ビペリデン(アキネトン)の特徴・作用・副作用について

作用・特徴

ビペリデン(先発医薬品名:アキネトン)は中枢神経のムスカリン性アセチルコリン受容体を阻害することにより、過剰となったコリン作動性神経の働きを抑制し、パーキンソン症候群・薬剤性パーキンソニズムを改善します(図1)。

図1 パーキンソン症候群に対する抗コリン薬の治療モデル

薬剤性アカシジア・ジストニアにも使用されます。

ドイツのKnoll社によって、先に開発されていた、トリヘキシフェニジル(先発医薬品名:アーテン・セドリーナ)のシクロヘキシル基を bicycloalkyl 基に置換させることによって、1955年に開発されました(図2)。

図2 トリヘキシフェニジルとビペリデンの化学構造式

日本では先発医薬品のアキネトンが、大日本住友製薬(現住友ファーマ社)から、1964年に販売されました。

作用の強さはトリヘキシフェニジルと比較して同程度であることがわかっています1)、(図3)。

図3 ビペリデンとトリヘキシフェニジルのムスカリン受容体阻害作用の強さ

剤型

剤型は1mg錠、細粒1%、注射液5mgがあります(図4)。

図4 ビペリデン(先発医薬品:アキネトン)の剤型(錠剤・注射液)

効能・効果

効能・効果は以下となっています。

  • 特発性パーキンソニズム
  • その他のパーキンソニズム(脳炎後、動脈硬化性、中毒性)
  • 向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア(遅発性を除く)・アカシジア

効能・効果に関連する注意として、抗パーキンソン剤はフェノチアジン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、レセルピン誘導体等による口周部等の不随意運動(遅発性ジスキネジア)を通常軽減しません。

場合によっては、このような症状を増悪顕性化させることがあることが挙げられています。

用法・用量

通常成人1回1mg1日2回よりはじめ、その後漸増し、1日3~6mgを分けて内服します。

なお、年齢、症状により適宜します。

薬物動態

ビペリデン4mgを1回内服した際の血中濃度は約1.5時間で最高濃度に達し、約18.4時間後に半減します2)、(図5)。

図5 ビペリデン4mgを1回内服した際の血中濃度の推移

内服後3~5時間で脳内のアセチルコリン受容体を30%占有し、その後、占有は速やかに低下することが報告されています3)。

ビペリデンはヒドロキシル化、脱水反応、ヒドロキシル化の代謝を経て排泄されます4)、(図6)。

図6 ビペリデンの代謝

副作用

重大な副作用として悪性症候群と依存性が挙げられています。

その他の副作用として以下が挙げられています。

  • 精神神経系:幻覚、せん妄、精神錯乱、不安、嗜眠、記憶障害
  • 消化器:口渇、悪心、嘔吐、食欲不振、胃部不快感、下痢、便秘、口内炎
  • 泌尿器:排尿困難、尿閉
  • 過敏症:発疹
  • 循環器:血圧低下、血圧上昇
  • 眼:眼の調節障害
  • 肝臓:肝障害

ビペリデンは以下の患者さんでは禁忌となっています。

  • 閉塞隅角緑内障の患者(抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがあるため。)
  • ビペリデンの成分に対し過敏症の患者
  • 重症筋無力症の患者(ビペリデンの抗コリン作用により症状が悪化するおそれがあるため。)

重要な基本的注意

重要な基本的注意として以下が挙げられています。

  • 本剤投与中は定期的に隅角検査及び眼圧検査を行うことが望ましい。
  • 本剤の大量投与により、パーキンソン症状の増悪がみられることがあるので、このような場合には減量するなど適切な処置を行うこと。
  • 本剤により気分高揚等が出現したとする報告があり、依存形成につながるおそれがあるので、慎重に投与すること。
  • 眠気、調節障害及び注意力・集中力・反射機能等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること。

合併症・既往歴等ある場合

合併症・既往歴等ある場合に以下の注意が挙げられています。

  • 開放隅角緑内障の患者
    抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。
  • 前立腺肥大など尿路に閉塞性疾患のある患者
    排尿障害が発現又は悪化することがある。
  • 胃腸管に閉塞性疾患のある患者
    腸管麻痺が発現又は悪化するおそれがある。
  • 不整脈又は頻拍傾向のある患者
    不整脈等の循環器系の副作用を起こすおそれがある。
  • てんかんの患者
    発作の誘因となるおそれがある。
  • 高温環境にある患者
    発汗抑制が起こりやすい。
  • 動脈硬化性パーキンソン症候群の患者
    精神神経系の副作用が起こりやすい。
  • 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
    悪性症候群が起こりやすい。
  • 動脈硬化性パーキンソン症候群の患者
    精神神経系の副作用が起こりやすい。
  • 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
    悪性症候群が起こりやすい。
  • 腎機能障害患者
    代謝・排泄機能が低下しているため、副作用が起こりやすい。
  • 肝機能障害患者
    代謝・排泄機能が低下しているため、副作用が起こりやすい。
  • 妊婦
    妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。
  • 授乳婦
    治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
  • 小児等
    小児等には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
  • 高齢者
    せん妄、不安等の精神症状及び抗コリン作用による口渇、排尿 困難、便秘等があらわれやすい。

口渇、便秘、尿閉などは一般的な末梢の抗コリン作用の副作用として知られています。

それらに加え、起立性低血圧、発汗低下が生じることがあり、夏場は想定外の熱中症が生じることがあり、外出時はより慎重な見守りが必要となります。

また、ビペリデンとトリヘキシフェニジルは気分高揚作用があることが報告されており5)、6)、双極性障害の患者さんのアカシジアに対し使用すると、さらに躁状態が悪化することがあるため注意が必要です。

もともと他国ではアカシジアに対し抗コリン薬は使用せず、ベンゾジアゼピン(ロラゼパムまたはクロナゼパム等)、βブロッカーを用いた治療が一般的に行われています。

日本でも現在は、徐々にロラゼパムやβブロッカーが中心となっています。

参考

  • 1) Kimura Y, et al. : Amnesic effects of the anticholinergic drugs, trihexyphenidyl and biperiden: differences in binding properties to the brain muscarinic receptor. Brain Res, 834 : 6-12, 1994.
  • 2) Hollmann M, et al. : Biperiden effects and plasma levels in volunteers. Eur J Clin Pharmacol, 27 : 619-21, 1984.
  • 3) 須藤 康彦, 他. : ビペリデンによるヒト脳内アセチルコリン受容体占有率の変化に関する研究. 第37回日本核医学会総会.
  • 4) Minakata K, et al. : Quantitation of biperiden in whole blood by MALDI-QTOF tandem mass spectrometry, and estimation of new metabolites in urine of deceased subjects treated with biperiden antemortem. Forensic Toxcology, 35 : 86-93, 2017.
  • 5) Jellinek T. : Mood elevating effect of trihexyphenidyl and biperiden in individuals taking antipsychotic medication. Dis Nerv Syst, 38 : 353-5, 1977.
  • 6) Fleischhacker WW, et al. : Mood-altering effects of biperiden in healthy volunteers. J Affect Disord, 12 : 153-7, 1987.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医