30種類の抗うつ薬の心血管・代謝への影響

2025年10月、Pillingerらにより、30種類の抗うつ薬の心血管・代謝への影響の解析が発表されました。

解析に含まれた、30種類の抗うつ薬は以下となっています。

本コラムでは、日本未承認薬を除き、統計学的に有意差のあったもののみを図に再構成しました。

体重の変化は、マプロチリン、アミトリプチリン、ミルナシプラン、ミアンセリン、フルボキサミン、ミルタザピンで増加がみられました。

一方、セルトラリン、ベンラファキシン、デュロキセチン、パロキセチンでは体重の低下がみられました(図1)。

図1 抗うつ薬間の体重変化の比較

総コレステロール値は、ベンラファキシン、デュロキセチン、パロキセチンで上昇がみられました(図2)。

図2 抗うつ薬間の総コレステロール値の変化の比較

血糖値は、デュロキセチンのみ上昇がみられました(図3)。

図3 抗うつ薬間の血糖値の変化の比較

心拍数は、ノルトリプチリン、クロミプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、ベンラファキシン、デュロキセチンで増加がみられました。

一方、フルボキサミンは減少がみられました(図4)。

図4 抗うつ薬間の心拍数の変化の比較

血圧(収縮期)は、アミトリプチリン、ベンラファキシン、イミプラミン、デュロキセチンで上昇がみられました。

一方、ノルトリプチリンは低下がみられました(図5)。

図5 抗うつ薬間の血圧(収縮期)の変化の比較

AST・ALT値は、デュロキセチンのみで上昇がみられました(図6)。

図6 抗うつ薬間のAST・ALT値の変化の比較

ALP値は、セルトラリン、ベンラファキシン、パロキセチン、デュロキセチンで上昇がみられました(図7)

図7 抗うつ薬間のALP値の変化の比較

ナトリウムは、デュロキセチンとベンラファキシンで低下がみられました(図8)。

図8 抗うつ薬間のナトリウムの変化の比較

今回の研究では、ベースの体重が増加しているほど、抗うつ薬による収縮期血圧の上昇と関連している結果でした。

性別が心血管・代謝に影響をあたえる根拠は見出されませんでした。

また、うつ病の重症度は、体重、総コレステロール値、血糖値の変化は相関しませんでした。

抗うつ薬による体重増加を気にする方が多くいますが、今回の結果からは、セルトラリン、ベンラファキシン、デュロキセチン、パロキセチンは安心して使用して問題ない結果が提示されたと言えます。

一方で著者らも、考察で述べていますが、ベンラファキシン、デュロキセチン、パロキセチンは体重減少がみられるものの、総コレステロールは上昇がみられ、この関係性には今後の研究が待たれます。

一部の三環系抗うつ薬とデュロキセチン、ベンラファキシンが心拍数、血圧上昇に関連するのは、従来の研究結果と同様といえます。

AST・ALT値の上昇は、デュロキセチンでみられ、ALP値の上昇はセルトラリンで高い結果は、すでに2剤が併用されている場合で、いずれかの肝酵素が上昇している時(または上昇してきた時)に、どちらの薬剤がより誘因になっているかのヒントになりそうです。

抗うつ薬の効果は、個人の薬剤反応性があるといわれています。

しかし、症状により薬剤を選択するだけでなく、個人の体重や血圧から抗うつ薬を慎重に検討することの重要さを、今回の結果は示しています。

文献

  • 1) Pillinger T, et al.: The effects of antidepressants on cardiometabolic and other physiological parameters: a systematic review and network meta-analysis. Lancet, 406: 2063-2077, 2025.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医