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044-455-7500うつ病というと、「気分が落ち込む」「何も楽しめない」「意欲が出ない」といった症状をイメージすることが多いと思います。
しかし、うつ状態にありながら、
など、躁的な症状が同時にみられることがあります。
このような状態は「混合性の特徴(mixed features)」と呼ばれます。
混合性の特徴は、双極症のうつ状態だけでなく、大うつ病性障害(MDD)のうつ状態でも認められることがあります。
2026年9月、Fornaroらは、こうした混合性の特徴を伴う急性期の双極性うつ病および大うつ病に対して、どの薬物療法が有効なのかを検討した大規模なネットワークメタ解析を報告しました1)。
混合性の特徴を伴ううつ病は、臨床的に重要な病態です。
論文では先行研究を引用し、mixed featuresはMDDのうつ病エピソードの18.1%、双極症のうつ病エピソードの32.8%に認められたとしています。
さらにmixed featuresを伴う場合、双極症では、
などとの関連が報告されています。
そのため、
「うつ状態だから抗うつ薬を使用する」
という単純な考え方だけでは十分ではない場合があります。
Fornaroらは、データベース開始時から2026年5月25日までの研究を検索し、mixed featuresを伴う急性期の双極性うつ病またはMDDを対象としたランダム化比較試験を解析しました。
この研究の大きな特徴は、薬剤だけではなく、投与量まで区別して比較したことです。また、小児・思春期を含め、年齢群についても検討しています。
解析対象は、
という規模でした。
主に、
が評価されました。
まず、mixed featuresを伴う双極性うつ病について見てみましょう。
抑うつ症状の改善についてプラセボより統計学的に有効だったのは、以下の結果です。

SMDは0から離れるほど群間差が大きく、この研究ではマイナス方向が抑うつ症状の改善を示します。
一方、その他の薬剤・用量では、抑うつ症状についてプラセボとの統計学的有意差は認められませんでした。
ただし、この解析では研究間の異質性が高かった(I²=89.8%)ため、この数字だけを使って「どの薬が一番優れている」と順位付けすることは適切ではありません。
次に、一定以上症状が改善した「response」で評価すると、プラセボより有意に良好だった治療は次のようになりました。

(カリプラジン・フルオキセチンは日本未承認)
いずれもプラセボより治療反応が得られやすいという結果でした。
ただし、このRRを単純に並べて「最も効果の高い薬」と判断することはできません。
研究数や対象患者、比較構造、信頼区間などが異なるためです。
この研究では、小児・思春期についても解析されています。
小児・思春期の双極性うつ病+mixed featuresに限定すると、
の両方がプラセボより有効でした。
成人だけでなく若年者についても解析したことは、今回の研究の特徴の一つです。
11研究、1,405例を対象とした抑うつ症状の解析では、
ルラシドン40 mg/日
SMD=−0.80
95%CI −0.95~−0.65
と、プラセボより有意な改善を示しました。

その他の薬剤では、抑うつ症状についてプラセボとの統計学的有意差は認められませんでした。
さらに、post-hoc解析の研究を除外した感度分析でも、
SMD=−1.03
とルラシドン40 mg/日の有効性が確認されました。
一方、「response」を評価したMDDの解析では、
ルマテペロン42 mg/日
RR=1.61
95%CI 1.20~2.18
とプラセボより有意に高い治療反応率を示しました。 混合エピソードメタ2026
ただし、このresponse解析は2研究・329例に基づくため、結果の解釈には注意が必要です。
つまりMDD+mixed featuresでは、
という結果になっています。
mixed featuresの治療では、抑うつ症状だけを見るのでは十分ではありません。
なぜなら、患者さんは「落ち込んでいる」にもかかわらず、同時に躁的な症状を呈しているからです。
双極症では、
がプラセボより躁症状を有意に改善しました。
またMDD+mixed featuresでは、
ルラシドン40 mg/日が躁症状についてもプラセボより有効でした。
これはmixed featuresの治療を考えるうえで重要なポイントでしょう。
この論文では、混合性の特徴を伴ううつ病について、抗うつ薬単剤療法は推奨されず、使用する場合には
などを注意深く観察する必要があるとしています。
また、著者らは先行研究を引用し、抗うつ薬には治療中に躁状態が出現するリスクがある一方、第二世代抗精神病薬(SGA)は抗うつ薬単剤よりそのリスクが低いと論じています。
そのため、
「うつ症状がある=抗うつ薬」ではなく、mixed featuresが存在していないかを評価する
ことが治療選択において重要になります。
今回の結果だけから、「mixed featuresにはこの薬を使えばよい」と結論づけることはできません。
特にMDDでは、mixed featuresそのものを対象として最初から設計されたRCTが少なく、既存RCTのpost-hoc解析に依存する部分が大きいという問題があります。
また、一部の研究では投与量が固定されておらず、実際に使用された平均用量を用いて解析しています。そのため、用量別の結果についても探索的なものとして慎重に解釈する必要があります。
さらに、mixed featuresの定義自体も研究によって異なります。 著者らは、今回の結果を現在利用できるランダム化研究を統合した重要な情報ではあるものの、決定的な薬剤間比較ではないとしています。
今回の2026年のネットワークメタ解析からは、混合性の特徴を伴ううつ病では、第二世代抗精神病薬を中心とするいくつかの治療に有効性を示すエビデンスがあることが示されました。
特に、
双極性うつ病+mixed featuresでは
→ アセナピン、ルラシドンなど
MDD+mixed featuresでは
→ ルラシドン、ルマテペロン
について注目すべき結果が得られています。
一方で、この分野のRCTはまだ十分ではなく、著者らも、薬剤・用量・診断・年齢を横断して治療効果の優劣を結論づけるにはエビデンスが不足しているとしています。
したがって、mixed featuresの治療では「どの薬が一番効くか」という単純な問題として捉えるのではなく、
抑うつ症状と躁的症状の両方を評価し、患者さん一人ひとりの病態に応じて治療を考えることが重要
といえるでしょう。
・1)Fornaro M, et al.: Pharmacological interventions for acute major depression and bipolar depression with mixed features: A systematic review and dose-related network meta-analysis across different age groups. J Affect Disord, 30:122568, 2026.

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への
受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。
当院のコラムは、一般的な医療情報の提供を目的として掲載しております。コラムの内容に関する個別のご相談やご質問につきましては、診察を行わずに医学的な判断をすることが難しいため、当院に通院されていない方への個別の回答はいたしかねます。何卒ご理解くださいますようお願いいたします。
