抗うつ薬はインプラントが失敗しやすくなる?

はじめに

抗うつ薬(特にSSRI)を服用している人では、インプラントが定着しにくくなる可能性が報告されています。

歯科インプラントは、失った歯を補う有用な治療法であるため、この問題への関心が高まっています。

2026年に発表された総説では、この関連性が詳しく検討されました1)。

なぜインプラントが失敗するのでしょうか?

インプラントは、人工歯根が顎の骨としっかり結合する「オッセオインテグレーション(骨結合)」によって安定します。

しかし、

  • 喫煙
  • 糖尿病
  • 骨粗しょう症
  • 高齢
  • 飲酒
  • 一部の薬剤

などがあると、この骨結合がうまく進まず、インプラントが抜けたり外れたりすることがあります。

SSRIは骨にも影響する可能性がある

セロトニンは脳だけでなく、骨の代謝にも関わっています。

これまでの研究では、SSRIを長期間服用している人では、

  • 骨密度の低下
  • 骨折リスクの増加

が報告されており、こうした骨への影響がインプラントにも関係している可能性があります。

最新の解析ではどのくらい抗うつ薬はリスクが高かった?

患者単位でみると

インプラント治療が失敗した人の割合は、

  • 抗うつ薬を服用している人:約17%
  • 服用していない人:約5%

でした。

つまり、約2.4倍インプラントが失敗しやすいという結果でした。

インプラント1本ごとにみても

インプラントの失敗率は、

  • 抗うつ薬服用者:約9%
  • 非服用者:約3%

で、こちらも約2倍以上のリスク上昇が認められました。

最新のコホート研究での抗うつ薬のリスク

2025年に報告された1,611人の研究でも、

患者単位では

  • SSRI服用者:18.6%
  • 非服用者:6.7%

がインプラント治療に失敗していました。

年齢や糖尿病、喫煙、骨粗しょう症などを調整した解析でも、SSRI服用者ではインプラント失敗のオッズ比は2.88倍でした。

ただし「抗うつ薬(SSRI)が原因」とはまだ言えない

重要なのは、今回の研究だけでは「SSRIが直接インプラントを失敗させる」とは証明されていないことです。

うつ病の患者さんでは、

  • 喫煙
  • 飲酒
  • 栄養状態
  • ビタミンD不足
  • 身体活動量の低下
  • 骨粗しょう症

など、骨の健康に影響する要因を併せ持つことが多く、これらが結果に影響している可能性があります。

インプラント導入時には、抗うつ薬を中止すべきでしょうか?

現時点では、自己判断で抗うつ薬を中止することは勧められません。

うつ病が再発するリスクの方が大きな問題になる可能性があります。

また、

  • 薬をいつまで中止すればリスクが下がるのか
  • 一時的に休薬することが有効なのか

については、十分なデータがありません。

抗うつ薬服用中の方がインプラント治療を受ける際のアドバイス

抗うつ薬を服用している方がインプラント治療を受ける場合は、

  • 歯科医師に服用中の薬を伝える
  • 喫煙している場合は禁煙する
  • 糖尿病があれば血糖値を良好に管理する
  • 口腔内を清潔に保つ
  • 定期的なメンテナンスを受ける

ことが重要です。

まとめ

最新の研究では、SSRIをはじめとする抗うつ薬を服用している人では、歯科インプラントが失敗するリスクが約2~3倍高いことが報告されています。

しかし、現時点では抗うつ薬そのものが原因であるとは断定できず、うつ病に伴う生活習慣や骨の健康状態などが影響している可能性もあります。

そのため、インプラント治療を予定している方は、自己判断で薬を中止するのではなく、精神科医と歯科医師の両方に相談しながら、安全に治療を進めることをおすすめします。

文献

1)Andrade C.: Association of Selective Serotonin Reuptake Inhibitor and Other Antidepressant Drugs With Dental Implant Failure. J Clin Psychiatry, 87: 26f16375, 2026.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医