を考えるうえで、非常に大規模なリアルワールドデータを提供した研究といえます。
1)Okumura Y, et al.: Real-world effectiveness of mono- and combination therapies of mood stabilisers and antipsychotics in bipolar disorder: nationwide, within-individual study of 315 046 patients. Br J Psychiatry, 30:1-9, 2026.
