公開日 2024.4.8
特徴・作用
セマグルチド(ウゴービ)は脳の食欲中枢に作用するとともに、胃の内容物の排出を遅らせて、食欲を抑制し、体重減少効果を発揮します1)~3)。
ウゴービはGLP-1受容体作動薬というジャンルの薬に分類されます。
GLP-1は小腸から分泌されているホルモンで、血糖値を下げたり、食欲を抑制する作用があります。
ウゴービはGLP-1受容体に結合し、これらの働きを活性化します(図1、2)。
図1 セマグルチド(ウゴービ)の脳における食欲抑制作用
図2 セマグルチド(ウゴービ)による胃内容排出の遅延
ウゴービを12週間使用(0.25mgから開始し、漸増し、12週目に1mg)すると、約5kg、20週間使用(4週おきに漸増し、14週目に2.4m)すると約10.4kg体重減少することが報告されています3)、4)、(図3)。
図3 セマグルチド(ウゴービ)による体重減少効果
剤型
剤型は皮下注射薬として、0.25mg、0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgがあります(図4)。
図4 セマグルチド(ウゴービ)の注射液の剤型
効能・効果
保険承認における効能・効果は以下となっています。
肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限ります。
- BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する。
- BMIが35kg/m2以上
効能・効果に関連する注意として以下が挙げられています。
- 本剤の適用にあたっては、あらかじめ肥満症治療の基本である食事療法・運動療法を行っても、十分な効果が得られない場合で、薬物治療の対象として適切と判断された患者のみを対象とすること。肥満に関連する健康障害は、臨床試験に組み入れられた患者背景を参考に判断すること。
用法・用量
用法・用量は、通常、成人には、0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射します。
その後は4週間の間隔で、 週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射します。
なお、患者の状態に応じて適宜減量するとなっています。
用法・用量に関連する注意として以下が挙げられています。
- 本剤は週1回投与する薬剤であり、同一曜日に投与させること。
- 胃腸障害等の発現により忍容性が得られない場合は減量又は漸増の延期を検討すること。
- 投与を忘れた場合は、次回投与までの期間が2日間(48時間)以上であれば、気づいた時点で直ちに投与し、その後はあらかじめ定めた曜日に投与すること。次回投与までの期間が2日間(48時間)未満であれば投与せず、次のあらかじめ定めた曜日に投与すること。なお、週1回投与の定めた曜日を変更する必要がある場合は、前回投与から少なくとも3日間(72時間)以上間隔を空けること(図5)。
図5 ウゴービの投与を忘れた時の投与法
薬物動態
ウゴービを週1回0.25mgで投与を開始し、4週間間隔で0.5mg、1.0mg、1.7mg及び2.4mgへ増量した際の1.0mg及び2.4mg投与時の血中濃度推移は以下図6となります。
図6 ウゴービの定常状態における血中濃度推移
ウゴービはペプチド骨格のタンパク質分解及び脂肪酸側鎖のβ酸化により代謝されます5)、(図7)。
図7 セマグルチド(ウゴービ)の代謝
CYP阻害作用はありません。
副作用
以下の禁忌がもうけています。
- 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
- 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[インスリン製剤による速やかな治療が必須となるので、本剤を投与すべきでない。]
- 2型糖尿病を有する患者における重症感染症、手術等の緊急の場合[インスリン製剤による血糖管理が望まれるので、本剤の投与は適さない。]
基本的な注意として特に急性膵炎の発症、低血糖に注意が必要とされています。
特定の背景を有する患者に関する注意として激しい運動、過度のアルコール節酒等が挙げられています。
また、2ヵ月以内に妊娠を予定する女性では本剤の投与を中止することとなっています。
併用注意として糖尿病治療薬が挙げられています。
重大な副作用として以下の薬剤が挙げられています。
- 低血糖(頻度不明)
- 急性膵炎(0.1%)
- 胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸(いずれも頻度不明)
臨床試験ではウゴービ投与群の80.6%に有害事象発現を認め、主なものは以下でした(図8)。
- 食欲減退(55.6%)
- 悪心(47.2%)
- 下痢(44.4%)
- 上咽頭炎(22.2%)
- 腹痛(22.2%)
- 下痢(19.4%)
- おくび(13.9%)
- 消化不良(13.9%)
図8 セマグルチド(ウゴービ)の主な副作用
肥満症治療薬としての効果が期待されているものの、急性膵炎のリスクがあることや、精神科領域における、神経性やせ症当事者らに対し、痩身目的で適応外使用されることが危惧されています。
また、精神疾患を有する場合に使用した際の精神面への安全性はまだ十分に確立されていないため、精神疾患併存肥満症に対しては、慎重な使用が求められます。
一方で、2型糖尿病患者の抑うつ症状に対し、GLP-1受容体作動薬が有効であることが報告されています6)、(図9)。
図9 GLP-1受容体作動薬の糖尿病患者におけるうつ症状軽減作用
糖尿病患者では、うつ病になるリスクが約2倍とされており、うつ病を発症するとさらに血糖コントロールが不良になりがちで相互の介入が必要とされています。
GLP-1受容体作動薬はラットにおいて、不安・抑うつ行動が軽減することが報告されていました。
これらは、GLP-1受容体作動薬が炎症抑制や神経新生等を促すことに起因すると示唆されていました。
今回の研究は、うつ病を合併した糖尿病患者においては、GLP-1受容体作動薬が、心身両面に有益な治療薬となることを示唆しています。
薬価
ウゴービの薬価は以下図10となっています。
図10 ウゴービの薬価
文献
- 1) Gabery S, et al.: Semaglutide lowers body weight in rodents via distributed neural pathways. JCI Insight, 5: e133429, 2020.
- 2) Baggio LL, Drucker DJ.: Biology of incretins: GLP-1 and GIP. Gastroenterology, 132: 2131-57, 2007.
- 3) Friedrichsen M, et al.: The effect of semaglutide 2.4 mg once weekly on energy intake, appetite, control of eating, and gastric emptying in adults with obesity. Diabetes Obes Metab, 23: 754-762, 2021.
- 4) Blundell J, et al.: Effects of once-weekly semaglutide on appetite, energy intake, control of eating, food preference and body weight in subjects with obesity. Diabetes Obes Metab, 19: 1242-1251, 2017.
- 5) Jensen L, et al.: Absorption, metabolism and excretion of the GLP-1 analogue semaglutide in humans and nonclinical species. Eur J Pharm Sci, 15: 31-41, 2017.
- 6) Chen X, et al.: The Antidepressant Effects of GLP-1 Receptor Agonists: A Systematic Review and Meta-Analysis. Am J Geriatr Psychiatry, 32: 117-127, 2024.
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