アンヘドニアにプラミペキソールは効果がある?

はじめに

アンヘドニア(anhedonia)とは、「楽しい」、「うれしい」、「やってみたい」といった喜びや意欲を感じにくくなる症状です。

うつ病や双極症では代表的な症状の一つであり、

  • 趣味が楽しめない
  • 人と会いたいと思えない
  • 何をしても心が動かない
  • やる気が出ない

などとして現れます。

アンヘドニアは、一般的な抗うつ薬では十分に改善しないことも多く、生活の質や社会復帰に大きく影響する症状として注目されています。

プラミペキソールとは?

プラミペキソールは、ドパミン受容体作動薬に分類される薬です。

日本では

  • パーキンソン病
  • むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

の治療薬として承認されています。

一方、近年では脳の「報酬系(ご褒美を感じる神経回路)」を活性化する作用から、うつ病のアンヘドニア改善にも期待されています。

なぜアンヘドニアに効果が期待されるのでしょうか?

アンヘドニアでは、脳の報酬系、とくに

  • 腹側線条体
  • 側坐核
  • 中脳辺縁ドパミン系

の働きが低下していると考えられています。

プラミペキソールは、この回路に多く存在するドパミンD3受容体を刺激することで、

  • 「やってみたい」という意欲
  • 報酬への反応
  • 喜びを感じる能力

を改善する可能性があります。

2026年 Nature Medicine の研究

2026年、Nature Medicineに掲載されたランダム化比較試験では、

  • 大うつ病
  • 持続性抑うつ症(気分変調症)
  • 双極症うつ状態

でアンヘドニアが強い患者82名を対象に、

プラミペキソール追加治療とプラセボを9週間比較しました。

結果① アンヘドニアは有意に改善

アンヘドニアを評価するSHAPS(Snaith-Hamilton Pleasure Scale)では、

プラミペキソール群はプラセボ群よりも有意にアンヘドニアが改善しました(図1)。

  • SHAPS改善量
    • プラミペキソール:−6.47点
    • プラセボ:−2.44点
  • 群間差:−4.04点
  • 効果量(Hedges’ g):0.62(中等度の効果)

さらに、この改善は6か月後まで維持されていました。

図1

アンヘドニアへの効果・プラミペキソール対プラセボ

結果② 活動量も増加した

研究では、患者に活動量計(加速度計)を装着してもらい、日常生活の活動量も客観的に評価しました。

その結果、

プラミペキソールを服用した患者では、

  • 軽い身体活動
  • 日常生活での活動量

が有意に増加しました。

つまり、「気分が良くなった」と感じるだけではなく、実際の行動量も増えたことが確認されました。

結果③ 脳の報酬系の働きも改善

研究では7テスラMRIを用いて脳活動も調べました。

その結果、プラミペキソール群では、報酬を期待したときに働く腹側線条体の活動が保たれていました。

これは、ドパミン系が実際に活性化され、アンヘドニア改善につながった可能性を示しています。

安全性は?

プラミペキソールは概ね安全に使用できました。

比較的多くみられた副作用は、

  • 吐き気
  • めまい
  • 眠気
  • 睡眠障害
  • 疲労感

などでした。また、一部で

  • 軽躁症状
  • 衝動性の増加

がみられたため、使用中は医師による十分な経過観察が必要です。

まとめ

今回の研究では、プラミペキソールはアンヘドニアに対して有効であることが示されました。

さらに、

  • 喜びを感じる能力の改善
  • 活動量の増加
  • 脳の報酬系の正常化

まで確認された初めての質の高い臨床試験となりました。

従来の抗うつ薬では改善しにくいアンヘドニアに対して、新たな治療選択肢となる可能性があります。

ただし、プラミペキソールは日本ではうつ病に対して承認されていない適応外使用であり、使用する場合は有効性と副作用について十分に説明を受け、精神科医の管理のもとで慎重に治療をうけることが必要です。

文献

Ventorp F, et al.: Efficacy and target engagement of dopamine agonist pramipexole for anhedonic depression: a randomized placebo-controlled trial. Nat Med, 2026.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医