めまいと頭痛がつづくのは?|前庭性片頭痛について

2026.09.01

反復するめまい・ふらつきなどの前庭症状に片頭痛症状を伴う疾患に前庭性片頭痛という病気があります。

比較的頻度が高い一方、確定できる血液検査や画像検査はなく、主に病歴と症状から診断します。

また、良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病などとの症状の重複があるため、見逃されやすいことが問題となっています。

前庭障害がある場合、不安のリスクが有意に高くなることがわかっており1)、メンタル面からも注視する必要があります。

2026年3月、Alhajriらは、前庭性片頭痛の有病率と臨床症状を小児と成人で比較した研究を報告しています2)

前庭性片頭痛の有病率

報告では有病率は以下でした。

前庭性片頭痛の有病率

小児の統合有病率25%に対して成人は14%で、年齢群による差は統計学的に有意でした(p=0.03)。ただし、研究間の異質性は非常に大きく、研究対象や診断基準の違いを考慮する必要があります。

特に「めまいを訴えて受診した患者」に限定すると、前庭性片頭痛は全体の26%を占め、小児では約3人に1人(33%)、成人でも18%でした。

前庭性片頭痛で多かった症状

最も一貫して認められた症状は、当然ながらめまいでした。

成人では、

  • めまい
  • 悪心・嘔吐
  • 頭痛
  • 光過敏
  • 音過敏
  • 耳鳴り
  • 耳閉感
  • 動作過敏(motion sensitivity)

などが認められ、特にめまいと悪心が主要な症状でした。

小児でも、めまいに加えて、頭痛、悪心・嘔吐、光過敏、音過敏、耳鳴り、乗り物酔いなどがみられました。

特徴的なのは片頭痛の家族歴が60~90%程度と高かったことです。

また、成人では典型的な拍動性頭痛、光過敏、音過敏、前兆などが比較的明確なのに対し、小児ではめまい・ふらつき・動作過敏が前面に出て、典型的な片頭痛症状が目立たないことがあるとされています。

前庭性片頭痛の発作はどのくらい続くのか?

現在の診断基準では、前庭症状の持続時間として主に5分~72時間が用いられています。

本レビューでも成人の多くはこの範囲に入っていましたが、実際の研究では数秒から数日までかなり幅広いことが示されています。

小児でも数秒程度の短い発作から数日続くものまであり、これが診断を難しくする一因になっています。

論文中で示されている診断の基本形は、

  • ① 中等度~重度の前庭症状が5回以上
  • ② 5分~72時間持続
  • ③ 現在または過去に片頭痛の既往
  • ④ 50%以上の発作で頭痛、光・音過敏、視覚性前兆などの片頭痛徴候を伴う
  • ⑤ 他疾患でより適切に説明できない

というものです。

女性に多い

もう一つ一貫していた特徴が、女性優位です。

小児・成人のいずれの研究でも女性優位が認められ、本論文では「前庭性片頭痛の性差はすでに小児期から存在している可能性」が指摘されています。

前庭性片頭痛の診断で重要な点

この論文から臨床的に特に重要なのは、

反復性のめまいを診たとき、頭痛が主訴でなくても前庭性片頭痛を鑑別に入れる

という点だと思います。

特に、

  • めまい + 悪心
  • めまい + 光過敏・音過敏
  • めまい + 乗り物酔い
  • めまい + 片頭痛の既往・家族歴

という組み合わせは前庭性片頭痛を疑う手掛かりになります。

一方、鑑別としては

  • メニエール病
  • BPPV(良性発作性頭位めまい症)
  • 前庭神経炎
  • 血管性めまい
  • PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)
  • 原発性自律神経機能障害
  • 脳幹性前兆を伴う片頭痛
  • TIA(一過性脳虚血発作)
  • 発作性失調症2型

などが挙げられています。特にメニエール病との鑑別は難しく、両者の診断基準を同時に満たす患者も報告されています。

前庭性片頭痛の治療薬は何が有効か?

2025年、Vasireddyらは、前庭性片頭痛の予防治療を比較したシステマティックレビュー+ネットワークメタ解析を報告しています3)

解析された治療は、すべて対照群より月間めまい発作を有意に減少させました。

順位は次のようになりました。

前庭性片頭痛の予防治療・有効性の比較

(フルナリジンは日本では現在発売中止)

統計学的な順位では、

プロプラノロール(インデラル)が1位

でした。

しかし、プロプラノロールの効果は直接プラセボと比較した結果ではなく、すべて間接エビデンスから推定されています。

そのためエビデンスの確実性は「Low」です。

一方、最もエビデンスの確実性が高かったのはガルカネズマブ(エムガルティ)

でした。

ガルカネズマブはプラセボとの直接比較があり、研究のバイアスリスクも低く、GRADEでは唯一Moderate certaintyでした。

したがって著者らは、

「効果の大きさ」だけでなく「エビデンスの質」も考慮して治療を選択すべき

としています。

この結果も踏まえ、著者らはガルカネズマブが有効性・忍容性・エビデンスの質のバランスに優れていると評価しています。

治療薬をどのように選択するか?

効果を重視
→ プロプラノロール(インデラル)

エビデンスの質・忍容性を重視
→ ガルカネズマブ(エムガルティ)

代替選択肢
ベンラファキシン(イフェクサー)

忍容性に注意
バルプロ酸(デパケン・デパケンR・セレニカR・バレリン)

という位置づけになると考えられます。

ただし、治療選択は順位だけではなく、併存疾患、禁忌、副作用、患者の希望などを考慮して個別化する必要があると著者らは強調しています。

文献

・1)Kim CH, et al.: Anxiety and Depression in Adults With Vestibular Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis. Laryngoscope, 136: 535-546, 2026.

・2)Alhajri LA, et al.: Prevalence and Clinical Features of Vestibular Migraine in Different Age Groups: Systematic Review and Meta-Analysis. NeuroSci, 7: 37, 2026.

・3)Vasireddy S, et al.: Comparative effectiveness and safety of preventive treatments for vestibular migraine: a systematic review and network meta-analysis. BMC Neurol, 25: 513, 2025.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医