トリヘキシフェニジル(アーテン・セドリーナ)の特徴・作用・副作用について

作用・特徴

トリヘキシフェニジルは、ビペリデンと同じく、中枢神経のムスカリン性アセチルコリン受容体を阻害することにより、過剰となったコリン作動性神経の働きを抑制し、パーキンソン症候群・薬剤性パーキンソニズムを改善します。

薬剤性アカシジア、ジストニアに対しても使用されます。

1949年に米国のサイナミド社で開発され、日本では1953年からファイザー社よりアーテンの商品名で、第一三共株式会社からセドリーナの商品名で販売されました。

セドリーナは2021年9月からアルフレッサファーマ社に販売が移行しています。

トリヘキシフェニジルの化学構造式は、抗めまい薬のジフェニドール(先発医薬品名:セファドール)に似ていることがわかっています1)、(図1)。

図1 トリヘキシフェニジルとジフェニドールの化学構造式

そのため、ジフェニドールも抗コリン作用を有しています。

剤型

剤型は先発医薬品のアーテンは錠剤2mg錠と細粒1%があります。

先発医薬品のセドリーナは錠剤2mg錠のみとなっています(図2)。

図2 トリヘキシフェニジル(先発医薬品:アーテン・セドリーナ)の錠剤(剤型)

効能・効果

保険承認による効能・効果は以下となっています。

  • 特発性パーキンソニズム
  • その他のパーキンソニズム(脳炎後、動脈硬化性)
  • 向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア(遅発性を除く)・アカシジア

効能又は効果に関連する注意として、抗パーキンソン病薬はフェノチアジン系薬剤、レセルピン誘導体等による口周部等の不随意運動(遅発性ジスキネジア)を通常軽減しないとあります。

場合によってはこのような症状を増悪顕性化させることがあることが挙げられています。

保険承認は得られていないものの、ジストニアへの有効性も認められ、治療に用いられています2)、3)。

緊張型頭痛がある場合、頸部ジストニアが誘因となっていることがあります4)。

そのため、向精神薬(特に抗精神病薬)を内服している患者さんで緊張型頭痛がある場合は、薬剤性の頸部ジストニアが原因である場合があり、その際はトリヘキシフェニジルを治療に用いることがあります。

用法・用量

  • 特発性パーキンソニズム及びその他のパーキンソニズム(脳炎後、動脈硬化性)では、通常成人には、第1日目1mg、第2日目2mg、以後1日につき2mgずつ増量し、1日量6~10mgを維持量として3~4回に分けて内服します。なお、年齢、症状により適宜増減します。
  • 向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア(遅発性を除く)・アカシジアでは、通常成人には、1日量2~10mgを3~4回に分けて内服します。なお、年齢、症状により適宜増減します。

薬物動態

トリヘキシフェニジル4mgを1回内服した際の血中濃度は約1.3時間後に最高濃度に達しします。

二相性に半減し、第一相は5.3時間で組織内分布に対応し、第二相は約32.7時間で血中からの排泄に対応します(図3)。

図3 トリヘキシフェニジル4mgを1回内服した際の血中濃度の推移

内服したトリヘキシフェニジルは水酸化代謝物の異性体(化合物Ⅱ)として代謝され、約56%が尿中に排泄されます5)、(図4)。

図4 トリヘキシフェニジルの代謝

副作用

重大な副作用として以下が挙げられています。

  • 悪性症候群(頻度不明)
  • 精神錯乱(頻度不明)、幻覚(頻度不明)、せん妄(頻度不明)
  • 閉塞隅角緑内障(頻度不明)

医薬品再評価資料における報告では、対象症例数392例中80例(20.4%)に副作用発現を認め、主なものは以下でした(図5)。

  • 口渇(10.2%)
  • 悪心・嘔吐(2.0%)
  • 便秘(2.0%)
  • 頭重・頭痛(0.8%)
  • 胃腸障害(0.8%)
  • 霧視(0.5%)
  • めまい(0.5%)
  • 眠気(0.5%)
  • 脱力・倦怠感(0.5%)
  • 知覚異常(0.5%)

図5 トリヘキシフェニジルの主な副作用

以下の患者さんでは禁忌となっています。

  • 閉塞隅角緑内障の患者(抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがあるため。)
  • 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 重症筋無力症の患者(抗コリン作用により症状を増悪させるおそれがあるため。)

重要な基本的注意

重要な基本的注意として以下が挙げられています。

  • 本剤投与中は定期的に隅角検査及び眼圧検査を行うことが望ましい。
  • 眠気、眼の調節障害及び注意力・集中力・反射機能等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう注意すること。

合併症・既往歴等ある場合の注意点

合併症・既往歴等ある場合に以下の注意が挙げられています。

  • 開放隅角緑内障の患者
    抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。
  • 前立腺肥大等尿路に閉塞性疾患のある患者
    抗コリン作用により症状を増悪させるおそれがある。
  • 不整脈又は頻拍傾向のある患者
    抗コリン作用により症状を増悪させるおそれがある。
  • 高血圧の患者
    抗コリン作用により症状を増悪させるおそれがある。
  • 高温環境にある患者
    抗コリン作用により発汗抑制が起こりやすい。
  • 胃腸管に閉塞性疾患のある患者
    抗コリン作用により症状を増悪させるおそれがある。
  • 動脈硬化性パーキンソン症候群の患者
    精神神経系の副作用が起こりやすい。
  • 脱水・栄養不良状態等を伴う身体的疲弊のある患者
    悪性症候群が起こりやすい。
  • 腎機能障害患者
    副作用が強くあらわれるおそれがある。
  • 肝機能障害患者
    副作用が強くあらわれるおそれがある。
  • 妊婦
    妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。
  • 授乳婦
    治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
  • 小児等
    治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
  • 高齢者
    せん妄、不安等の精神症状及び抗コリン作用による口渇、排尿困難、便秘等があらわれやすい。

参考

  • 1) Cápka V, et al. : Stereoselective determination of trihexyphenidyl in human serum by LC-ESI-MS. J Pharm Biomed Anal, 21 : 507-17, 1999.
  • 2) Bragg DC, Sharma N. : Update on treatments for dystonia. Curr Neurol Neurosci Rep, 14 : 454, 2014.
  • 3) 宮崎 由道, 他. : ジストニアの新規薬物治療. 臨床神経, 52 : 1074-1079, 2012.
  • 4) 寺本 純. : 緊張型頭痛の治療. 治療, 93 : 1567-1571, 2011.
  • 5) Nation RL, et al. : Metabolism and urinary excretion of benzhexol in humans. Xenobiotica, 8 : 165-9, 1978.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医