公開日 2024.6.17
症状
全般性不安障害(全般不安症)は日常のありとあらゆることが不安となり、苦痛と生活への支障をきたす疾患です1)。
日本ではもともと「心配性」という言葉や概念がありますが、気にしすぎることや心配の度合いが大きいことを超えて、障がいとして生活や仕事に影響をきたすものです。
人生の早い段階から症状が生じていることが多く2)、小学生の時に翌日の学校が不安で眠れない(特別にテストがあるというわけでなく)、夏休み後半になると胸のざわつきが生じ登校できなくなるなど不登校の要因にもなります。
診断
非常に強い不安が多岐にわたることと、長びくことが特徴です。
それに加え、以下の症状を伴うことがあります1)。
- 1) 落ち着かなさ、緊張感
- 2) 疲れやすさ
- 3) 集中困難
- 4) 怒りっぽさ
- 5) 筋肉の緊張
- 6) 不眠
以下の自律神経症状を伴うことがあります3)。
- 1) 吐き気や腹痛
- 2) 動悸
- 3) 発汗
- 4) 震え
- 5) 口渇
治療
日本では全般性不安障害に保険適応を有している薬剤は現在ありません。
米国、欧州ではSSRIのパロキセチン、エスシタロプラム、SNRIのベンラファキシンが承認されています。
また、欧州ではプレガバリン(先発医薬品名:リリカ)が全般性不安障害に対し、保険承認を得ています(図1)。
図1 全般性不安障害に対する各薬剤の各国の保険承認
一般に薬物治療では、SSRI・SNRIが第一選択肢となりますが、その中でどの薬剤が有効か検討されています。
全般性不安障害に対する薬物療法の有効性の比較
2020年にKongらは全般性不安障害に対する薬剤の寛解率の比較解析を行い、有効性のランクを報告しています3)。
寛解率に以下の薬剤の順で高い結果でした(図2)。
- ベンラファキシン(医薬品名:イフェクサーSR)
- エスシタロプラム(先発医薬品名:レクサプロ)
- クエチアピン(先発医薬品名:セロクエル)
- デュロキセチン(先発医薬品名:サインバルタ)
- パロキセチン(先発医薬品名:パキシル)、(医薬品名:パキシルCR)
図2 全般性不安障害に対する薬剤の有効性の比較
忍容性はいずれもプラセボと比較し悪い結果で、特にクエチアピンは忍容性が不良でした。
有効性と忍容性を合わせた結果は以下図3となっています。
図3 全般性不安障害に対する薬剤の有効性と忍容性の比較
全般性不安障害ではうつ病の合併が約60%と高いため、今回有効性が認められたベンラファキシン、エスシタロプラム、デュロキセチン、パロキセチンはいずれも第1選択肢として検討されます。
ただし、著者らが考察でのべているように、今回の解析に含まれた試験のほとんどは白人であり、他の人種・民族にすぐさま適用できるものではないことにも留意が必要といえます。
全般性不安障害に対する心理療法の有効性の比較
2024年3月、Papolaは全般性不安障害に対する心理療法の有効性の比較解析を報告しました4)。
有効性は以下の順で優れていました(図4)。
- 第3世代認知行動療法
- 認知行動療法(CBT)
- リラクセーション法
図4 全般性不安障害に対する心理療法の有効性の比較
ただし、介入後、3か月から12カ月後の不安の重症度に対する治療効果はCBTのみに認められる結果でした。
以上の結果から著者らは、CBTが第1選択として推奨され、短期的な治療効果として第3世代認知行動療法とリラクセーション法も有効であり、推奨されると述べています。
全般性不安障害は生活への支障が高いことに加え、うつ病の合併率が高いため、症状があてはまる方は、早めに心療内科・精神科の受診をおすすめします。
参考
- 1) DSM-5. 精神疾患の分類と診断の手引き. 2014.
- 2) Showraki M, et al.: Generalized Anxiety Disorder: Revisited. Psychiatr Q, 91: 905-914, 2020.
- 3) ICD-11. WHO. 2019.
- 4) Kong W, et al.: Comparative Remission Rates and Tolerability of Drugs for Generalised Anxiety Disorder: A Systematic Review and Network Meta-analysis of Double-Blind Randomized Controlled Trials. 11: 580858, 2020.
- 5) Papola D, et al.: Psychotherapies for Generalized Anxiety Disorder in Adults: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. JAMA Psychiatry, 81: 250-259, 2024.
- 頭が働かない
- 寝つきが悪い
- やる気が起きない
- 不安で落ち着かない
- 朝寝坊が多い
- 人の視線が気になる
- 職場に行くと体調が悪くなる
- 電車やバスに乗ると息苦しくなる
- うつ病
- 強迫性障害
- 頭痛
- 睡眠障害
- 社会不安障害
- PMDD(月経前不快気分障害)
- パニック障害
- 適応障害
- 過敏性腸症候群
- 心身症
- 心的外傷後ストレス障害
- 身体表現性障害
- 発達障害
- ADHD(注意欠如・多動症)
- 気象病・天気痛
- テクノストレス
- バーンアウト症候群
- ペットロス(症候群)
- 更年期障害
- 自律神経失調症