オーヴェリティ(日本未承認薬)の特徴・作用・副作用について

はじめに

日本では現在、うつ病の薬物治療にSSRISNRIミルタザピンボルチオキセチン等の抗うつ薬が使用されています。

しかし、効果発現までは約2週間かかるとされ、また反応性も30~50%とされており、迅速な効果発現と有害事象の少ない薬剤の開発、導入が期待されています。

米国ではすでに、いくつかの新規抗うつ薬が開発、承認されています。

そのうちの1剤は日本でも承認が期待されているズラノロンです。

ズラノロンと同じく、1週間で効果が認められる、オーヴェリティという抗うつ薬も米国では使用されています。

特徴

オーヴェリティは米国で2022年8月にうつ病の治療薬として承認されました1)、(図1)。

図1 オーヴェリティの剤型

日本で使用されている咳止め薬のデキストロメトルファン(医薬品名:メジコン)と日本未承認薬の抗うつ薬ブプロピオンの2剤からなる合剤です(図2)。

図2 オーヴェリティの構成

ブプロピオンはノルアドレナリン再取り込み阻害作用とドパミン再取り込み阻害作用を有し、抗うつ薬のジャンルとしてNDRI(Noradrenaline-Dopamine Reuptake Inhibitor :ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害剤)と称されています。

デキストロメトルファンはセロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を有するとともに、グルタミン酸NMDA受容体拮抗作用及びシグマ-1受容体作動作用を有し、抗うつ作用を有することがわかっています。

この2剤を併用することで、1週間で抗うつ作用を発揮する、即効性のある治療薬としてアクサム・セラピューティクス社により開発されました2)、(図3)。

図3 オーヴェリティの抗うつ効果

2024年6月、プラセボ、ブプロピオンと比較して有効性が有意に優れていると比較解析結果が報告されています3)。

作用機序

オーヴェリティは、主としてデキストロメトルファンのNMDAグルタミン酸受容体拮抗作用とシグマ-1受容体作動作用によってもたらされます。

デキストロメトルファンは、シグマ-1受容体への親和性が他の抗うつ薬と比較して、比較的高いことが報告されています4)、(図4)。

図4 デキストロメトルファンと抗うつ薬のシグマ-1受容体の親和性の比較

NMDA受容体阻害は、ケタミン等と比較し、比較的弱く作用することが報告されています3)、(図5)。

図5 デキストロメトルファンのグルタミン酸NMDA受容体阻害率

デキストロメトルファンは、肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6で代謝されるため、CYP2D6の働きを阻害するブプロピオンにより、血中の持続時間が約4時間から22時間に延長します。

これにより、作用の増強したデキストロメトルファンにより即効性のある抗うつ作用が発揮されます1)、(図6)。

図6 オーヴェリティの作用機序

用法・用量

内服を開始する前に以下のスクリーニングを要します。

  • 血圧測定と定期的なモニター
  • 双極性障害、躁病、または軽躁病の既往歴または家族歴のスクリーニング
  • 他の処方薬でブプロピオンまたはデキストロメトルファンも含んだ薬剤の処方を受けていないかのスクリーニング

用法・用量は最初の3日間1日1回1錠を朝に内服し、以降は1日2回8時間の間隔をあけて内服するとなっています。

副作用

以下の場合は禁忌となっています。

  • けいれんの既往
  • 現在及び過去の神経性過食症及び神経性拒食症
  • アルコール、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸塩、抗てんかん薬の突然の中止
  • デキストロメトルファン、ブプロピオン、またはオーヴェリティの成分に対する過敏症の既往

警告として以下が挙げられています。

  • 小児および若年成人における自殺念慮および行動
  • けいれん発作
  • 血圧の上昇と高血圧
  • 躁転
  • 精神病およびその他の神経精神医学的反応
  • 閉塞隅角緑内障
  • めまい
  • セロトニン症候群
  • 胎児毒性

治験第3相試験で、162人中100人(61.7%)に副作用が認められ、主なものは以下でした(図7)。

図7 オーヴェリティの主な副作用

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。

まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

参考

  • 1) Keam SJ.: Dextromethorphan/Bupropion: First Approval. CNS Drugs, 36: 1229-1238, 2022.
  • 2) Iosifescu DV, et al.: Efficacy and Safety of AXS-05 (Dextromethorphan-Bupropion) in Patients With Major Depressive Disorder: A Phase 3 Randomized Clinical Trial (GEMINI). J Clin Psychiatry, 83: 21m14345, 2022.
  • 3) Gaca Z, et al.: Network meta-analysis (NMA) of dextromethorphan-bupropion (AXS-05) efficacy and safety in major depressive disorder. Eur Neuropsychopharmacol, 86: 18-19, 2024.
  • 4) Taylor CP, et al.: Pharmacology of dextromethorphan: Relevance to dextromethorphan/quinidine (Nuedexta) clinical use. Pharmacol Ther, 164: 170-82, 2016.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医