公開日 2024.4.15
特徴・作用
オルリスタット(アライ)は食事から摂取した脂肪の吸収を抑えることで、肥満を改善します1)。
アライは、2023年2月17日にダイレクトOTC(医療用医薬品での発売を経ずに市販される医薬品)として製造販売承認を取得し、2024年4月8日に発売されました。
食事中に含まれる脂肪(トリグリセリド)は、膵臓から分泌される脂肪分解酵素リパーゼによって脂肪酸とグリセロールに加水分解(消化)され、消化管(腸管)から吸収されます。
オルリスタット(アライ)は消化管管腔内で脂肪分解酵素リパーゼの活性を阻害し、食事由来の脂肪の吸収を抑制し、摂取した脂肪の約25%を便とともに排泄します(図1)。
図1 オルリスタット(アライ)の作用
米国では医薬品(医薬品名:ゼニカル)として1999年に承認され、OTC医薬品(医薬品名:アライ)として2007年に承認され使用されています。
現在、海外では医薬品として100か国以上で承認されています。
オルリスタット(アライ)は、細菌のストレプトミセス・トキシトリトチーニにより産生された、膵臓リパーゼ阻害作用を有するリプスタチンから開発されました(図2)。
図2 リプスタチンとオルリスタットの化学構造式
海外の医薬品承認量120mgでは、1カ月で約3.8kg、2か月で約5kg体重が減少することが報告されています2)、(図3)。
図3 オルリスタット(アライ)の体重減少効果
臨床試験では、内臓脂肪は12週で-6.79%、24週で-14.1%g減少することが確認されています。
腹囲は12週で-1.38cm、24週で-2.49%減少することが確認されています(図4)。
図4 オルリスタット(アライ)により内臓脂肪と腹囲の減少効果
剤型
剤型はカプセル剤で90カプセルと18カプセルがあります(図5)。
図5 アライの剤型
効能
腹部が太めな方(※)の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)
(※)腹囲(へその高さ):男性85cm以上、女性90cm以上
用法・用量
次の量を食事中又は食後1時間以内に水又はぬるま湯で服用します。
成人(18才以上) | 1回1カプセル(1日3回) |
---|---|
18才未満 | 服用しないこと |
副作用
以下の場合は使用禁となっています。
- (1)本剤又は本剤の成分により、アレルギー症状を起こしたことがある人
- (2)18才未満の人
- (3)次の医薬品を服用している人
シクロスポリン製剤(免疫抑制剤)、抗HIV薬(エイズ治療薬)、ワルファリン等の抗凝固薬 - (4)次の診断を受けた人
吸収不良症候群(食事からの栄養吸収に障害がある)、胆汁うっ滞、病気や薬による肥満(二次性肥満) - (5)妊婦又は妊娠していると思われる人
- (6)授乳中の人
- (7)BMIが35以上の人又はBMIが25以上35未満で次のいずれかの診断を受けている人
・耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常等)
・脂質異常症
・高血圧
・高尿酸血症・痛風
・冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
・脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)
・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
・月経異常・不妊
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)・肥満低換気症候群
・運動器疾患:変形性関節症(膝・股関節)・変形性脊椎症、手指の変形性関節症
・肥満関連腎臓病
薬剤師への相談が必要な場合
次の人は医師または薬剤師に相談することとなっています。
- (1)医師の治療を受けている人
- (2)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人
- (3)次の診断を受けた人
膵炎、胆のう障害(胆石等)、腎臓病 - (4)次の医薬品を服用している人(本剤との併用により、現在服用している薬の効果に影響が出るおそれがあります)
アミオダロン製剤(心臓の薬)、レボチロキシン(甲状腺障害治療薬)、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗精神病薬(リチウム製剤を含む)、ベンゾジアゼピン系薬剤(抗不安薬、睡眠薬)、経口避妊薬 - (5)健康診断において再検査又は精密検査の必要性を指摘されている人
重大な副作用
重大な副作用として以下が挙げられています。
- アネフィラキシーショック
- 肝機能障害
- 腎結石
代表的な副作用
代表的な副作用として以下が挙げられています。
- 油の漏れ
- 便または油を伴うおなら
- 急激な便意
- 脂肪便
- 油の排出
- 排便回数の増加
- 便失禁
図6 オルリスタット(アライ)の主な副作用
上記副作用対策として、脂っこいものを控えめにすること、便もれパッドの使用などが推奨されています。
脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の減少に伴う次の症状に注意が必要とされています。
ビタミンA | 眼の違和感(夜間視力の低下、目の乾燥等)、皮膚の違和感(皮膚が硬くなる、カサカサになる等)、繰り返しの感染症の発症、発熱、発疹・発赤等 |
---|---|
ビタミンD | 腰・関節・骨の痛み、骨折、筋力の低下、筋肉の痛み等 |
ビタミンE | 貧血(ふらつき、息切れ、動悸等)、しびれ・知覚鈍麻等の神経症状等 |
ビタミンK | 青あざができる、鼻血、腹部不快感、黒色便の持続、血便、脱力、疲労を感じやすい、めまい、生理出血量の増加、血尿等 |
リチウムやバルプロ酸を内服している場合には、血中濃度をモニターし、影響を考慮する必要があります。
また、日本人健診受診者の98%はビタミンDが不足していることが報告されています3)。
ビタミンD不足は禁骨格系のみならず、うつ病の発症・悪化や睡眠、認知機能の悪化等へも関与することが報告されており、不足に十分注意する必要があります。
上記副作用のリスクがあるものの、脂肪減少効果に加え、近年、動物モデルの研究で抗腫瘍効果を示す報告がなされており、今後のさらなる研究が期待されています7)~9)。
価格
価格は以下となっています。
18カプセル | 2,530円(税込み) |
---|---|
90カプセル | 8,800円(税込み) |
文献
- 1) Heck AM, et al.: Orlistat, a new lipase inhibitor for the management of obesity. Pharmacotherapy, 20: 270-9, 2000.
- 2) Krempf M, et al.: Weight reduction and long-term maintenance after 18 months treatment with orlistat for obesity. Int J Obes Relat Metab Disord, 27: 591-7, 2003.
- 3) Miyamoto H, et al.: Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry. J Nutr, 153: 1253-1264, 2023.
- 4) Musazadeh V, et al.: Vitamin D protects against depression: Evidence from an umbrella meta-analysis on interventional and observational meta-analyses. Pharmacol Res, 187: 106605, 2023.
- 5) Abboud M.: Vitamin D Supplementation and Sleep: A Systematic Review and Meta-Analysis of Intervention Studies. Nutrients, 14: 1076, 2022.
- 6) Harse JD, et al.: Vitamin D status and cognitive performance in community-dwelling adults: A dose-response meta-analysis of observational studies. Front Neuroendocrinol, 70: 101080, 2023.
- 7) Ye M, et al.: Orlistat Induces Ferroptosis in Pancreatic Neuroendocrine Tumors by Inactivating the MAPK Pathway. J Cancer, 14: 1458-1469, 2023.
- 8) Xu G, et al.: Orlistat exerts anti-obesity and anti-tumorigenic effects in a transgenic mouse model of endometrial cancer. Front Oncol, 13: 1219923, 2023.
- 9) Hao X, et al.: Pharmacological effect and mechanism of orlistat in anti-tumor therapy: A review. Medicine (Baltimore), 102: e34671, 2023.
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