三環系抗うつ薬について 作用・特徴・比較

開発経緯

抗ヒスタミン薬のプロメタジン(ヒベルナ、ピレチア)から同様の抗ヒスタミン薬を開発しようとした中で、その薬が偶然にも気分安定作用、抗精神病薬作用があることがわかりました。

その薬がクロルプロマジン(コントミン)でした。

Kuhnはクロルプロマジンから同様に抗精神病作用のある薬を開発しようとするも、効果は得られませんでした。

しかし、統合失調症患者の中に気分の高揚がみられる現象を見出し、初の三環系抗うつ薬イミプラミンが誕生しました1)。

作用機序

三環系抗うつ薬はセロトニン、ノルアドレナリンのシナプス間での取り組み阻害を行い、セロトニン、ノルアドレナリンの機能を高め抗うつ効果を発揮すると考えられています2)、(図1)。

図1 三環系抗うつ薬の作用機序

一方でヒスタミン受容体を阻害することで眠気等が生じ、ムスカリン受容体を阻害することで口渇、便秘等が生じ、α1アドレナリン受容体を阻害することで血圧低下、ふらつき等が生じる副作用を併せ持っています2)。

高用量を使用すると不整脈やQT延長、けいれん誘発のリスクが高くなる副作用があります2)。

各三環系抗うつ薬の作用の特徴と比較

日本では以下の三環系抗うつ薬が承認され使用されています。(アモキサンは2023年2月22日出荷停止となり事実上の販売中止となりました。)

  • イミプラミン(先発医薬品名:トフラニール)
  • アミトリプチリン(先発医薬品名:トリプタノール)
  • ノルトリプチリン(先発医薬品名:ノリトレン)
  • トリミプラミン(先発医薬品名:スルモンチール)
  • クロミプラミン(先発医薬品名:アナフラニール)
  • アモキサピン(先発医薬品名:アモキサピン)
  • ロフェプラミン(先発医薬品名:アンプリット)
  • ドスレピン(先発医薬品名:プロチアデン)

セロトニンとノルアドレナリンへの作用は各三環系抗うつ薬で異なります3)、4)、(図2)。

図2 各三環系抗うつ薬のセロトニン(5-HT)、ノルアドレナリン(NA)取り込み阻害作用

同様に副作用に関わるヒスタミンH1受容体阻害、ムスカリンM受容体阻害、α1アドレナリン受容体阻害作用も各三環系抗うつ薬で異なります5)、6)(図3)。

図3 各三環系抗うつ薬のヒスタミンH1・ムスカリンM・α1アドレナリン受容体阻害作用

化学構造式から第3級アミン三環系抗うつ薬、第2級三環系抗うつ薬に分類されます(図4、5)。

図4 第3級アミン三環系抗うつ薬

(図中のドキセピンは日本未承認です。)

図5 第2級アミン三環系抗うつ薬

(図中のデシプラミンは発売中止、プロトリプチリンは日本未初認です。)

イミプラミン(トフラニール)

イミプラミン(トフラニール)は標準的な三環系抗うつ薬として長く使用されてきました。

パニック障害にも有効であり7)、SSRIが登場するまでは、イミプラミンが多く使用されてきました。

現在でもSSRIが副作用が生じるため使用できない際には使用されることがあります。

アミトリプチリン(トリプタノール)

アミトリプチリンはイミプラミンと比較し、セロトニン、ノルアドレナリンへの作用は大きくは違いはないですが、ヒスタミンH1受容体とムスカリンM受容体を阻害する作用が強い特徴があります。

片頭痛予防、緊張型頭痛予防、神経障害性疼痛の治療に効果があり8~11)、痛みや不安、焦燥を伴ううつ病に使用されます。

SSRIと三環系抗うつ薬との直接対決では効果に差はないとの報告もされていましたが12)、現時点でのSSRI、SNRIミルタザピンボルチオキセチンとアミトリプチリン、クロミプラミンを含めた抗うつ薬の有効性と忍容性の比較における、直接比較では中程度の有効性と忍容性が認められています13)、(図6)。

図6 うつ病治療における抗うつ薬の有効性と忍容性(薬剤間の直接比較)

プラセボ対照試験も含めた全試験を含めた比較では、有効性と忍容性で優れている結果でした13)、(図7)。

図7 うつ病治療における抗うつ薬の有効性と忍容性(全ての試験を対象)

ノルトリプチリン(ノリトレン)

ノルトリプチリンはアミトリプチリンの代謝産物から開発されました(図8)。

図8 アミトリプチリン(トリプタノール)とノルトリプチリン(ノリトレン)の関係

他の三環系抗うつ薬と比較し、ノルアドレナリンへの作用が強く、意欲低下の改善が期待できます。

若年女性、非定型うつ病には効果が得られにくいことが報告されていますが14)、治療抵抗性うつ病に対する増強療法として有効であることが報告されています15)、(図9)。

図9 抗うつ薬の増強療法に使用される薬剤の有効性

アミトリプチリンと同様に神経障害性疼痛への有効性が示されています16)。

トリミプラミン(スルモンチール)

トリミプラミンはヒスタミンH1受容体阻害作用が強く、鎮静作用を有しています。

うつ病に伴う不眠や不眠症にも有効であることがわかっています17)、18)、(図10)。

図10 不眠症の入眠に対する薬剤の有効性の比較

トリミプラミンの作用機序は他の三環系抗うつ薬と異なり、大脳皮質ニューロンのノルアドレナリンの感受性を高めることと、セロトニンニューロンの活性を高めることが作用機序として示唆されています19)。

クロミプラミン(アナフラニール)

クロミプラミンは他の三環系抗うつ薬と比較しセロトニンへの作用が強く、うつ病治療とともに強迫症(強迫性障害)の治療に使われてきました。

現在はSSRI、とりわけエスシタロプラムの有効性が報告されており20)、治療はSSRIが中心となっています(図11)。

図11 児童・青年の強迫性障害に対する薬物治療の比較 SSRI及びクロミプラミン間での比較

ナルコレプシーに伴う情動脱力発作への適応も有しています。

アモキサピン(アモキサン)

アモキサピンはWander社が開発した三環系抗精神病薬のロキサピン(日本未承認)から合成されました。

クエチアピンの主要代謝産物のノルクエチアピンと構造が似ていることがわかっています21)、(図12)。

図12 アモキサピン(アモキサン)とノルクエチアピンの化学構造式

アモキサピンはノルトリプチリンと同様にノルアドレナリンに対して強い作用を有します。

三環系抗うつ薬の弱点であるムスカリンM受容体阻害作用が弱い(抗コリン作用が弱い)利点を有しています。

日本の臨床試験では、イミプラミン(トフラニール)に対し、唯一有意差がついた三環系抗うつ薬として知られています22)。

また、他の三環系抗うつ薬と比較しドパミンD2受容体阻害作用を有し、精神病症状を有するうつ病に有効であることが報告されています23)、(図13)。

図13 各三環系抗うつ薬のドパミンD2受容体阻害作用

抗うつ薬でありながら、非定型抗精神病薬の特徴を有しています24)。

ロフェプラミン(アンプリット)

ロフェプラミンはイミプラミンから誘導し開発された薬でイミプラミンに構造が似ていますが、セロトニンへの作用が極めて弱く、主にノルアドレナリンへの作用を介して抗うつ作用を発揮します25)。

ドスレピン(プロチアデン)

ドスレピンは作用が穏やかな特徴があります。

他の三環系抗うつ薬で副作用が出やすい場合などはドスレピンが向いている場合があります。

α1アドレナリン受容体阻害作用が弱い利点を有しています。

おひとりで悩んでいませんか?

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

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参考

  • 1)村崎 光邦. : 抗うつ薬開発の必然と時代背景を反映した抗うつ薬の位置づけ. 臨床精神薬理, 18 : 119-138, 2015.
  • 2)Feighner JP. : Mechanism of action of antidepressant medications. J Clin Psychiatry, 4 : 4-11, 1999.
  • 3)Richelson E, Pfenning M. : Blockade by antidepressants and related compounds of biogenic amine uptake into rat brain synaptosomes: most antidepressants selectively block norepinephrine uptake. Eur J Pharmacol, 277-86, 1984.
  • 4)Richelson E, Nelson A. : Antagonism by antidepressants of neurotransmitter receptors of normal human brain in vitro. J Pharmacol Exp Ther, 94-102, 1984.
  • 5)Cusack B, et al. : Binding of antidepressants to human brain receptors: focus on newer generation compounds. Psychopharmacology (Berl), 114 : 559-65, 1994.
  • 6)Bolden-Watson C, Richelson E. : Blockade by newly-developed antidepressants of biogenic amine uptake into rat brain synaptosomes. Life Sci, 1023-9, 1993.
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  • 8)Ailani J, et al. : The American Headache Society Consensus Statement: Update on integrating new migraine treatments into clinical practice. Headache, 61 : 1021-1039, 2021.
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  • 10)Ling HQ, et al. : Comparative Efficacy and Safety of 11 Drugs as Therapies for Adults With Neuropathic Pain After Spinal Cord Injury: A Bayesian Network Analysis Based on 20 Randomized Controlled Trials. Front Neurol, 13 : 818522, 2022.
  • 11)Chen KY, Li RY. : Efficacy and safety of different antidepressants and anticonvulsants in central poststroke pain: A network meta-analysis and systematic review. PLoS One, 17 : e0276012, 2022.
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執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医