レジリエンスとは?

2026.09.08

私たちは生活の中で、仕事や人間関係のストレス、病気、失敗、挫折、別れ、災害など、さまざまな困難に直面します。

同じような出来事を経験しても、その後の心の反応や回復の仕方は人によって異なります。

こうした困難やストレスに直面したときに、状況に適応しながら心理的な健康を維持したり、いったん低下した状態から回復したりする力や過程を、心理学・精神医学ではレジリエンス(resilience)と呼びます。

日本語では「心理的回復力」「心の回復力」「復元力」などと表現されます。

Sistoらは、レジリエンスを以下のように定義しています1)

  • 「困難を粘り強く乗り越える力」
  • 「自分のことを良く知り、自分の気持ち・考え・行動が一貫していること」
  • 「自分の成長に向けて、積極的に動こうとする前向きな心の姿勢」

レジリエンスが高い人は「傷つかない人」ではありません

レジリエンスという言葉から、

「つらいことがあっても落ち込まない」
「ストレスに強い」
「何があっても前向きでいられる」

というイメージを持つかもしれません。

しかし、これは少し違います。

レジリエンスのある人でも、つらい出来事があれば悲しくなったり、不安になったり、落ち込んだりします。

大切なのは、傷つかないことではなく、傷ついた後もさまざまな力や支援を利用しながら適応していくことです。

イメージすると、

困難・ストレス

不安・悲しみ・落ち込み

自分なりの対処+周囲からの支援

少しずつ適応する

心理的な安定を取り戻していく

という過程です。

つまり、レジリエンスは単なる「精神的な強さ」ではありません。

レジリエンスは生まれつき決まっているわけではありません

かつてレジリエンスは「ストレスに強い性格」のように考えられることもありました。

しかし現在では、レジリエンスは固定された性格だけではなく、本人の心理的特徴、これまでの経験、周囲の人との関係、生活環境などが相互に作用する動的なプロセスとして捉えられています。

したがって、

「私はレジリエンスが低いから、ストレスに弱い」

と決めつける必要はありません。

環境や人間関係が変わればレジリエンスも変化しますし、自分に合った対処方法を身につけることで、困難に対応する力を育てていくこともできます。

レジリエンスを支えるもの

レジリエンスを支える9つの要因

この中でも、とても重要なのが人とのつながりです。

「人に頼ること」もレジリエンスです

レジリエンスというと、

「自分の力だけで困難を乗り越える能力」

と思われがちです。

しかし、むしろ反対です。

困ったときに、

  • 「家族に相談する」
  • 「友人に話を聞いてもらう」
  • 「職場に配慮を求める」
  • 「医療機関に相談する」

といった行動も、レジリエンスを支える重要な要素です。

助けを求めることは弱さではなく、利用できる資源を適切に使う能力の一つと考えることができます2)

レジリエンスとトラウマ

レジリエンスは、トラウマ研究でも重要な概念です。

災害、事故、暴力、死別などの大きな出来事を経験すると、一時的に不眠、不安、恐怖、抑うつなどが生じることがあります。

しかし、強いストレスを経験したすべての人が、その後長期間にわたって精神的不調を抱えるわけではありません。

研究では、重大な逆境を経験した後にも心理的機能を比較的安定して維持するresilient trajectory(レジリエントな経過)が存在することが示されています。

一方で、いったん大きく心理的機能が低下してから、時間をかけて回復していく人もいます。

どちらが「強い」「弱い」ということではありません。

人によって回復の経過は異なります3)

レジリエンスと「心的外傷後成長」は違う

大きな困難を経験した後に、

「人とのつながりを以前より大切に感じるようになった」
「自分にとって本当に大切なものが分かった」
「人生についての考え方が変わった」

と感じる人もいます。

このような変化は、心的外傷後成長(Post-Traumatic Growth:PTG)と呼ばれます。

ただし、

レジリエンス=成長すること

ではありません。

つらい経験から必ず何かを学んだり、成長したりしなければならないわけでもありません。

「元の生活を取り戻す」「何とか日常生活を続ける」ということも、大切な適応の形です。

レジリエンスを高めるには?

レジリエンスを高めるために、無理に「ポジティブ思考」をする必要はありません。

むしろ、次のような小さな行動が役立つことがあります。

① 睡眠と生活リズムを整える

睡眠不足が続くと、感情を調整したり、問題を冷静に考えたりすることが難しくなります。

まず身体を休ませることも、心理的な回復の一部です。

② 問題を小さく分ける

大きな問題を一度に解決しようとすると、圧倒されてしまうことがあります。

「今日できることは何か」と考えて、小さな課題に分けてみます。

③ 考え方を一つに固定しない

つらいときには、

「もう全部だめだ」
「自分には何もできない」

と考えてしまうことがあります。

「本当にすべてがだめなのだろうか」
「別の見方はないだろうか」

と少し視点を変えることが、認知的柔軟性につながります。

④ 人とのつながりを保つ

つらいときほど孤立しやすくなります。

信頼できる人と話したり、必要に応じて専門家に相談したりすることも重要です。

自分にとって大切なことを確認する

「何を大切にして生きたいのか」
「今の自分にできる小さなことは何か」

を考えることが、困難な時期を乗り越える支えになることがあります。

適度な運動をする

適度な運動は年齢に関係なく、レジリエンスを向上させることが報告されています4)

8週以上継続することが望ましいです。

うつ病になったのは「レジリエンスが低いから」ではありません

うつ病、適応障害、PTSDなどを発症した人に対して、

「精神的に弱かったから病気になった」
「レジリエンスが低かったから発症した」

と考えるのは適切ではありません。

精神疾患の発症には、脳・身体の状態、遺伝的要因、過去の経験、ストレスの強さや持続時間、睡眠、社会環境など、さまざまな要因が複雑に関係しています。

そして、どれほどレジリエンスがある人でも、耐えられる負荷には限界があります。

レジリエンスという考え方は、人を「強い人」と「弱い人」に分けるためのものではありません。

むしろ、

「今ある困難を乗り越えるために、自分の中にどのような力があり、周囲のどのような助けを利用できるだろうか」

と考えるための概念です。

まとめ

レジリエンスとは、困難に傷つかない能力ではなく、困難の中でも自分自身や周囲の力を利用しながら適応し、回復していく力・過程です。

一人で我慢することがレジリエンスではありません。

休むこと、考え方を変えること、人に相談すること、治療を受けることも、すべて回復のために利用できる大切な力です。

そして、つらいときにすぐ立ち直れなくても、それだけで「心が弱い」ということにはなりません。

回復の仕方や速度は、一人ひとり違ってよいのです。

文献

・1)Sisto A, et al.: Towards a Transversal Definition of Psychological Resilience: A Literature Review. Medicina (Kaunas), 55: 745, 2019.

・2)Sun Y, Wang L.: Understanding student optimism through academic grit, social connectedness, and resilience. Front Psychol, 17:1595580, 2026.

・3)Lindert J, et al.: [Resilience trajectories-examples from longitudinal studies]. Nervenarzt, 89: 759-765, 2018.

・4)Liu C, et al.: The effect of exercise interventions on enhancing psychological resilience: a systematic review and meta-analysis. BMC Psychol, 14: 1167, 2026.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医