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承認申請中の新規抗うつ薬
【ズラノロン】について

公開日 2024.12.27

はじめに

日本では現在、以下のジャンルの抗うつ薬が使用されています。

中でもSSRIのパキシルの2000年の登場以来、SSRI、SNRIが主として現在まで使用されてきました。

SSRIは効果発現に約2週間かかるとされています。

また、どのSSRIが当事者に合うか使用してみないとわからないこともあります。

米国ではすでに承認されている、ズラノロンという従来の抗うつ薬とは異なる、全く新しい作用機序の抗うつ薬が、塩野義製薬より日本で2024年9月27日に承認申請が行われました。

作用・特徴

ズラノロンはGABAA受容体に作用し、GABAのシグナル伝達を促進することで抗うつ作用を発揮する新しいメカニズムの抗うつ薬です1)、(図1)。

図1 ズラノロンの作用機序

ズラノロンの作用機序

作用機序からGABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターと呼ばれています。

内服3日目から効果が得られる即効性と忍容性に優れている利点を有しています2)、(図2)。

図2 ズラノロンの効果発現(米国第Ⅲ相試験)

ズラノロンの効果発現(米国第Ⅲ相試験)

産後うつ病への効果も示されたことから3)、(図3)、2023年8月4日米国FDAは初の産後経口抗うつ薬として、ズラノロン(販売名:ズルズバエ)を承認しました。

図3 Zuranolone:米国産後うつ Phase3試験

Zuranolone:米国産後うつ Phase3試験

開発経緯

ズラノロンは内因性神経ステロイドのアロプレグナロンから開発されました(図4)。

図4 ブレキサノロンとズラノロンの化学構造式

ブレキサノロンとズラノロンの化学構造式

アロプレグナロン自体は、すでに米国でブレキサノロン(販売名:ズレッソ)の医薬品名で点滴薬の産後うつ病の治療薬として、2019年に承認を得ています。

用法・用量

米国では産後うつ病に対し、脂肪分を含む食事とともに1日1回夕に50mgを14日間内服することとなっています。

従来の抗うつ薬のように投与量や投与期間の調節の必要がない特徴を有しています。

薬物動態

ズラノロン30mgを内服した際の血中濃度は、約5時間後に最高濃度に達し、約14時間後に半減します4)、(図5)。

図5 Zuranolone 10、20、30mgを内服した際の血中濃度の推移

Zuranolone 10、20、30mgを内服した際の血中濃度の推移

副作用

主な副作用は以下が報告されています3)、(図6)。

  • 眠気(36%)
  • めまい(13%)
  • 下痢(6%)
  • 疲労(5%)
  • 尿路感染症(5%)
  • 記憶障害(3%)
  • 腹痛(3%)

図6 Zuranoloneの主な副作用

Zuranoloneの主な副作用

おわりに

従来の抗うつ薬治療では、効果がえられなかった、または嘔気等の副作用で増量できない、継続できなかったなどの事例がみられます。

ズラノロンは即効性があり、消化管のセロトニンに作用しないため嘔気のリスクが低く、忍容性が良好であることが報告されています。

2025年の承認が期待されていますが、承認されると、うつ病治療の現場は大きな変化が生じると考えられます。

また、他にも日本では承認されていないものの、米国ではすでに以下のような薬剤もうつ病に承認を得ており治療の選択肢が拡大しています。

抗うつ薬による治療の状況は、今後期待がもてると言えます。

おひとりで悩んでいませんか?

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

参考

  • 1) Cutler AJ, et al.: Understanding the mechanism of action and clinical effects of neuroactive steroids and GABAergic compounds in major depressive disorder. Transl Psychiatry, 13: 228, 2023.
  • 2) Clayton AH, et al.: Zuranolone for the Treatment of Adults With Major Depressive Disorder: A Randomized, Placebo-Controlled Phase 3 Trial. Am J Psychiatry, 180: 676-684, 2023.
  • 3) Deligiannidis KM, et al.: Zuranolone for the Treatment of Postpartum Depression. Am J Psychiatry, 180 : 668-675, 2023.
  • 4) Sonoyama T, et al.: Pharmacokinetics, safety, and tolerability of single and multiple doses of zuranolone in Japanese and White healthy subjects: A phase 1 clinical trial. Neuropsychopharmacol Rep, 43: 346-358, 2023.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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