うつ病に対する栄養補助|2026年の報告

うつ病の治療というと、抗うつ薬や心理療法が中心ですが、近年ではニュートラシューティカルズと呼ばれる栄養補助による治療アプローチも行われています。

特に、

  • EPA(オメガ3脂肪酸)
  • ビタミンD
  • セントジョーンズワート
  • サフラン
  • クルクミン

などの栄養成分・植物由来成分についての研究が進んでいます。

2026年9月 に発表された研究では、成人の大うつ病性障害(MDD)に対する、こうした栄養補助成分・植物由来成分の効果について大規模なネットワークメタ解析が行われました1)。

163研究、15,757人を解析

今回の研究では、成人の大うつ病性障害を対象としたランダム化比較試験が系統的に検討されました。

最終的には、

163研究、15,757人、137種類の治療・組み合わせ

という非常に多くのデータが解析されています。

研究者らは、単に「抑うつ症状が改善したか」だけではなく、

  • 治療反応(response)
  • 寛解(remission)
  • 副作用による中断
  • すべての原因による治療中断

などについても検討しました。

EPA、ビタミンD3、セントジョーンズワートに注目

最初の解析では、多くの栄養補助成分や植物由来成分で、プラセボより抑うつ症状が改善する可能性が示されました。

しかし、このような研究では、研究の質が低かったり、特定の研究だけ極端に大きな効果が報告されたりすると、実際よりも効果が大きく見えることがあります。

そこで研究者らは、バイアスリスクなどを考慮した、より厳しい解析を行いました。

その結果、特に注目されたのが、

  • EPA
  • ビタミンD3
  • セントジョーンズワート抽出物(ZE117)

でした。

抑うつ症状について、プラセボと比較した効果量(SMD)は、以下の結果でした。

うつ病治療に有望な栄養補助・植物由来成分

特にEPAは、うつ病に対する栄養補助として多くの研究で検討されている

この中でもEPAは、

20研究、8,483人

という比較的多くのデータに基づいていました。

さらに、「症状が一定以上改善した人」の割合をみる治療反応(response)についても、EPAはプラセボより良好な結果を示しました。

EPA+DHAや、抗うつ薬のフルオキセチン(日本未承認薬)にEPAを追加した治療でも、治療反応についてプラセボを上回る結果が報告されています。

EPAは青魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸の一つです。

うつ病とオメガ3脂肪酸との関係については以前から多くの研究が行われていました。

今回の大規模解析でも興味深い結果となりました。

うつ病に対する栄養補助として、ビタミンD3にも抗うつ効果の可能性

ビタミンD3もプラセボと比較して有意な抑うつ症状の改善を示しました。

今回報告された効果量は、

SMD −1.59(95%信頼区間 −2.71~−0.46)

でした。

一方、EPAとは異なり、ビタミンD3については3研究、344人と対象者数がまだ少なく、信頼区間も広くなっています。

そのため、「ビタミンDを飲めばうつ病が大きく改善する」とまで結論づけることはできません。

今後、より大規模で質の高い研究による確認が必要です。

うつ病に対する栄養補助として、セントジョーンズワートも有望だが注意が必要

植物由来成分では、セントジョーンズワート(St. John’s wort)の特定の抽出物であるZE117が注目されました。

抑うつ症状について、

SMD −1.02(95%信頼区間 −1.90~−0.15)

と、プラセボより有意な改善が認められています。

また、ZE117では治療反応、WS5570/ZE117では寛解についてもプラセボより良好な結果が報告されました。

ただし、セントジョーンズワートは「天然の成分だから安全」と考えるべきではありません。

今回の論文自体も、栄養補助成分や植物由来成分が「natural=安全」と認識されやすい一方、十分な規制上の承認がないまま使用されている場合があることを問題として挙げています。

うつ病に対する栄養補助として不安症状にはクルクミンも有効

うつ病では、抑うつ気分だけでなく、不安や緊張などの症状を伴うこともあります。

今回の研究では、うつ病に伴う不安症状についても解析されました。

研究の質が比較的高い試験に限定すると、クルクミンはプラセボより不安症状を改善していました。

その効果量は、

SMD −0.58(95%信頼区間 −0.99~−0.18)

でした。

ただし、研究者らは「抑うつ症状が改善した結果として不安も改善した」

という可能性を完全には否定できないとしています。

「非常に大きな効果」という結果には注意

今回の研究で最も重要なのは、実はここかもしれません。

EPAのSMD −1.67、ビタミンD3の−1.59という数字だけを見ると、非常に大きな抗うつ効果があるように見えます。

しかし研究者ら自身が、これらを「higher-than-expected/unrealistic effect sizes(予想以上に大きい/非現実的な効果量)」と表現しています。

さらに、研究の質を評価すると、質の低い研究ほど大きな治療効果を報告する傾向が認められました。

そして最終的なエビデンスの確実性は、ほとんどが

「低い(low)」または「非常に低い(very low)」

と評価されています。

栄養補助は「標準治療の代わり」ではない

今回の研究から、EPA、ビタミンD3、セントジョーンズワートなど、一部の栄養・植物由来成分にはうつ病を改善する可能性が示されました。

特にEPAについては比較的多くの研究が存在しており、今後も注目される分野だと思われます。

一方で、今回報告された非常に大きな効果量をそのまま実際の診療に当てはめることはできません。

著者らも最終的に、質の低いエビデンスを除外すると、有望な栄養補助・植物由来成分は限られており、さらに厳密な臨床試験が必要であると結論づけています。

栄養状態を整えることは心身の健康にとって重要です。

しかし、サプリメントだけでうつ病を治療しようとするのではなく、抗うつ薬、心理療法、生活習慣への介入などを含め、その方の状態に合わせて治療を考えていくことが大切です。

文献

1)Fornaro M, et al.: Nutraceuticals and phytoceuticals for the treatment of major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis. Mol Psychiatry, 2026.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医