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044-455-7500うつ病と認知症には密接な関連があることが、これまでの研究から知られています。
しかし、うつ病を一度経験した場合と、何度も繰り返した場合では、
認知症の発症リスクに違いがあるのでしょうか。
また、軽度のうつ症状が長く続く場合と、徐々に悪化する場合では、認知症リスクは異なるのでしょうか。
2026年に医学誌『Journal of Affective Disorders』に掲載された研究では、
英国と北米の2つの大規模な縦断研究に加え、合計16の縦断コホート研究の結果を統合し、
うつ症状の再発回数、持続、増悪、発症時期と認知症発症リスクとの関連が検討されました1)。
その結果、うつ症状を繰り返し経験することや、軽度のうつ症状が徐々に悪化することが、
認知症の発症リスク上昇と関連していることが示されました。
うつ病は、認知症の危険因子の一つとして知られています。
しかし、これまでの研究の多くは、調査時点でうつ症状があるかどうか、
あるいは症状がどの程度重いかという、一時点での評価に基づいていました。
実際には、うつ病の経過は患者さんによって異なります。治療によって改善し、
その後再発しない方もいれば、再発を繰り返す方、軽度の症状が長く続く方、
時間の経過とともに症状が悪化する方もいます。
今回の研究では、こうしたうつ症状の時間的な変化(動的特徴)に注目し、
認知症の発症との関連を検討しました。
英国のUK Biobankに登録された約9万7,000人を対象とした研究では、
過去にうつ状態を経験した回数と、その後の認知症発症リスクが検討されました。
参加者は、過去に1週間以上気分が落ち込んだ期間を経験した回数によって、
0~1回、2~5回、5回超の3群に分類されました。
その結果、うつ状態を5回超経験した群では、0~1回の群と比較して、
以下のようなリスク上昇が認められました。
| 認知症の種類 | ハザード比(HR) | 発症ハザードの上昇 |
| 全原因認知症 | 1.28 | 約28% |
| アルツハイマー型認知症 | 1.25 | 約25% |
いずれも統計学的に有意な関連でした。
一方、うつ状態を2~5回経験した群では、有意なリスク上昇は認められませんでした。
この結果から、うつ状態を繰り返し経験することが、将来の認知症リスクと関連する可能性が示唆されます。
ただし、抗うつ薬の使用状況を追加して統計学的に調整すると、この関連は有意ではなくなりました。
そのため、うつ状態の再発そのものが認知症の原因であると結論づけることはできません。
また、この研究で評価されたのは、自己申告による1週間以上の抑うつ状態の経験回数であり、
必ずしも医師によって診断されたうつ病エピソードの再発回数ではありません。
北米のADNI研究では、認知症を発症していない464人を対象に、
うつ症状の経時的変化とアルツハイマー型認知症の発症リスクが検討されました。
参加者は、うつ症状の経過によって次の3群に分類されました。
その結果、うつ症状が認められない群と比較して、軽度のうつ症状が徐々に悪化する群では、
アルツハイマー型認知症の発症ハザードが約2.6倍高いことが示されました。
HR 2.60(95%信頼区間 1.24~5.45)
一方、軽度のうつ症状が安定している群では、有意なリスク上昇は認められませんでした。

この結果は、うつ症状が軽度であっても、時間の経過とともに悪化している場合には
注意が必要であることを示唆しています。
特に中高年以降で抑うつ症状が徐々に強くなる場合には、うつ病の評価や治療だけでなく、
必要に応じて認知機能の変化にも注意を払うことが重要と考えられます。
ただし、この結果は観察研究における関連であり、うつ症状の悪化がアルツハイマー型認知症を
直接引き起こしたことを意味するものではありません。
研究者らは、さらに16の縦断コホート研究の結果を統合し、うつ症状のさまざまな経過と認知症リスクの関連を検討しました。
その結果、以下のような関連が報告されました。

これらの結果から、うつ病の重症度だけでなく、症状の持続、増悪、発症時期、反復といった特徴も
認知症リスクと関連する可能性が示されました。
ただし、各研究でうつ病の定義や比較対象が異なり、一部の解析では研究間のばらつきも大きいため、
これらの数値を直接比較して危険度の順位を決めることはできません。
うつ病と認知症の関連については、いくつかの生物学的機序が考えられています。
うつ病では、炎症性サイトカインなどを介した慢性的な炎症反応が生じる場合があります。
こうした炎症反応が長期間続くことで、神経細胞の機能や脳の健康に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
慢性的なストレスやうつ病では、視床下部・下垂体・副腎系(HPA系)の機能変化が生じることがあります。
これに伴うストレスホルモンの変化が、記憶や認知機能に関係する脳領域に影響する可能性があります。
うつ病に伴う炎症や血管機能の変化が、脳血管障害や脳血流の低下を介して、
認知機能に影響する可能性も考えられています。
一方で、うつ病が認知症の発症に影響するだけでなく、アルツハイマー病に関連する脳の変化が、
記憶障害より先に抑うつ症状として現れている可能性もあります。
つまり、うつ病と認知症の関係には、複数の機序が関与していると考えられます。
今回の研究だけでは、これらの機序のうち、どれが主要な役割を果たしているのかを確定することはできません。
今回の研究は、うつ症状の持続や増悪が認知症リスクと関連することを示しましたが、
うつ病を治療することで認知症の発症を予防できるかどうかは明らかになっていません。
特に、抗うつ薬による治療が認知症リスクに与える影響については、慎重な解釈が必要です。
うつ病の治療には、抑うつ症状の改善、再発の予防、生活機能や社会機能の回復など、重要な目的があります。
今回の研究結果は、これらの治療に加えて、中高年以降では認知機能の変化にも目を向ける
必要性を示唆しています。
認知症予防という観点からも、うつ病と認知機能の関係について、今後さらに研究が進むことが期待されます。
2026年に報告された本研究では、うつ症状の再発回数、持続、増悪、発症時期と、
認知症の発症リスクとの関連が検討されました。
主な結果として、うつ状態を繰り返し経験した人では認知症発症リスクが高く、
また、軽度のうつ症状が徐々に悪化する人では、アルツハイマー型認知症の発症ハザードが
約2.6倍高いことが示されました。
これらの結果は、うつ病の評価において、現在の症状の重症度だけでなく、
過去の経過や時間的な変化を把握することが重要であることを示唆しています。
ただし、うつ病が必ず認知症につながるわけではなく、今回の研究によって両者の因果関係が
証明されたわけでもありません。
うつ病の症状が長く続く場合や、徐々に悪化する場合には、適切な診療を受け、
必要に応じて認知機能の評価も行うことが大切です。
1)Zheng YW, et al.: Dynamic characteristics of depressive symptoms and risk of all-cause dementia and Alzheimer’s disease: Two population-based cohorts and evidence synthesis of longitudinal studies. Journal of Affective Disorders, 394: 120646, 2026.
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