女性のうつ、不調と「フェリチン」

フェリチンは体内で鉄と結合し、鉄を蓄えておく役割があるタンパク質です。

鉄は喜びの感情ややる気にかかわるドパミンの生成に必要な成分であることがわかっており 1)、鉄の貯蔵庫であるフェリチンの低下はうつ病に関与することが報告されています 2)。

また女性の疲労やイライラ感にも関わることが報告されています 3)。

産後うつ病においても重要な因子の一つとなります 4)。

女性の精神的不調では主に女性ホルモンの変化(エストロゲンの変化)とセロトニン伝達の不調が、体の要因として語られることが多いですが、体内の鉄分、フェリチンも大きな要素の一つです。

女性は月経があること、子宮内膜症などの婦人科系疾患で出血量が増加することがあり、気づかぬうちに鉄、フェリチンの低下が進んでいることがあります。

その他にもダイエットや過度の運動が関わっている原因となっている場合もあります 5)。

一般に貧血は健康診断の赤血球症、ヘモグロビン値(Hb)の低下がなければ問題ないと判断されますが、実際の診療の現場では赤血球症、ヘモグロビン値(Hb値)が正常範囲でも鉄、フェリチン値の低下が見られることがあります。

そのため、健康診断で異常なしの判定でも不調ある場合はその背景に鉄、フェリチンの低下がある場合があります。

上記のような月経や子宮器疾患で鉄、フェリチン値の低下があると、うつ状態でうつ病と診断を受けて抗うつ薬だけで治療を受けてもなかなか良くならないということが起こります。

この場合、鉄剤による治療を並行して行うことで症状が早く改善することがあります。

産後うつにおいても早期の鉄剤治療が有効であることが報告されています 6)。

鉄、フェリチン低下で疲れやすい状態では家庭の中で家事、育児の負担が大きく、結果としてうつにつながることがあります。

また、精神的な余裕も低下してしまうのでイライラ感も増してしまいます。

働いている女性では職場での勤務の負荷が大きくなり同様です。

疲労、倦怠感においても鉄剤の治療が有効であると報告されています 7)、8)。

以上のように女性のうつ、不調の原因にフェリチンの低下があることがあります。その場合、鉄剤による治療を行うことが有効です。

おひとりで悩んでいませんか?

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

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文献

  • 1)Erikson, KM. et al. : Iron deficiency alters dopamine transporter functioning in rat striatum. J Nutr, 130 : 2831-7, 2000.
  • 2)Vahdat Shariatpanaahi, M. et al. : The relationship between depression and serum ferritin level. Eur J Clin Nutr, 61 : 532-5, 2007.
  • 3)Dziembowska, I. et al. : Mild iron deficiency may affect female endurance and behavior. Physiol Behav, 205 : 44-50, 2019.
  • 4)Wassef, A. et al. : Anaemia and depletion of iron stores as risk factors for postpartum depression: a literature review. J Psychosom Obstet Gynaecol, 40 : 19-28, 2019.
  • 5)Alaunyte, I. et al. : Iron and the female athlete: a review of dietary treatment methods for improving iron status and exercise performance. J Int Soc Sports Nutr, 38 : s12970-015-0099-2, 2015.
  • 6)Sheikh, M. et al. : The efficacy of early iron supplementation on postpartum depression, a randomized double-blind placebo-controlled trial. Eur J Nutr, 56 : 901-908, 2017.
  • 7)Verdon, F. et al. : Iron supplementation for unexplained fatigue in non-anaemic women: double blind randomised placebo controlled trial. BMJ, 326 : 1124, 2003.
  • 8)Low, MS. et al. : Daily iron supplementation for improving anaemia, iron status and health in menstruating women. Cochrane Database Syst Rev, 4 : CD009747, 2016.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医