公開日 2023.2.13
作用・特徴
オランザピン(ジプレキサ)は、リスペリドンなどのSDA(セロトニン・ドパミン・アンタゴニスト)と呼ばれる第2世代抗精神病薬が拮抗作用を有するドパミンD2、セロトニン5-HT2に加え、セロトニン5-HT3、α1-アドレナリン、ヒスタミンH1受容体などに幅広く親和性を有し、これらの受容体には、拮抗作用として働きます。
多くの受容体に結合し作用することから、MARTA(Multi-Acting Receptor-Targeted Antipsychotic;多元受容体標的化抗精神病薬)と呼ばれています。
統合失調症の陽性症状、陰性症状、うつ症状に有効であることに加え、双極性障害の躁症状、うつ症状にも有効です1)~4)。
また、統合失調症の再発予防に対し有効性が高いこと、双極性障害の躁症状、うつ症状の再発予防効果も示されています5)、6)。
血糖値上昇のリスクがあり、糖尿病及ぶ糖尿病の既往がある場合は使用できません。
効能・効果
日本では以下の効能・効果で承認を得ています。
- 統合失調症
- 双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善
- 抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)
米国では「統合失調症(成人、青年期)」、「双極Ⅰ型障害における混合性及び躁病エピソー ド(成人、青年期)」、「双極Ⅰ型障害におけるうつ病エピソードに対するフルオキセチンとの併用療法(成人、小児及び青年期)」、「治療抵抗性うつ病に対するフルオキセチンとの併用療法(成人)」で承認を得ています。
欧州では「統合失調症」、「中~重度の躁病エピソード(成人)」、「双極性障害の再発予防(成人)」で承認を得ています(図1)。
図1 オランザピン(ジプレキサ)の各国の保険適応
用法・用量
統合失調症では、通常、成人では5~10mgを1日1回内服で開始します。
維持量として1日1回10mg内服します。
なお、年齢、症状により適宜増減します。
ただし、1日量は20mgを超えないこととなっています。
双極性障害における躁症状の改善では、通常、成人では10mgを1日1回内服で開始します。
なお、年齢、症状により適宜増減しますが、1日量は20mgを超えないこととなっています。
双極性障害におけるうつ症状の改善では、通常、成人では5mgを1日1回内服で開始し、その後1日1回10mgに増量します。
なお、いずれも就寝前に内服し、年齢、症状に応じ適宜増減しますが、1日量は20mgを超えないこととなっています。
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)では、他の制吐剤との併用において、通常、成人にはオランザピンとして5mgを1日1回内服します。
なお、状態により適宜増量しますが、1日量は10mgを超えないこととなっています。
薬物動態
オランザピンの肝臓での代謝では、はグルクロン酸転移酵素、フラビン含有モノオキシゲナーゼ、CYP1A2、CYP2D6が関与します。
SSRIのフルボキサミン(ルボックス・デプロメール)はCYP1A2の働きを阻害するため、併用により血中濃度が上昇します。
また、喫煙はCYP1A2を誘導するため、喫煙者ではオランザピンの血中濃度が減少します。
オランザピンを1回内服した際は、血中濃度は約3.5時間後に最高濃度の達し、約30時間後に半減します(図2)。
図2 オランザピン(ジプレキサ)を1回内服した際の血中濃度の推移
錠剤、細粒、口腔内崩壊錠で血中濃度の推移に差はみられません。
オランザピンを毎日内服すると、約1週間で一定の濃度に維持されます(図3)。
図3 オランザピン(ジプレキサ)を毎日内服した際の血中濃度の推移
食事による影響はありません。
副作用
治験時における調査では、580例中377例(65.0%)に副作用を認め、主なもの以下でした(図4)。
- 不眠症(20.9%)
- 傾眠(16.7%)
- 体重増加(16.4%)
- アカシジア(11.9%)
- 振戦(11.4%)
- 倦怠感(10.7%)
- 不安(10.0%)
- 激越(9.5%)
- 便秘(7.4%)
- 口渇(7.3%)
- 筋固縮(6.2%)
- 浮動性めまい(5.9%)
図4 オランザピン(ジプレキサ)の主な副作用
オランザピンは他の抗精神病薬と比較して体重増加、血糖値上昇のリスクが高いことが報告されています7)、(図5、6)。
図5 第2世代抗精神病薬における体重増加のリスクの比較
図6 第2世代抗精神病薬間における血糖値上昇のリスクの比較
抗精神病薬の体重増加、血糖値上昇等の代謝における副作用には、ヒスタミンH1受容体阻害、セロトニン5-HT2C受容体阻害、ムスカリンM1受容体阻害、ムスカリンM3受容体阻害が関与していることが報告されていました8)、9)、(図7、8)。
図7 第2世代抗精神病薬のヒスタミンH1受容体阻害率と体重増加の相関関係
図8 抗精神病薬のセロトニン5-HT2C受容体阻害率と体重増加の相関関係
クロザピンとオランザピンでは、中枢のムスカリンM3受容体阻害と膵臓のβ細胞におけるムスカリンM3受容体阻害作用における直接的・間接的なインスリン分泌への影響が、糖代謝の副作用をもたらすことが指摘されていました10)。
近年は、これらに加え、ヒスタミンH1受容体占有率、ムスカリンM1受容体占有率、ムスカリンM3受容体占有率が関与していることが報告されています11)、(図9)。
図9 第2世代抗精神病薬のムスカリンM3受容体占有率と血糖値上昇リスクの相関関係
オランザピンは内服用量の増加に伴い、体重の増加も増すこと(用量反応関係)が報告されています12)、13)、(図10)。
図10 オランザピン(ジプレキサ)の内服用量と体重増加の関係
文献
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- 3)Bahji A, et al. : Comparative efficacy and tolerability of pharmacological treatments for the treatment of acute bipolar depression: A systematic review and network meta-analysis. J Affect Disord, 269 : 154-184, 2020.
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- 9)Olten B, Bloch MH. : Meta regression: Relationship between antipsychotic receptor binding profiles and side-effects. Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, 84 : 272-281, 2018.
- 10)Grajales D, et al. : Second generation antipsychotic-induced type 2 diabetes: a role for the muscarinic M3 receptor. Cells, 8 : 1336, 2019.
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- 12)Wu H, et al. : Antipsychotic-Induced Weight Gain: Dose-Response Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Schizophr Bull, 48 : 643-654, 2021.
- 13)Sabé M, et al. : Comparative Effects of 11 Antipsychotics on Weight Gain and Metabolic Function in Patients With Acute Schizophrenia: A Dose-Response Meta-Analysis. J Clin Psychiatry, 84 : 22r14490, 2023.
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