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044-455-7500バウムテスト(Baum Test/樹木画テスト)は、日本の精神科・心療内科や臨床心理の領域でも用いられてきた描画法・投映法(投影法)に分類される心理検査です。
SCTと同様、点数だけで「○○という性格」と判定する検査ではなく、描かれた樹木を手がかりに、その人の心理状態やパーソナリティを理解するための補助的な方法です。
「Baum(バウム)」はドイツ語で木・樹木という意味です。
バウムテストは、スイスの心理学者Charles Koch(カール・コッホ)によって体系化された樹木画法として知られています。
心理検査の分類では、一般的に描画法・投映法(投影法)の一つとして扱われます。
質問紙のように決められた選択肢から回答するのではなく、自由度の高い「木を描く」という課題を通して、その人がどのように表現するのかを観察することが特徴です。
バウムテストで大切なのは、
「上手な木を描けるかどうか」を評価する検査ではない
ということです。
絵が得意か苦手かを採点するのではありません。
木の描き方を一つの手がかりとして、面接などでは十分に言葉にならない心理的特徴について考えていきます。
そのため、絵が苦手な方でも受けることができます。
描かれた木にはさまざまな特徴があります。
例えば、次のような点を観察します。

一つの部分だけを見るのではなく、木全体の構成や描き方を総合的に検討することが大切です。
なぜ「木」を描くのでしょうか?
木という対象には、
などさまざまな要素があります。
しかも、「木を描いてください」と言われたときに、どのくらいの大きさで、どのような形の木を描くかについては大きな自由があります。
そのため、同じ「木」という課題でも、出来上がる絵にはかなりの個人差が生じます。
投映法では、このような正解のない、自由度の高い課題への取り組み方や表現の違いを、その人を理解するための手がかりとして利用します。
伝統的な解釈では、例えば木の大きさや位置、幹、枝、根、筆圧などに心理的意味を見いだすさまざまな解釈仮説があります。
しかし、
「木が小さい=自信がない」
「左側に描いた=過去にとらわれている」
「根がない=不安定である」
というように、一つのサインから特定の性格や精神状態を機械的に決めることはできません。
投映描画法では、解釈の客観性や妥当性が長く議論されてきました。
投映法全般についても、すべての解釈指標が十分な科学的根拠を持っているわけではないことが指摘されています1)。
したがって臨床では、
を組み合わせて理解することが重要です。
青木(1980)は、男子高校1年生96人に8日間隔で2回バウムテストを実施し、再検査信頼性を調べました2)。
その結果、大きさ、位置、形態、全体的な描画特徴などの再検査相関は概して高い結果でした。
また、37指標中29指標で高い再検査信頼性が認められました。
一方、8指標では認められませんでした。
つまり、少なくとも一部の描画特徴そのものには一定の再現性があることを示す研究があります。
ただし、
「同じような木を描く傾向が再現される」ことと、「その特徴から性格や診断を正確に推定できる」ことは別問題
です。
ここは「信頼性」と「妥当性」を区別して考える必要があります。
近年も樹木画の特徴と精神疾患との関連は研究されています。
2026年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、1948~2024年の42研究、8,552人を統合し、樹木画の24の特徴が精神疾患と統計学的に関連したと報告されています3)。
例えば非常に小さな木、単純化された描画、弱い線など、いくつかの特徴に関連が認められました。
著者らは、樹木画を非言語的な補助的スクリーニング手段として位置づけています。
一方で、研究間で用いる指標が統一されていないなどの問題もあります。
したがって現時点では、
バウムテスト単独で精神疾患を診断したり、特定の人格特性を確定したりする検査ではない
という理解が重要です。
少し意外ですが、バウムテストは認知機能との関係についても研究されています。
2015年の研究では、
にTree-Drawing TestとMMSEを実施しました。
AD患者では健常者などに比べて木が全体的に小さく、MCIではADと健常者の中間的な大きさになるなど、いくつかの定量的な描画特徴に群間差が認められました。
バウムテストとSCTでは、以下のような違いがあります。

SCTでは、文章として表現された自己像、家族関係、対人関係、価値観、葛藤などを検討します。
一方、バウムテストでは、言葉以外の表現から本人を理解する手がかりを探すところに特徴があります。
そのため、両者から得られる情報は同じではなく、組み合わせることで異なる側面から理解できる場合があります。
描画そのものは比較的短時間で終了することが多い検査です。
しかし、一律の制限時間を設定して能力を測定する検査ではありません。
そのため、「○分で終了しなければならない」というタイプの検査ではなく、描画に要した時間や描いているときの様子なども参考情報になる場合があります。
バウムテストは子どもから成人、高齢者まで幅広い年齢で研究・臨床使用されてきた検査です。
ただし、年齢によって描画能力や発達段階が大きく異なるため、同じ描画特徴を子どもと成人で同じように解釈することはできません。
年齢や発達段階を考慮した解釈が必要です。
長所は、課題がシンプルで負担が比較的小さく、言葉だけでは表現しにくい側面について対話を始める材料になり得ることです。
一方、最大の限界は解釈の標準化と妥当性です。
したがって、
「この枝があるから○○性格」
といった「心理占い」のような使い方は避けるべきです。
臨床的には、バウムテストから得られた仮説を、面接やSCT、質問紙、認知機能検査など別の情報によって確認していくという使い方が適切といえます。
バウムテスト(樹木画テスト)は、一本の木を描いてもらい、その描画を通して心理的特徴を理解するための描画法・投映法の一つです。
木の大きさ、位置、幹、枝、樹冠、根、実、筆圧など、さまざまな特徴を総合的に検討します。
一方で、一つの描画特徴だけから性格や精神疾患を判断することはできません。
バウムテストは「病名を決める検査」ではなく、
言葉だけでは捉えにくい側面も含め、その人をより多面的に理解するための補助的な心理検査
と考えると分かりやすいでしょう。
・1)Lilienfeld SO, et al.: The Scientific Status of Projective Techniques. Psychol Sci Public Interest, 1: 27-66, 2000.
・2)青木 健次.: 投影描画法の基礎的研究 (第1報). 心理学研究, 1: 9-17, 1980.
・3)Guo H, et al.: Tree Imagery in Drawing Tests for Screening Mental Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis. Depress Anxiety, 2026:9571222, 2026.
・4)Stanzani Maserati M, et al.: The Tree-Drawing Test (Koch’s Baum Test): A Useful Aid to Diagnose Cognitive Impairment. Behav Neurol, 2015:534681, 2015.
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