川崎市高津区溝の口の心療内科・精神科 高津心音メンタルクリニック

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レキサルティ(ブレクスピプラゾール)
の特徴・作用・副作用

公開日 2024.11.21

特徴・作用

レキサルティ(ブレクスピプラゾール)はドパミンの伝達機能を適度に調節するとともに、セロトニンにも作用することで統合失調症の精神症状を改善します1)~4)、(図1、2)。

図1 レキサルティのドパミンD2受容体部分活性化作用

レキサルティのドパミンD2受容体部分活性化作用

図2 統合失調症に対するレキサルティの効果

統合失調症に対するレキサルティの効果

統合失調症の精神症状に対しては内服開始後3週目より効果が認められる結果が報告されています4)。

レキサルティはエビリファイ(アリピプラゾール)が開発された後に合成され、同じフェニルピペラジン系向精神薬に分類されます(図3)。

図3 アリピプラゾールとブレクスピプラゾールの化学構造式

アリピプラゾールとブレクスピプラゾールの化学構造式

エビリファイ(アリピプラゾール)と比較し、ドパミンを刺激する作用はよりマイルドにし、セロトニンに対してはより強く作用します(図4、5)。

この作用から「セロトニン‐ドパミン アクティビティ モジュレーター:SDAM」と呼ばれています。

図4 レキサルティとエビリファイのドパミンD2受容体に対する固有活性の比較

レキサルティとエビリファイのドパミンD2受容体に対する固有活性の比較

図5 エビリファイvsレキサルティ ドパミン受容体とセロトニン受容体への親和性の比較

エビリファイvsレキサルティ ドパミン受容体とセロトニン受容体への親和性の比較

統合失調症の精神症状に有効であることに加え、抗うつ薬に追加することで抗うつ作用の増強効果が得られることがわかっています5)、6)、(図6、7)。

図6 レキサルティの抗うつ薬に対する増強療法の効果

レキサルティの抗うつ薬に対する増強療法の効果

効果は2週目にはみられる結果が報告されています5)。

図7 抗うつ薬の増強療法に使用される薬剤の有効性(Nuñez et al.,2022)

抗うつ薬の増強療法に使用される薬剤の有効性(Nuñez et al.,2022)

また、アルツハイマー型認知症のアジテーション症状に有効であることが示されています7)、(図8)。

図8 アルツハイマー型認知症の焦燥、興奮に対するブレクスピプラゾールの効果

アルツハイマー型認知症の焦燥、興奮に対するブレクスピプラゾールの効果

2024年7月、認知症の行動・心理症状に対する第2・第3世代抗精神病薬の有効性と忍容性の比較の解析が報告されました8)。

報告では、レキサルティ(ブレクスピプラゾール)の有効性が高い結果でした(図9)。

図9 認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する第2・3世代抗精神病薬の有効性と忍容性の比較

認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する第2・3世代抗精神病薬の有効性と忍容性の比較

また、第2世代抗精神病薬による認知症の行動・心理症状の治療では、時に転倒が問題になりますが、レキサルティは転倒のリスクが低い結果でした。

剤型

剤型には1mg錠、2mg錠、0.5mgOD(口腔内崩壊)錠、1mgOD錠、2mgOD錠があります。(図10)

図10 レキサルティの剤形

レキサルティの剤形

効能・効果

日本では以下の効能・効果を得ています。

  • 統合失調症
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  • アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動

米国では「統合失調症」、「うつ病への追加療法」、「アルツハイマー型認知症に伴う行動障害(アジテーション症状)」に適応を取得しています。

用法・用量

統合失調症では、通常、成人では1日1回1mgから内服を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを内服するとなっています。

うつ病・うつ状態では、通常、成人では1日1回1mgを内服する。

なお、忍容性に問題なく、十分に効果が認められ場合に限り、1日2mgに増量することができるとなっています。

アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動では、通常、 成人には、1日1回0.5mgから投与を開始した後、1週間以上の間隔をあけて増量し、1日1回1mgを内服する。

なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、1日1回2mgに増量することができるが、増量は1週間以上の間隔をあけて行うこととなっています。

薬物動態

1日1回内服した際は血液中の濃度は約6時間で最高濃度に達し、約53~67時間後に血液中の濃度は半分に下がります(図11)。

図11 レキサルティ1回内服時の血中濃度の推移

レキサルティ1回内服時の血中濃度の推移

毎日内服すると、血液中の濃度は約4~5時間で最高濃度に達し、1mg内服では約92時間後に、4mg内服では約71時間後に血液中の濃度は半分に下がります(図12)。

図12 レキサルティを毎日内服した時の血中濃度の推移

レキサルティを毎日内服した時の血中濃度の推移

食事による影響はありません。

肝臓で主としてCYP3A4、CYP2D6によってS原子の酸化反応を受けて、主要代謝産物DM-3411が生成されます(図13)。

図13 ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の肝臓での代謝

ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の肝臓での代謝

副作用

重大な副作用に以下が挙げられています。

  • 悪性症候群(頻度不明)
  • 遅発性ジスキネジア(頻度不明)
  • 麻痺性イレウス(頻度不明)
  • 横紋筋融解症(頻度不明)
  • 高血糖(0.1%)、糖尿病性ケトアシドーシス(頻度不明)、糖尿病性昏睡(頻度不明)
  • 痙攣(0.1%)
  • 無顆粒球症(0.1%)、白血球減少(0.1%)
  • 肺塞栓症(0.1%)、深部静脈血栓症(0.1%)

承認時における調査症例1,520例中547例(36.0%)に副作用発現を認め、主な副作用は以下でした(図14)。

  • アカシジア(5.1%)
  • 頭痛(4.5%)
  • 不眠(4.5%)
  • 体重増加(3.1%)
  • 振戦(2.8%)
  • 傾眠(2.0%)
  • 激越(1.8%)
  • 悪心(1.8%)
  • 便秘(1.8%)

図14 ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の主な副作用

ブレクスピプラゾール(レキサルティ)の主な副作用

レキサルティをうつ病に使用する場合、0.5mgから開始すると、1mgから開始するよりもアカシジアの発生頻度を少なくすることができると報告されています9)。

また、最大効果用量は1.6mgであることが報告されています10)。

図15 アリピプラゾールとブレクスピプラゾールのうつ病増強療法における最大有効用量

アリピプラゾールとブレクスピプラゾールのうつ病増強療法における最大有効用量

このことから、うつ病に使用する場合、0.5~1.5mgで調整することがアカシジア対策になると考えられます。

文献

  • 1) Stahl SM.: Mechanism of action of brexpiprazole: comparison with aripiprazole. CNS Spectr, 21: 1-6, 2016.
  • 2) Frampton JE.: Brexpiprazole: A Review in Schizophrenia. Drugs, 79: 189-200, 2019.
  • 3) Antoun Reyad A, Girgis E, et al.: Efficacy and safety of brexpiprazole in acute management of psychiatric disorders: a meta-analysis of randomized controlled trials. Int Clin Psychopharmacol, 35: 119-128, 2020.
  • 4) Ishigooka J, et al.: Efficacy and safety of brexpiprazole for the treatment of acute schizophrenia in Japan: A 6-week, randomized, double-blind, placebo-controlled study. Psychiatry Clin Neurosci, 72: 692-700, 2018.
  • 5) Kato M, et al. Adjunctive brexpiprazole 1 mg and 2 mg daily for Japanese patients with major depressive disorder following inadequate response to antidepressants: a phase 2/3, randomized, double-blind (BLESS) study. Psychiatry Clin Neurosci, 2023.
  • 6) Nuñez NA, et al.: Augmentation strategies for treatment resistant major depression: A systematic review and network meta-analysis. J Affect Disord, 302: 385-400, 2022.
  • 7) Nakamura Y, et al.: Brexpiprazole treatment for agitation in Alzheimer's dementia: A randomized study. Alzheimers Dement, 20: 8002-8011, 2024.
  • 8) Lü W, et al.: Efficacy, acceptability and tolerability of second-generation antipsychotics for behavioural and psychological symptoms of dementia: a systematic review and network meta-analysis. BMJ Ment Health, 27: e301019, 2024.
  • 9) Kishi T, et al.: Comparison of brexpiprazole, aripiprazole, and placebo for Japanese major depressive disorder: A systematic review and network meta-analysis. Neuropsychopharmacol Rep, 44: 165-175, 2024.
  • 10) Terao I, Kodama W.: Comparative Efficacy of Dopamine Partial Agonists by Doses for Treatment-Resistant Depression: A Systematic Review and Dose-Response Model-Based Network Meta-analysis. J Clin Psychopharmacol, 44: 413-417, 2024.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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