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044-455-7500ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意、多動性、衝動性などを特徴とする神経発達症です。
子どもの頃から症状がみられ、成人期以降も不注意や遂行機能の困難が続くことがあります。
近年、ADHDと高齢期の認知機能低下や認知症との関連が注目されています。
2026年に医学誌『Brain Sciences』に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、
ADHDのある人は、ADHDのない人と比較して、認知症の発症ハザードが約2.5倍高いことが報告されました1)。
一方で、ADHDが直接認知症を引き起こすのか、また、どの種類の認知症と関連するのかについては、
まだ十分に明らかになっていません。
今回は、この研究結果をもとに、ADHDと認知症の関係について解説します。
ADHDでは、注意を持続すること、物事を計画的に進めること、複数の作業を管理することなどに
困難がみられる場合があります。
一方、認知症でも、物忘れだけでなく、注意力や判断力、計画を立てて行動する能力が低下することがあります。
このように、ADHDと認知症には一部共通する認知機能上の特徴があります。
しかし、両者は本来異なる疾患です。
ADHDは小児期からの神経発達上の特性であるのに対し、認知症は、以前に獲得されていた
認知機能が後天的に低下し、日常生活に支障をきたす状態です。
したがって、ADHDによる物忘れや不注意があるからといって、認知症であるとは限りません。
今回の研究では、ADHDの診断を受けた人が、その後、認知症と診断されるリスクについて検討しました。
Baiamonteらは、2025年5月までに発表された研究を検索し、ADHDと認知症の関連を調べた
5研究を採用しました。
対象者は合計3,704,277人で、4件のコホート研究と1件の症例対照研究が含まれています。
このうち、全原因認知症についてのメタ解析には、4件のコホート研究が使用されました。
各研究の結果を統合し、ADHDとその後の認知症発症との関連を評価しました。
ADHD患者では認知症の発症ハザードが約2.5倍高い
メタ解析の結果、ADHDのある人では、ADHDのない人と比較して、全原因認知症の発症ハザードが
有意に高いことが示されました。
ハザード比(HR):2.52(95%信頼区間:1.51~4.22)
これは、追跡期間中の認知症発症ハザードが、ADHD群で約2.5倍高かったことを意味します。
ただし、この結果は「ADHD患者の2.5人に1人が認知症になる」「認知症の発症確率が必ず2.5倍になる」
という意味ではありません。
また、研究間の異質性はI²=87.7%と非常に高く、研究ごとにリスクの大きさが異なっていました。
そのため、今回の数値をすべてのADHD患者にそのまま当てはめることはできません。
今回の研究で特に興味深いのは、認知症の種類によって結果が異なっていたことです。
認知症には、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症など、
さまざまな病型があります。
研究では、それぞれの病型についても検討されました。
| 認知症の種類 | ADHDとの関連 |
| アルツハイマー病 | 3研究で統計学的に有意な関連は認められなかった |
| レビー小体型認知症 | 2研究で有意な関連が報告された |
| 血管性認知症 | 研究によって結果が異なった |
| 前頭側頭型認知症 | 有意な関連は確認されなかった |
特に、アルツハイマー病については、検討された3研究のいずれにおいても、
ADHDとの有意な関連は確認されませんでした。
一方、レビー小体型認知症については、2研究でADHDとの強い関連が報告されています。
ただし、病型別の研究数は少なく、結果の不確実性も大きいため、ADHDが特定の認知症を
発症しやすくするかどうかについては、さらなる研究が必要です。
今回の研究では、ADHDと認知症の関連について、いくつかの可能性が考察されています。
ADHDでは、注意や行動の調節に関係するドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達系が
重要な役割を果たしています。
一方、レビー小体型認知症でも、ドパミン神経系などの機能障害が認められます。
このような神経生物学的な共通点が、両疾患の関連に関与している可能性があります。
しかし、共通する神経伝達系の異常が、実際に認知症発症の原因となることが
証明されたわけではありません。
ADHDのある人では、抑うつ症状、睡眠の問題、喫煙、肥満、身体活動の不足などが併存する場合があります。
また、高血圧、糖尿病、心血管疾患などは、認知症の発症に関連することが知られています。
そのため、ADHDそのものの影響だけでなく、こうした身体的・生活習慣上の要因が、
認知症リスクの上昇に関与している可能性があります。
ただし、今回の研究だけでは、それぞれの要因がどの程度リスクに寄与しているかは明らかではありません。
ADHDと認知症の初期段階では、不注意、物忘れ、段取りの悪さ、遂行機能の低下など、
共通する症状がみられることがあります。
そのため、認知症の初期症状が成人期のADHDと判断されたり、反対に、長年続いているADHDの症状が
認知症と判断されたりする可能性があります。
こうした診断上の問題が、研究結果に影響していることも考えられます。
ただし、一部の研究では、追跡開始後の一定期間に認知症と診断された患者を除外しても
関連が認められており、診断上の混同だけでは説明できない可能性もあります。
ADHDのある人では、もともと不注意や物忘れ、整理整頓の困難などがみられる場合があります。
重要なのは、以前からみられるADHDの特性と、新たに進行している認知機能低下を区別することです。
例えば、以前から忘れ物が多かった人でも、最近になって次のような変化が現れた場合には、
認知機能の評価が必要になることがあります。
これらの変化がある場合には、認知症だけでなく、うつ病、睡眠障害、薬剤の影響、
身体疾患なども含めて評価することが重要です。
また、認知症のリスクを考えるうえでは、血圧や血糖の管理、適度な運動、禁煙、睡眠の改善など、
一般的な認知症予防の取り組みも大切です。
ADHDの治療には、薬物療法や心理社会的支援、生活環境の調整などがあります。
しかし、今回のメタ解析では、ADHD治療薬の使用が将来の認知症発症リスクに与える影響について、
十分な評価はできませんでした。
したがって、ADHD治療薬を使用することで認知症を予防できるかどうかは、現時点では明らかではありません。
ADHDの治療は、日常生活上の困難を軽減し、生活の質を改善することを目的として、
個々の症状や生活状況に応じて検討することが重要です。
2026年に発表されたメタ解析では、ADHDのある人は、ADHDのない人と比較して、
全原因認知症の発症ハザードが約2.5倍高いことが報告されました。
一方で、アルツハイマー病との有意な関連は確認されず、レビー小体型認知症などとの関連についても、
研究数が少なく結論は限定的です。
また、今回の研究は観察研究に基づくものであり、ADHDが直接認知症を引き起こすことを
証明したものではありません。
ADHDがあるからといって、必ず認知症になるわけではありません。
大切なのは、ADHDの特性を理解しながら、加齢に伴って新たな認知機能の変化が現れていないかに
注意することです。
特に、以前はできていたことが難しくなるなど、認知機能や日常生活能力に進行性の変化がみられる場合には、
専門医による評価が重要です。
1)Baiamonte L, et al.: Attention Deficit/Hyperactivity Disorder and Risk of Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Brain Sciences, 16: 646, 2026.
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