公開日 2020.4.14
2018年に医学ジャーナル誌のLancetに急性期のうつ病に対する抗うつ薬の効果を比較した最新の論文が掲載されました1)。
下記の図は論文中のデータと図を日本で使用されている抗うつ薬に限定して再構成したものです(例外として基準薬としてのレボキセチンのみ表示しています)。
抗うつ薬間同士の直接比較
結果のまとめ
薬剤間の直接比較における有効性では、
- ボルチオキセチン(先発医薬品名:トリンテリックス®)
- エスシタロプラム(先発医薬品名:レクサプロ®)
- ミルタザピン(先発医薬品名:リフレックス®、レメロン®)
- アミトリプチリン(先発医薬品名:トリプタノール®)
- パロキセチン(先発医薬品名:パキシル®、パキシルCR®)
- ベンラファキシン(先発医薬品名:イフェクサーSR®)
が優れておりました。
また忍容性では
- ボルチオキセチン
- エスシタロプラム
- セルトラリン(先発医薬品名:ジェイゾロフト®)
が優れていたという結果でした。
有効性と忍容性の両方が優れているのは、ボルチオキセチン、エスシタロプラムでした。
患者さんそれぞれをしっかりと診察し薬を選択していきます
抗うつ薬を選択する際はこの結果だけが当てはまるわけではありません。
薬の効き目や副作用は個人差が大きく、また他にどのような心の状態、体の症状をもっているかで選択肢も変わってきます。
例えば痛みをお持ちでうつ状態であれば痛みにも効果があるデュロキセチン(先発医薬品名:サインバルタ®)2)を選択した方が良いでしょう。
またうつ病に全般性不安障害(全般不安症)という不安症を併せ持っている場合はボルチオキセチンは適さないかもしれません。
全般性不安障害に対する薬剤の効果を比較した論文ではボルチオキセチンはプラセボと有意差が見られない(効果が見いだせない)という結果3)でした(この論文についてはまた改めて触れたいと思います)。
実際の薬剤選択に際しては、このようにお一人お一人の状態を診て検討することになります。
おひとりで悩んでいませんか?
うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。
文献
- 1)Cipriani, A., Furukawa, TA. et al. : Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis. Lancet, 391;1357-1366, 2018.
- 2)Finnerup, NB. et al. Pharmacotherapy for neuropathic pain in adults: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol, 14;162-73, 2015.
- 3) Slee, A. et al. : Pharmacological treatments for generalised anxiety disorder: a systematic review and network meta-analysis. Lancet, 393;768-777, 2019.
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