HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)とは?

2026.09.26

HDS-Rとは?

HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は、日本で非常によく用いられる認知機能のスクリーニング検査です。

認知症を「診断する検査」ではなく、認知機能低下の可能性を短時間で評価し、さらに詳しい評価が必要かを判断するための検査です。

正式名称は、

改訂長谷川式簡易知能評価スケール
Hasegawa’s Dementia Scale-Revised(HDS-R)

です。

もともとの長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)は、1974年に長谷川和夫先生らによって開発されました。

その後、質問項目や採点基準が見直され、1991年にHDS-Rとして改訂されています。

改訂版の作成論文は加藤伸司先生らによるものです。

大きな特徴は、

  • 9項目
  • 30点満点
  • 所要時間約6~10分

という簡便さです。

何を調べる検査なのでしょうか?

HDS-Rは単純に「記憶力」だけを測定しているわけではありません。

検査では、9項目を通して、見当識、記憶、注意・作業記憶、計算、言語流暢性などを評価します。

項目主にみている機能配点
年齢基本的な見当識1
時間の見当識年月日・曜日など4
場所の見当識現在いる場所の理解2
3単語の直後再生記銘・即時記憶3
計算注意・計算2
数字の逆唱注意・ワーキングメモリ2
3単語の遅延再生遅延記憶6
5つの物品課題視覚的な記銘・再生5
言語流暢性言葉の想起5
合計30点

特に3単語の遅延再生が6点と比較的大きな割合を占めている点が特徴です。

点数はどのように評価するのでしょうか?

一般的には、

  • 21~30点:非認知症域
  • 20点以下:認知症が疑われる

という20/21点のカットオフが用いられます。

開発時の研究では、このカットオフで、

  • 感度:0.90
  • 特異度:0.82

と報告されています。

ただし、研究対象によって診断性能は変化します。

例えば日本の別の研究では、20/21点で認知症を識別する感度は0.67、特異度は0.89でした1)。

したがって、「20点以下なら認知症、21点以上なら認知症ではない」と機械的に判断するものではありません。

HDS-Rは、

30点 → 正常
25点 → 軽度認知障害
18点 → 軽度認知症
10点 → 中等度認知症

というように、点数だけから診断名や重症度を決定する検査ではありません。

例えば21点以上でも、初期のアルツハイマー病や軽度認知障害(MCI)を完全に除外できるわけではありません。

逆に20点以下であっても、

  • うつ状態
  • せん妄
  • 疲労
  • 睡眠不足
  • 聴力の問題
  • 教育・文化的背景
  • 検査への緊張
  • 身体疾患

などの影響を考える必要があります。

したがって、総得点だけでなく「どの項目を間違えたのか」を見ることも重要です。

アルツハイマー病では「遅延再生」が重要

例えば初期アルツハイマー病では、単に全般的な点数が低下するだけではなく、新しい情報を記憶し、時間が経ってから思い出す能力(遅延再生)の低下が重要になります。

最近の研究でも、アミロイドβ陽性患者ではHDS-Rの遅延再生や視覚記憶が低く、計算は比較的保たれているという認知プロフィールが報告されています2)。

したがって同じ「HDS-R 22点」であっても、

何を間違えて22点になったのか

によって臨床的な意味は異なります。

HDS-RとMMSEとの違い

HDS-Rと並んでよく使用される認知機能検査に、MMSE(Mini-Mental State Examination)があります。

両者とも30点満点ですが、検査内容には違いがあります。

HDS-RとMMSEの違い

HDS-Rの特徴の一つは、基本的に口頭で実施できることです。

MMSEには書字や図形模写がありますが、HDS-Rではそれを必要としません。そのため、運動機能に障害があっても、口頭でコミュニケーションできれば実施しやすいという利点があります。

また開発時にはHDS-RとMMSEの相関はr=0.94と報告されています。

アルツハイマー型認知症に対する診断精度では、HDS-RがMMSEよりも優れているという報告もあります3)。

HDS-RとMMSEのアルツハイマー型認知症識別のROC曲線とAUC

HDS-Rのメリット

臨床では特に、

  • 短時間でできる
  • 30点満点で分かりやすい
  • 特別な機器をほとんど必要としない
  • 日本で広く普及している
  • 書字や図形模写を必要としない

という利点があります。

そのため、「最近もの忘れが増えてきた」という患者さんを最初に評価する際には非常に便利です。

HDS-Rの限界

まず、HDS-Rだけで認知症の原因疾患を診断することはできません。

例えば、

  • アルツハイマー病
  • レビー小体型認知症
  • 血管性認知症
  • 前頭側頭型認知症

などをHDS-Rだけで鑑別することはできません。

また、認知機能には実行機能、社会的認知、視空間認知など多くの領域がありますが、HDS-Rですべてを詳細に評価できるわけでもありません。

必要に応じて、

  • MMSE、MoCA-Jなどの認知機能検査
  • 詳細な神経心理検査
  • 日常生活機能の評価
  • 家族からの情報
  • 血液検査
  • MRI・CT
  • 必要に応じて脳血流検査やアルツハイマー病バイオマーカー

などを組み合わせて診断していきます。

「認知症の検査」というより「入口の検査」

HDS-Rは認知症を確定する検査ではなく、認知機能に低下がないかを短時間で調べるスクリーニング検査です。

20点以下なら認知症が確定するわけではありませんし、21点以上だから認知症を完全に否定できるわけでもありません。

そのため、検査結果は、年齢、生活状況、これまでの認知機能、症状の経過、日常生活への影響、他の検査結果などと合わせて総合的に判断する必要があります。

HDS-R

1お歳はいくつですか? (2年までの誤差は正解)0  1
2今日は何年何月何日ですか? 何曜日ですか?(年月日、曜日が正解でそれぞれ1点ずつ)年月日 曜日0  1 0  1 0  1 0  1
3私たちがいまいるところはどこですか? (自発的にでれば 2 点、5 秒おいて家ですか?病院ですか?施設ですか?のなかから正しい選択をすれば1点)  0  1  2
4これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。 (以下の系列のいずれか1つで, 採用した系列に○印をつけておく) 1: a)桜 b)猫 c)電車、 2: a)梅 b)犬 c)自動車  0  1 0  1 0  1
5100から7を順番に引いてください。 (100-7 は?、それからまた 7 を引くと? と質問する。最初の答えが不正解の場合、打ち切る)  (93) (86)  0  1 0  1
6私がこれから言う数字を逆から言ってください。 (6-8-2、3-5-2-9 を逆に言ってもらう、3 桁逆唱に失敗したら、打ち切る)  2-8-6 9-2-5-3  0  1 0  1
7先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。 (自発的に回答があれば各 2 点、もし回答がない場合以下のヒントを与え正解で あれば 1 点) a)植物 b)動物 c)乗り物  a: 0  1  2 b: 0  1  2 c: 0  1  2
8これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってくだ さい。 (時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など必ず相互に無関係なもの)0  1  2 3  4  5
9知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。 (答えた野菜の名前を右欄に記入する。途中で詰まり、約 10 秒間待っても出ない場合には そこで打ち切る) 0~5=0 点, 6=1 点, 7=2 点, 8=3 点, 9=4 点, 10=5 点      0  1  2 3  4  5
  
  
  
  
 合計得点 

文献

・1)Takenoshita S, et al.: Validation of Addenbrooke’s cognitive examination III for detecting mild cognitive impairment and dementia in Japan. BMC Geriatr, 19: 123, 2019.

・2)Yamakami K, et al.: Identification of Hasegawa Dementia Scale-Revised Cutoff Scores Associated With Mini-Mental State Examination Thresholds for Anti-Amyloid β Therapies in Patients With Amnesia. Psychogeriatrics, 25: e70107, 2025.

・3)Kim KW, et al.; Diagnostic accuracy of mini-mental status examination and revised hasegawa dementia scale for Alzheimer’s disease. Dement Geriatr Cogn Disord, 19: 324-30, 2005.

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当院のコラムは、一般的な医療情報の提供を目的として掲載しております。コラムの内容に関する個別のご相談やご質問につきましては、診察を行わずに医学的な判断をすることが難しいため、当院に通院されていない方への個別の回答はいたしかねます。何卒ご理解くださいますようお願いいたします。

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医