公開日 2025.2.3
はじめに
ノロウイルス(図1)による感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが、特に冬季に流行します。
図1 ノロウイルス電子顕微鏡画像
ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。
健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したり、吐ぶつを誤って気道に詰まらせて死亡することがあります。
ノロウイルスについてはワクチンがなく、また、治療は輸液などの対症療法に限られます1)。
今期はインフルエンザの流行がみられたことからも、ノロウイルス感染症の流行も懸念されています。
ノロウイルス感染症と精神神経疾患
韓国でのウイルス感染症と脳炎の関連を調べた調査では、全年齢層でコロナウイルスが、20歳代以上でノロウイルスが、60歳以上でインフルエンザウイルスが脳炎との関連がみられました2)。
まれではあるものの、ノロウイルスの脳炎では予後が悪いことが報告されており、注意を要します3)。
ストレスの身体化や不安を有する当事者は、ノロウイルスなどの消化器感染症に感染すると、その後の過敏性腸症候群(PI-IBS: 感染後過敏性腸症候群)の発症リスクが高まることが報告されています4)。
精神科病棟を対象としたノロウイルス感染の調査では、急性精神疾患患者の感受性が高かったことが報告されています5)。
また、認知症患者が入居する老人施設での、感染拡大の起こりやすさも指摘されています6)。
精神科領域では、ノロウイルス感染症に対しては、精神科当事者の個人ベースの脆弱性と集団ベースのリスクの2点で捉える必要があるとされています。
当事者、支援者ともに基本的感染対策の手洗いが有効で、手洗いの徹底で福祉施設では約88%感染リスクを低下させることができるとされています7)。
集団ベースでの感染予防では、以下が推奨されています8)。
- 1) 発生報告の標準化を図ること
- 2) 散発例の早期発見と隔離の強化を図ること
- 3) 特に高度に依存している入居者に接する職員の個人衛生の向上を図ること
- 4) 嘔吐物への曝露を避けるためのプロトコルを遵守すること
おわりに
ノロウイルス感染症はアルコール消毒が有効でないことや、環境への残留期間が長いことなども感染を拡大させやすい一因といえます。
精神科当事者や支援者は、特に施設において、感染への脆弱性があり、感染対策に準じた対応が必要といえます。
参考
- 1) 厚生労働省. ノロウイルスに関するQ&A.
- 2) Lee SJ, et al.: Seasonal Trends in the Prevalence and Incidence of Viral Encephalitis in Korea (2015-2019). J Clin Med, 12: 2003, 2023.
- 3) Shima T, et al.: A nationwide survey of norovirus-associated encephalitis/encephalopathy in Japan. Brain Dev, 41: 263-270, 2019.
- 4) Wouters MM, et al.: Psychological comorbidity increases the risk for postinfectious IBS partly by enhanced susceptibility to develop infectious gastroenteritis. Gut, 65: 1279-88, 2016.
- 5) Tseng CY, et al.: Characteristics of norovirus gastroenteritis outbreaks in a psychiatric centre. Epidemiol Infect, 139: 275-85, 2011.
- 6) Menezes FG, et al.: An outbreak of norovirus infection in a long-term care facility in Brazil. Einstein (Sao Paulo), 8: 410-3, 2010.
- 7) Assab R, et al.: The role of hand hygiene in controlling norovirus spread in nursing homes. BMC Infect Dis, 16:395, 2016.
- 8) Petrignani M, et al.: Norovirus introduction routes into nursing homes and risk factors for spread: a systematic review and meta-analysis of observational studies. J Hosp Infect, 89: 163-78, 2015.
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