鼻疾患と精神科・心療内科疾患の関連｜川崎市の高津心音メンタルクリニック高津区溝の口心療内科精神科

公開日 2024.11.11

アレルギー性鼻炎との関連について

アレルギー性鼻炎は鼻の症状だけでなく、心身相互に影響を与えることがわかっています。

Safiaらは、2024年9月にアレルギー性鼻炎が具体的にどの程度の心理的負担、精神的疾患に関与しているかを解析し報告しています1）。

報告では以下の順に高い関連が示されました（図1）。

ストレス
睡眠不足
苦痛
熟眠障害
不眠症
睡眠障害
うつ病
不安
自殺念慮
自殺未遂

図1 アレルギー性鼻炎と精神疾患との関連

アレルギー性鼻炎と精神疾患との関連

不眠症の関連は以前から指摘されており2）、不眠症の診断ではアレルギー性鼻炎の有無の確認は必須となっています。

今回の報告では、不眠症、睡眠障害に限らず、うつ病、不安等も関連することがあらためて示されました。

実際に、春や秋に花粉症を有する患者さんで、アレルギー性鼻炎の悪化とともに、不安症状が悪化する患者さんがいらっしゃいます。

この場合、精神科・心療内科での不安に対する治療だけでなく、アレルギー性鼻炎の治療を優先して行う必要があります。

また、Wangらは2024年10月、アレルギー性鼻炎とADHDの関連についての報告を行っています3）。

報告ではアレルギー性鼻炎を有する場合、ADHDの発症リスクが高くなり（OR=3.96）、（図2）、またADHD当事者は、アレルギー性鼻炎の発症リスクが、定型発達者より高くなる結果でした（OR=1.78）、（図3）。

図2 アレルギー性鼻炎患者におけるADHDの発症リスク

アレルギー性鼻炎患者におけるADHDの発症リスク

図3 ADHD当事者におけるアレルギー性鼻炎の発症リスク

ADHD当事者におけるアレルギー性鼻炎の発症リスク

副鼻腔炎との関連について

慢性副鼻腔炎はアレルギー性鼻炎と同様に鼻づまりなどの不快な症状の持続から、うつ病の有病率が高いことが指摘されています。

2024年3月、Fanらは、慢性副鼻腔炎患者におけるうつ病と不安症状の有病率の解析を行い、報告しています4）。

報告では、うつ病、不安症状は、慢性副鼻腔炎患者の24.7～29.7％と高い割合で認められる結果でした。

このことから著者らは、慢性副鼻腔炎患者に対し、うつ病と不安症状の早期のスクリーニングが重要であると述べています。

また、2024年9月、Khanらは、慢性副鼻腔炎患者がうつ病、不安を発症しやすいだけでなく、うつ病、不安症の患者も慢性副鼻腔炎を発症しやすく、リスクが双方向性であることを報告しています5）。

2024年1月、Almofada らは、慢性副鼻腔炎を治療することにより、うつ病スコアが改善することを報告しています6）、（図4）。

図4 副鼻腔炎症改善とうつ症状改善の関連

副鼻腔炎症改善とうつ症状改善の関連

このことから、慢性副鼻腔炎患者ではうつ病のスクリーニングを行い、うつ状態であれば、うつ病の治療だけでなく、慢性副鼻腔炎の治療も積極的に行っていくことが望ましいと言えます。

慢性副鼻腔炎は睡眠の質の低下とも関連していることが報告されています7）。

以下の順にリスクが高い結果でした（図5）。

いびき
早朝覚醒
日中の眠気
入眠困難
不眠症
中途覚醒

図5 慢性副鼻腔炎と睡眠障害のリスク

慢性副鼻腔炎と睡眠障害のリスク

アレルギー性鼻炎と同様に睡眠の質の確保のための副鼻腔炎治療という視点も重要といえます。

鼻中隔湾曲症との関連について

鼻中隔湾曲症はうつ、不安、不眠と関連していることが報告されています8）。

高齢者の嗅覚障害の要因になることも示されています9）。

empty nose syndrome（ENS）との関連について

empty nose syndrome（ENS）の患者の50％以上にうつ病と不安症を認め、約18％が強迫症の診断基準を満たすことが報告されています10）、11）。

各鼻疾患のうつ病有病率の比較では、empty nose syndrome（ENS）が高い割合でありことが、報告されています12）、（図6）。

図6 鼻疾患とうつ病の有病率

鼻疾患とうつ病の有病率

また、他の鼻疾患と同様に睡眠障害と関連することが示されており13）、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の併存が多いことも指摘されています14）。

参考

1） Safia A, et al.: A meta-analysis of the prevalence and risk of mental health problems in allergic rhinitis patients. J Psychosom Res, 184:111813, 2024.
2） Liu J, et al.: The association between allergic rhinitis and sleep: A systematic review and meta-analysis of observational studies. 15: e0228533, 2020.
3） Wang Q, et al.: The relationship between allergic rhinitis and attention deficit hyperactivity disorder: a systematic review and meta-analysis. PeerJ, 12: e18287, 2024.
4） Fan H, et al.: Prevalence and predictors of depression and anxiety in patients with chronic rhinosinusitis: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open, 14: e079273, 2024.
5） Khan NS, et al.: Chronic Rhinosinusitis and Mental Health. JAMA Otolaryngol Head Neck Surg, 2: e242705, 2024.
6） Almofada HS, et al.: Does Managing Patients With Chronic Rhinosinusitis Improve Their Depression Score? Prospective Study. J Otolaryngol Head Neck Surg, 53:19160216241248668, 2024.
7） Bengtsson C, et al.: Incident Chronic Rhinosinusitis Is Associated With Impaired Sleep Quality: Results of the RHINE Study. J Clin Sleep Med, 15: 899-905, 2019.
8） Fidan T, et al.: Neuropsychiatric symptoms, quality of sleep and quality of life in patients diagnosed with nasal septal deviation. Kulak Burun Bogaz Ihtis Derg, 21: 312-17, 2011.
9） Schubert CR, et al.: Olfactory impairment in older adults: five-year incidence and risk factors. Laryngoscope, 121: 873-8, 2011.
10） Kanjanawasee D, et al.: Empty Nose Syndrome Pathophysiology: A Systematic Review. Otolaryngol Head Neck Surg, 167: 434-451, 2022.
11） Lamb M, et al.: Mental health burden of empty nose syndrome compared to chronic rhinosinusitis and chronic rhinitis. Int Forum Allergy Rhinol, 12: 1340-1349, 2022.
12） Kim CH, et al.: The Degree of Stress in Patients With Empty Nose Syndrome, Compared With Chronic Rhinosinusitis and Allergic Rhinitis. Ear Nose Throat J, 100: NP87-NP92, 2021.
13） Huang CC, et al. Sleep impairment in patients with empty nose syndrome. Rhinology, 61: 47-53, 2023.
14） Huang CC, et al.: Identifying Obstructive Sleep Apnoea in Patients with Empty Nose Syndrome. 12: 1720, 2020.