【うつ病の栄養療法】最新の報告

はじめに

うつ病の栄養療法では、食事で不足しがちな、うつ病・うつ症状を改善するのに必要な栄養素をしっかりと摂取することが、まず推奨されています。

摂取が推奨されている栄養素には以下等が挙げられています1)。

  • EPA(エイコサペンタエン酸)
  • 亜鉛
  • ビタミンD
  • 葉酸
  • アミノ酸

同時にうつ病・うつ状態を悪化させる食べ物・成分を控えることも推奨されています。

摂取を控えることが推奨されているものには、以下等があります2)。

  • ジャンクフード
  • スナック菓子
  • 砂糖入り飲料

本稿では、上記の中からビタミンDと亜鉛の直近の報告と、マグネシウムと地中海食式食とうつ病の関係の最新の報告について概説いたします。

紅茶についてもご質問を頂くことが多く、今回記載致しました。

ビタミンDについて

ビタミンDは以前から血清ビタミンD低値では、うつ病のリスクが高まることが報告されていました3)。

また、補充することによりうつ病の予防効果があり、またうつ病発症後における治療効果も報告されていました4)、5)。

これらを踏まえ、2024年12月、31件の研究をもとに、ビタミンD摂取濃度とうつ症状の改善度を解析した結果が報告されました6)。

報告では、1日1000/IUのビタミンD3を摂取すると、うつ症状が軽度に改善する結果でした。

図1 ビタミンD摂取量とうつ症状改善の関係

しかし、うつ病の寛解には影響しないという結果でした。

ビタミンDは魚に多く含まれているため、魚を摂取することで、EPAも同時に摂取することができるため、魚の摂取が推奨されます。

亜鉛について

2022年に、亜鉛のうつ病予防効果、治療効果の解析が報告されました6)。

治療効果については、7件の二重盲検法の研究が解析され、結果が有意に亜鉛の補充がうつ症状を改善するという結果でした。

図2 亜鉛の補充によるうつ症状改善効果

また、亜鉛の補充は、最大で28%うつ病の発病リスクを減少するという結果でした。

マグネシウムについて

マグネシウムは、人体に必要なミネラルの一種で、成人では、体内に約20g~30gが存在し、その約6割はリン酸マグネシウムや炭酸水素マグネシウムとして骨や歯に含まれ、残りは筋肉や脳・神経に存在しています。

300種類以上の酵素を活性化する働きがあり、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整にも役立っています。

マグネシウムが不足すると骨の形成に影響が出るほか、不整脈や虚血性心疾患、高血圧、筋肉のけいれんを引き起こします。

また神経過敏や抑うつ感などが生じることもあるとされています8)。

2025年1月、マグネシウム摂取量とうつ病発症リスクの用量関係の解析が報告されました9)。

この研究では、13件の研究が解析され、マグネシウムの摂取量が多い人は低い人と比べ、うつ病の発症リスクが34%低いという結果でした。

また、マグネシウム摂取量が1日100mg増加すると、うつ病発症リスクが7%減少し、摂取量は170から370mgが、うつ病発症リスクの低下と関連する摂取量であることが報告されています。

図3 マグネシウム摂取量とうつ病発症リスク低下の関係

地中海式食事について

地中海式食事はもともと地中海沿岸の国々での食事と食様様式を指すもので、主に以下のような特徴を有します10)。

  • オリーブオイルを主な調理用脂肪として使用します
  • 果物や野菜、豆類、ナッツ類をたくさん食べます
  • パンやその他の穀物製品(パスタ、米、全粒穀物)は、毎日の食事の一部に取り入れる
  • 最小限の加工で、地元で生産された新鮮な食品が最良です
  • 主にヨーグルトとチーズなどの乳製品を毎日摂取します
  • 赤身肉は適度に摂取し、可能であればシチューやその他の料理の一部として食べる
  • 魚をたくさん摂取し、卵は適度に摂取する
  • 新鮮な果物を毎日のデザートにし、甘いお菓子やケーキ、乳製品を使ったデザートは特別な時だけにする
  • 地中海式食事法では、水が最も優れた飲み物です
  • 毎日身体を動かしましょう。それは良い食事と同じくらい重要です

図4 地中海式ダイエットピラミッド

2024年12月、うつ症状の改善に対する地中海式食事療法の効果の解析が報告されました11)。

報告では、うつ病、または、軽度から中等度の抑うつ症状を有する若年および中年成人の抑うつ症状を有意に軽減する結果でした。

著者らは、地中海式食事療法の効果として、以下らの栄養を豊富に摂取することがうつ症状の改善に寄与すると考察で述べています。

  • ポリフェノール
  • オメガ脂肪酸
  • ビタミン
  • 植物線維
  • セレン
  • 亜鉛

現在のうつ病の発症仮説の1つに脳内の神経細胞の炎症が挙げられていますが、これらの栄養摂取が炎症の抑制すること(特にオメガ3系多価不飽和脂肪酸は抗炎症作用が知られています)、BDNF(脳由来神経栄養因子)産生に関与することが想定されています。

欧米食は、反対に飽和脂肪酸の割合が多くなり、炎症を誘発し、BDNFを減少させることによりうつ症状を悪化させると考えられています2)。

紅茶・コーヒー

紅茶・コーヒーはうつ病のリスクを軽減することが従来、報告されていました。

2023年、抗酸化物質のうつ病発症リスク軽減効果の解析が報告されました12)。

報告では、紅茶・コーヒーは、コエンザイムQ10、亜鉛、マグネシウムより発症リスク軽減効果を上回りました。

図5 各抗酸化物質のうつ病発症リスク軽減効果

1日1カップから4カップの紅茶が効果があり、4カップで最大の予防効果が得られることが報告されています13)。

おわりに

栄養素はサプリメントでも摂取できますが、まずは食事をしっかりとることが第1になります。

その上でうつ病の予防・改善に有効な栄養素の摂取が不足していないか、見直していくのが良いと思われます。

和食(日本食)では焼き魚定食といったように、魚をつかった食事が一般的にあります。

そのため、普段から和食を多く食べている方は、無理に地中海式食に変える必要はないと思われます。

ジャンクフードが多い方で、西洋式の食事を好む方は地中海式食を取り入れていくとうつ症状の予防、改善に効果的と思われます。

お一人で悩んでいませんか?

うつ症状がある場合は、早めの心療内科・精神科の受診をおすすめします。

まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

ハートを包み込むイメージ

文献

  • 1) Sarris J, et al.: Adjunctive Nutraceuticals for Depression: A Systematic Review and Meta-Analyses. Am J Psychiatry, 173: 575-87, 2016.
  • 2) Ejtahed HS, et al.: Association between junk food consumption and mental health problems in adults: a systematic review and meta-analysis. BMC Psychiatry, 24: 438, 2024.
  • 3) Musazadeh V, et al. Vitamin D protects against depression: Evidence from an umbrella meta-analysis on interventional and observational meta-analyses. Pharmacol Res, 187:106605, 2023.
  • 4) Xie F, et al.: Effect of vitamin D supplementation on the incidence and prognosis of depression: An updated meta-analysis based on randomized controlled trials. Front Public Health, 10:903547, 2022.
  • 5) Mikola T, et al.: The effect of vitamin D supplementation on depressive symptoms in adults: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Crit Rev Food Sci Nutr, 63: 11784-11801, 2023.
  • 6) Ghaemi S, et al.: The effect of vitamin D supplementation on depression: a systematic review and dose-response meta-analysis of randomized controlled trials. Psychol Med, 18: 1-10, 2024.
  • 7) Yosaee S, et al.: Zinc in depression: From development to treatment: A comparative/ dose response meta-analysis of observational studies and randomized controlled trials. Gen Hosp Psychiatry, 74:110-117, 2022.
  • 8) 厚生労働省. 生活習慣病予防のための健康情報サイト, マグネシウム. 2025.
  • 9) Hajhashemy Z, et al.: Dietary Magnesium Intake in Relation to Depression in Adults: A GRADE-Assessed Systematic Review and Dose-Response Meta-analysis of Epidemiologic Studies. Nutr Rev, 83: 217-229, 2025.
  • 10) FUNDACIÓN DIETA MEDITERRÁNEA HP, 2025.
  • 11) Bizzozero-Peroni B, et al.: The impact of the Mediterranean diet on alleviating depressive symptoms in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Rev, 83: 29-39, 2025.
  • 12) Wang H, et al.: Protective role of antioxidant supplementation for depression and anxiety: A meta-analysis of randomized clinical trials. J Affect Disord, 323:264-279, 2023.
  • 13) Asil E, et al.: Effects of black tea consumption and caffeine intake on depression risk in black tea consumers. Afr Health Sci, 21: 858-865, 2021.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医