MMSE(ミニメンタルステート検査)とは?

2026.09.27

MMSEとは?

MMSE(Mini-Mental State Examination)は、繰り返し使用できる簡便な認知機能スクリーニング検査です。

見当識、記憶、注意・計算、言語、読字・書字、視空間・構成能力などを短時間で評価できます。

Folstein MF, Folstein SE, McHugh PRにより1975年に発表されました1)。

当初は精神疾患を有する患者さんの認知機能の評価のために開発されました。

30点満点で、一般的には5~10分程度で実施でき、現在では、認知症などが疑われる人の認知機能を短時間で把握するために使用されています。

MMSEでは何を評価する?

MMSEは単なる「記憶力テスト」ではありません。

大きく分けると、次のような認知領域を評価します。

認知領域主な課題
時間の見当識年、季節、月、日、曜日
場所の見当識国・地域、施設、階など
記銘3つの言葉を覚える
注意・計算連続減算など
遅延再生先ほど覚えた3語を思い出す
言語命名、復唱、指示理解など
読字書かれた指示を理解する
書字文章を書く
視空間・構成能力図形を模写する

ここがHDS-Rとの大きな違いです。

HDS-Rは基本的に口頭で回答できる検査ですが、MMSEには読む・書く・図形を描くといった課題も含まれています。

点数はどのように評価するのでしょうか?

MMSEの合計点は0~30点です。

古典的には、

23/24点

が認知症スクリーニングの一つの目安として広く使用されています。

つまり、23点以下を認知機能低下の可能性ありとする使い方です。

実際、日本人を対象とした研究でも、認知症識別について23/24点をカットオフとした場合、

  • 感度 0.64
  • 特異度 0.87

と報告されています2)。

ただし、MMSEについては「23点以下なら認知症」と単純に考えるべきではありません。

MMSEの診断精度は?

多数の研究をまとめたシステマティックレビューでは、MMSEについて非常に多くのデータがあります。

15研究、12,796人を統合した解析では、23~24点付近をカットオフとした認知症検出について、

  • 感度:0.89
  • 特異度:0.89

と報告されています3)。

別のCochraneレビュー4)でも、地域住民においてカットポイント24では、

  • 感度 0.85
  • 特異度 0.90

でした。

したがってMMSEは、認知症のスクリーニングには有用な検査と考えられます。

ただし研究対象、年齢、教育歴、使用するカットオフなどによって数値は変わります。

したがってMMSEは、認知症のスクリーニングには有用な検査と考えられます。

ただし研究対象、年齢、教育歴、使用するカットオフなどによって数値は変わります。

点数から認知症の重症度が分かる?

MMSEは認知症の重症度を大まかに把握したり、経時的変化を追跡したりする際にも使用されます。

しかし、

28点なら正常
22点なら軽度認知症
15点なら中等度認知症

というように、得点だけから診断や重症度を機械的に決めることはできません。

例えば同じ22点でも、

  • 遅延再生で失点している
  • 見当識で失点している
  • 計算課題で失点している
  • 言語課題で失点している

では、認知プロフィールが異なります。

したがって、総得点と下位項目の両方を見ることが大切です。

アルツハイマー型認知症とMMSE

アルツハイマー型認知症(AD)では、早期から新しい情報を記憶して、後から思い出す能力が障害されやすいという特徴があります。

MMSEにも、

3単語を覚える
↓
別の課題を行う
↓
先ほどの3単語を思い出す

という遅延再生があります。

そのため、初期ADではこの部分で失点することがあります。

病気が進行すると、記憶だけでなく時間・場所の見当識、注意・計算、言語などにも障害が広がっていきます。

ただし、MMSEのプロフィールだけでADを確定診断することはできません。

レビー小体型認知症とMMSE

MMSEの五角形描画テスト(Pentagon Copy Test)の角の数を正しく数えられないことが、アルツハイマー型認知症よりもレビー小体型認知症(DLB)の早期診断に非常に特異的であることが報告されています5)。

軽度認知障害の患者を追跡調査し、レビー小体型認知症に移行した群とアルツハイマー型認知症に移行した群では、

五角形の角の数を正しく描けなかった割合

  • MCI-DLB:45.1%
  • MCI-AD:8.3%
  • 感度 41.1%、特異度 91%

 と高い特異度を示しました。

HDS-Rとの違い

MMSEHDS-R
満点30点30点
代表的カットオフ23/24点20/21点
所要時間約5~10分約6~10分
遅延再生3点6点
言語課題比較的多い語想起など
書字ありなし
読字ありなし
図形模写ありなし
特徴多領域を評価記憶を比較的重視

HDS-Rは記憶に比較的大きな比重を置く一方、MMSEは言語、書字、読字、視空間・構成能力なども含めて評価する

という違いがあります。

MMSEの大きなメリット

MMSEの強みの一つは、世界中で長年使用され、研究データが非常に豊富であることです。

また、

  • 見当識
  • 記憶
  • 注意・計算
  • 言語
  • 視空間・構成能力

などを短時間で評価できます。

そのため、初回評価だけでなく、認知機能の変化を経時的に観察する際にも利用されています。

MMSEの限界

① MCIを見逃すことがある

MMSEの重要な限界が、軽度認知障害(MCI)や非常に初期の認知機能低下に対する感度が十分ではないことです6)。

最近のレビューでも、MCIについてはカットオフによって感度・特異度が大きく変動し、診断性能が安定しないことが指摘されています。

つまり、

MMSEが27~30点だから、初期の認知機能障害がないとは限らない

ということです。

特にMCIを詳しく調べたい場合には、MoCA(日本語版はMoCA-J)など、より軽度の認知機能低下を捉えることを意識した検査を組み合わせることがあります。

② 教育歴の影響

MMSEは教育歴の影響を受けることも重要です。

例えば、教育歴が長い人では認知機能が低下し始めても高得点を維持する場合があります。

実際、16年以上の教育歴を持つ集団では、標準的な23/24点というカットオフの認知症に対する感度が0.66だった研究があります7)。

逆に、教育歴が短い人では認知症がなくても得点が低くなる可能性があります。

したがって、

  • 年齢
  • 教育歴
  • 文化的背景
  • 母語

なども考慮して解釈する必要があります。

③ 「点数」だけでは原因が分からない

MMSEが低いからといって、その原因が必ず認知症とは限りません。

例えば、

  • うつ病
  • せん妄
  • 睡眠不足
  • 薬剤の影響
  • 身体疾患
  • 視力・聴力障害
  • 疲労

などでも認知機能検査の成績が低下することがあります。

またMMSEだけでは、

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症
  • 前頭側頭型認知症

などを確定的に鑑別することもできません。

MMSEは「認知症診断への入口」

MMSEは認知症を診断するための単独検査ではなく、認知機能を短時間で評価し、さらに詳しい検査が必要かどうかを考えるためのスクリーニング検査です。

検査の結果に加えて、

  • 本人・家族からの病歴
  • 日常生活機能
  • 神経学的診察
  • HDS-RやMoCA-Jなど他の認知機能検査
  • 血液検査
  • MRI・CTなどの画像検査
  • 必要に応じてADバイオマーカー

などを総合して診断します。

MMSE

MMSEの実際の質問内容

文献

・1)Folstein MF, et al.: “Mini-mental state”. A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician. J Psychiatr Res, 12: 189-98, 1975,

・2)Takenoshita S, et al.: Validation of Addenbrooke’s cognitive examination III for detecting mild cognitive impairment and dementia in Japan. BMC Geriatr, 19: 123, 2019.

・3)Patnode CD, et al.: Screening for Cognitive Impairment in Older Adults: Updated Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force. JAMA, 323: 764-785, 2020.

・4)Creavin ST, et al.: Mini-Mental State Examination (MMSE) for the detection of dementia in clinically unevaluated people aged 65 and over in community and primary care populations. Cochrane Database Syst Rev, 2016: CD011145, 2016.

・5)Cagnin A, et al.: High specificity of MMSE pentagon scoring for diagnosis of prodromal dementia with Lewy bodies. Parkinsonism Relat Disord, 21: 303-5, 2015.

・6)D’Ignazio G, et al.: Is the MMSE enough for MCI? A narrative review of the usefulness of the MMSE. Front Psychol, 16:1727738, 2025.

・7)O’Bryant SE, et al.: Detecting dementia with the mini-mental state examination in highly educated individuals. Arch Neurol, 65: 963-7, 2008.

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執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医