月経前障害(PMD)と精神疾患の関係

はじめに

月経前障害(PMD)と精神疾患は密接に関連していることが、近年報告されてきました。

月経前になると、

  • イライラする
  • 気分が落ち込む
  • 不安が強くなる

といった症状が現れる女性は少なくありません。

特に、これらの症状が日常生活に大きな支障をきたすものの中で、イライラや腹痛などの心と身体の不調が生じるものを月経前症候群(PMS)と呼んでいます。

体の症状ではなく、精神面で顕著な落ち込み、イライラ等が生じるものを月経前不快気分障害(PMDD)と呼んでいます。

そして、PMSとPMDDをあわせてPMD(Premenstrual Disorders:月経前障害)と呼んでいます。

2026年に約363万人の女性を対象とした、月経前障害(PMD)と精神疾患の関連の世界最大規模の研究が発表され、その関係がより明らかになりました1)

精神疾患と月経前障害(PMD)は「双方向」に関連している

この研究では、月経前障害(PMD)と精神疾患が一方向ではなく、お互いに影響し合う「双方向の関係」にあることが示されました。

具体的には、

  • 精神疾患のある女性では、その後PMDを発症するリスクが約2.4倍(オッズ比:2.41)
  • PMDのある女性では、その後精神疾患を発症するリスクが約2.2倍(ハザード比:2.23)

でした。つまり、「精神疾患があるからPMDになりやすい」だけでなく、「PMDがあることで精神疾患になりやすい」ことも示されました(図1)。

図1

PMDと精神疾患の関連

特に月経前障害(PMD)関連が強かった精神疾患

月経前障害(PMD)との関連が特に強かった精神疾患は以下となっています(図2)。

  • ADHD
  • 双極性障害
  • パーソナリティ障害
  • うつ病
  • 不安症
  • 自閉スペクトラム症(ASD)

一方で、この研究では統合失調症との明らかな関連は認められませんでした。

図2

PMDと関連性の高い精神疾患

なぜ月経前障害(PMD)と精神疾患は関係するのでしょうか?

研究では、いくつかの共通した仕組みが考えられています。

  • 女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の変動に対する脳の感受性
  • セロトニン、ドパミン、GABAなど神経伝達物質の変化
  • ストレス応答(HPA軸)の異常
  • 遺伝的な共通要因

これらが重なることで、PMDと精神疾患の両方が起こりやすくなると考えられています。

症状を確認する上で重要なこと

PMDの症状は月経周期に合わせて変動するため、

  • 「うつ病が悪化した」
  • 「双極性障害ではないか」
  • 「ADHDの症状が強くなった」

と思われる場合でも、実際には月経周期との関連が影響していることがあります。

そのため、精神症状を評価する際には、

  • 月経周期
  • 症状が現れる時期
  • 症状の日内・月内変動

を確認することがとても重要です。

おわりに

今回の大規模研究により、PMD(PMS・PMDD)と精神疾患は互いに関連し合う「双方向の関係」にあることが明らかになりました。

精神疾患のある女性ではPMDの存在を、PMDのある女性では精神疾患の可能性を意識することで、より早い診断や適切な治療につながる可能性があります。

そのため、月経周期も含めて心身の状態を総合的に評価することが、女性の心の健康を支えるうえで重要といえます。

文献

1)Zhou J, et al.: Bidirectional Association Between Premenstrual Disorders and Psychiatric Disorders. JAMA Netw Open, 9; e2611765, 2026.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医