精神科・心療内科の薬と飲み合わせに注意が必要な薬①トラマドール(トラマール・ワントラム・ツートラム)

2024.11.05

はじめに

精神科・心療内科から処方される薬と内科や整形外科などの他の科から処方される薬には、作用が似ていることで、効果が想定以上に強まることがあります。

また、薬剤の相互作用で逆に効果が弱まってしまうこともあります。

特に注意を要するのは相互作用で効果が想定以上に強まる場合で、副作用、有害事象が生じることです。

鎮痛薬トラマドールについて

鎮痛薬のトラマドールは1日数回にわけて内服するトラマールと、1日1回内服のワントラム、1日2回内服のツートラム、アセトアミノフェンとの合剤のトラムセットがあります(図1)。

図1 トラマドールの剤型

作用機序がオピオイド受容体の1つのμオピオイド受容体に作用することと、抗うつ薬のセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)と同じSNRI作用により、鎮痛効果を発揮します(図2)。

図2 トラマドールの作用機序

抗うつ薬のSNRIと比較すると以下のようなSNRIの強さを有しています1)、2)、(図3)。

図3 SNRIとトラマドールのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用の強さ

化学構造式はベンラファキシン(イフェクサー)に近い構造となっています3)、(図4)。

図4 ベンラファキシンとトラマドールの化学構造式

併用による有害事象①躁転

よくある事例として、膝関節症や腰痛の痛みにSNRIのデュロキセチンとトラマドールの2剤が処方されることがあります。

(抗うつ薬のデュロキセチンは腰痛や関節症の痛みに対しても保険承認を得ています。)

この場合、2剤によるSNRIの作用が強まり、有害事象が生じたり、躁/軽躁に転じることがあります4)。

痛みでうつ傾向だった高齢者が、ペインクリニックや整形外科に通院し、疼痛が改善するとともに、普段以上に活動性が亢進したり、家庭内でイライラする状態が目立ってきたら、同居者の方は、内服薬を確認することをお勧めします。

併用による有害事象②セロトニン症候群

さらに注意すべきこととして、SSRI、SNRIとの併用によるセロトニン症候群の発症リスクがあります。

セロトニン症候群は特にSSRIとオピオイド(主にトラマドール)で発症率が高いことが報告されています5)。

オピオイドと他剤(主にSSRI、SNRI)との相互作用によるセロトニン症候群の発症割合は、トラマドールが最も高い割合であることが報告されています6)、(図5)。

図5 各オピオイドと他剤との相互作用によるセロトニン症候群の発症割合

併用による有害事象③せん妄

トラマドールは単剤でせん妄のリスクが高いことがわかっています7)。

ICUに入院した高齢者のせん妄のリスク要因には、うつ病及び在宅でのSSRI/SNRI内服が要因に挙げられています8)。

2剤を併用している場合、特に高齢者では、自宅でせん妄が生じることがあります。

傾眠傾向や認知機能が一過性に低下する低活動性せん妄は、うつ病の悪化や、認知症と間違われることがあり、薬剤誘発性低活動性せん妄と慎重に鑑別をする必要があります。

併用による有害事象④けいれん

SSRI、SNRIはけいれん発作が生じるリスクがあることが報告されています9)。

トラマドールもけいれん発作のリスクがあります10)、(図6)。

図6 SSRI・SNRI・トラマドールのけいれん発作のリスク

そのため、トラマドールと抗うつ薬の併用による、けいれん発作の増加が報告されています11)。

おわりに

トラマドール自体は疼痛治療薬として、効果と忍容性に優れた薬剤です。

それゆえに多く処方されており、抗うつ薬と併用した際に、作用点が重なることで、有害事象が生じやすくなることがあります。

“良薬は口に苦し”ならず、“良薬は副作用を逃がさず”で見ていくことが肝要と思われます。

参考

  • 1) Vaishnavi SN, et al.: Milnacipran: a comparative analysis of human monoamine uptake and transporter binding affinity. Biol Psychiatry, 55: 320-2, 2004.
  • 2) Raffa RB, et al.: Complementary and synergistic antinociceptive interaction between the enantiomers of tramadol. J Pharmacol Exp Ther, 267: 331-40, 1993.
  • 3) Markowitz JS, Patrick KS.: Venlafaxine-tramadol similarities. Med Hypotheses, 51: 167-8, 1998.
  • 4) Hefzi N, et al.: Mania induced by tramadol-venlafaxine combination. J Opioid Manag, 15: 342-344, 2019.
  • 5) Abadie D, et al.: Serotonin Syndrome: Analysis of Cases Registered in the French Pharmacovigilance Database. J Clin Psychopharmacol, 35: 382-8, 2015.
  • 6) Rickli A, et al.: Opioid-induced inhibition of the human 5-HT and noradrenaline transporters in vitro: link to clinical reports of serotonin syndrome. Br J Pharmacol, 175: 532-543, 2018.
  • 7) Swart LM, et al.: The Comparative Risk of Delirium with Different Opioids: A Systematic Review. Drugs Aging, 34: 437-443, 2017.
  • 8) Ulderich Williams SC, et al.: Incidence and Risk Factors for ICU-Associated Delirium in the Alert Geriatric Trauma Population. Am Surg, 90: 1866-1871, 2024.
  • 9) Yang W, et al.: Antidepressant use and the risk of seizure: a meta-analysis of observational studies. Eur J Clin Pharmacol, 80: 175-183, 2024.
  • 10) Labate A, et al.: Tramadol and new-onset seizures. Med J Aust, 182: 42-3, 2005.
  • 11) Boyd IW.: Tramadol and seizures. Med J Aust, 182: 595-6, 2005.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医