児童・思春期の双極症の特徴とは?

双極症(双極性障害)は、気分が高揚したり活動性が増加したりする「躁状態」と、

気分が落ち込む「うつ状態」などを繰り返す精神疾患です。

双極症は成人だけでなく、子どもや思春期にも発症することがあります。

しかし、児童・思春期では成人と異なる特徴がみられることがあり、

診断や治療が難しい場合があります。

2026年、児童・思春期の双極症について、52件のメタ解析を統合した大規模なアンブレラレビューが

報告されました1)。

この研究では、臨床症状、ADHDなどの併存症、認知機能、脳の特徴、

治療効果などが幅広く検討されています。

児童・思春期の双極症では、いらいらや気分の不安定さが多い

今回の研究では、児童・思春期の双極症において、以下の症状が高い割合で報告されました。

児童・思春期の双極症で多い主な症状

双極症というと、気分が異常に高揚したり、活動的になったりする状態を

イメージするかもしれません。

しかし、児童・思春期では、いらいらしやすさや気分の変動も重要な特徴として認められます。

ただし、いらいらや感情の不安定さは、ADHD、不安症、うつ病、その他の

精神疾患でもみられる症状です。

そのため、これらの症状だけで双極症と判断することはできません。

普段の状態から明らかに変化した期間があるか、睡眠欲求の減少や活動性の増加などを

伴っているかを含めて評価する必要があります。

児童・思春期の双極症は、ADHDの併存率が53%

児童・思春期の双極症では、ほかの精神疾患を併存していることも少なくありません。

今回の研究では、ADHDの併存率が53%と報告されました。年齢別では、児童で73%、思春期で43%でした。

そのほか、反抗挑発症が42%、素行症が27%、不安症群が23%と報告されています。

児童・思春期の双極症でみられる主な併存症・症状

ADHDと双極症には、注意力の問題、衝動性、多動、易刺激性など、共通する症状があります。

一方、ADHDの症状は比較的持続的であるのに対し、双極症では躁状態やうつ状態など、

普段とは異なる気分や活動性の変化が一定期間続くことが診断上重要になります。

ただし、両者が実際に併存することもあるため、どちらか一方だけで説明しようとせず、

発達歴や症状の経過を丁寧に確認することが大切です。

児童・思春期の双極症は、記憶力や注意力などの認知機能にも影響する

児童・思春期の双極症では、気分の症状だけでなく、認知機能にも違いが認められました。

健常対照群と比較した認知機能の差は、以下のとおりでした。

児童・思春期の双極症にみられる認知機能の特徴

これらの数値は、健常対照群の方が良好な認知機能を示したことを表しています。

ワーキングメモリは、情報を一時的に記憶しながら処理する能力であり、

授業の理解や課題の遂行などに関係しています。

また、実行機能は、計画を立てる、行動を切り替える、衝動を抑えるといった能力に関係しています。

そのため、児童・思春期の双極症では、気分の症状が学校生活や学習に影響するだけでなく、

認知機能の問題も学習上の困難に関係している可能性があります。

ただし、寛解期の患者に限定した研究では、一部の認知機能に有意な差が認められない結果も報告されています。

すべての患者に認知機能の低下が生じるわけではなく、病状や個人差を考慮することが重要です。

児童・思春期の双極症は、自殺企図や再発のリスクにも注意が必要

今回の研究では、児童・思春期の双極症患者の26.2%に、

少なくとも1回の自殺企図歴が認められました。

また、自殺企図のオッズは、児童・思春期のうつ病患者と比較して1.59倍、

成人の双極症患者と比較して1.68倍でした。

これらは研究集団における統合結果であり、個々の患者の将来の危険性をそのまま予測するものではありません。

しかし、児童・思春期の双極症では、自殺念慮や自傷行為の有無を継続的に確認することが重要であると

考えられます。

さらに、躁病または混合エピソードを経験した患者では、1年後の再発率が48%、

4~5年後の再発率が65%と報告されています。

双極症では、症状が改善した後も再発予防を意識した継続的な治療と経過観察が重要になります。

児童・思春期の双極症には、どのような治療が有効なのか?

今回の研究では、急性躁病相に対して第二世代抗精神病薬の有効性が示されました。

プラセボと比較した躁症状の改善効果は、以下のとおりでした。

児童・思春期の双極症における急性躁病相の薬物療法

いずれもプラセボより有意な改善が認められました。

一方、双極性うつ病に対しては、ルラシドン、クエチアピンなどで有効性が報告されています。ただし、児童・思春期の双極性うつ病に関する治療研究は、躁病相と比較して限られています。

また、薬物療法では、体重増加、血糖・脂質の変化、プロラクチンの変化、眠気などの副作用にも

注意が必要です。

薬剤の選択には、年齢、症状、身体的な状態、併存症、各国での承認状況などを

考慮する必要があります。

まとめ

2026年に発表されたアンブレラレビューでは、児童・思春期の双極症には、

成人とは異なる特徴があることが示されました。

特に、易刺激性や気分の不安定さが多いこと、ADHDなどの精神疾患を併存しやすいこと、

認知機能や学習面にも影響する可能性があることが重要な結果でした。

また、自殺企図や再発のリスクが高いことから、早期の適切な評価と継続的な支援が求められます。

治療では、躁病相に対する第二世代抗精神病薬の有効性が示される一方、

双極性うつ病に対する治療選択肢は依然として限られています。

児童・思春期の双極症では、気分の症状だけでなく、発達特性、認知機能、学習、家庭や学校での

生活などを含めて総合的に理解し、薬物療法と心理社会的支援を組み合わせることが重要です。

文献

1)Torres-Cortes J, et al.: Meta-Analytic Evidence of Clinical, Cognitive, Biological and Treatment Characteristics of Bipolar Spectrum Disorder in Children and Adolescents: Results From an Umbrella Review. Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry, 20:S0890-8567, 2026.

当院のコラムは、一般的な医療情報の提供を目的として掲載しております。コラムの内容に関する個別のご相談やご質問につきましては、診察を行わずに医学的な判断をすることが難しいため、当院に通院されていない方への個別の回答はいたしかねます。何卒ご理解くださいますようお願いいたします。

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医