ADHD治療薬の心血管系への安全性の比較の報告

ADHD治療薬は血圧や脈拍へ影響を与えることが知られています。

個々の薬剤の安全性の比較は、現在まで血圧に関してのみの報告であり、脈拍や心拍を含めた十分な解析はなされていませんでした。

2025年5月、Farhatらは、ADHD治療薬の心血管系への安全性の比較の解析を行い、報告しました1)。

今回の解析には以下の薬剤が含まれました。

本コラムでは、日本の保険適応であるメチルフェニデート(以下コンサータ)、リスデキサンフェタミン(以下ビバンセ)、アトモキセチン、グアンファシン(以下インチュニブ)について記載致します。

収縮期血圧の安全性の比較では、コンサータ、ビバンセ、アトモキセチンが血圧上昇し、インチュニブは血圧低下する結果でした(図1、2)。

図1 ADHD治療薬の血圧に対する安全性の比較(児童思春期)

図2 ADHD治療薬の血圧に対する安全性の比較(成人)

脈拍の安全性の比較では、アトモキセチン、ビバンセ、コンサータは脈拍が増加、インチュニブは低下する結果でした(図3、4)。

図3 ADHD治療薬の脈拍に対する安全性の比較(児童思春期)

図4 ADHD治療薬の脈拍に対する安全性の比較(成人)

心電図のQTc延長の安全性の比較では、成人で、アトモキセチンがプラセボと比較して延長がみられました。

今回の結果からは、アトモキセチン、コンサータ、ビバンセの血圧上昇、脈拍増加への影響は大きくない結果でした。

また、中枢刺激薬(コンサータ、ビバンセ)の血圧上昇、脈拍増加のリスクは、アトモキセチンと比較し、高くないこともわかりました。

一方で、今回の解析は短期間(12週間)を対象としたもので、長期使用においては、心血管リスクが増加することが報告されています2)。

そのため、長期使用にあたっては、慎重な観察が必要といえます。

また、今回の結果からは、インチュニブの血圧低下を介した安全性への懸念を考慮すると、低血圧のADHD当事者への投与に特に注意が必要と思われました。

おひとりで悩んでいませんか?

ミス、不注意等で生活や仕事に支障をきたしている場合は、早めに心療内科・精神科に相談することをおすすめします。

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文献

  • 1) Farhat LC, et al.: Comparative cardiovascular safety of medications for attention-deficit hyperactivity disorder in children, adolescents, and adults: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Psychiatry, 12: 355-365, 2025.
  • 2) Zhang L, et al.: Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Medications and Long-Term Risk of Cardiovascular Diseases. JAMA Psychiatry, 81: 178-187, 2024.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医