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フルニトラゼパム(サイレース・ロヒプノール)
の特徴・作用・副作用

公開日 2023.7.31

作用・特徴

フルニトラゼパムは強力な催眠作用を有する睡眠剤です。

中間型ベンゾジアゼピン系睡眠剤に属し、入眠困難、中途覚醒に効果があります。

通常、一般的な睡眠剤で効果が得られない強い不眠に対し、限定的に使用されてきました。

フルニトラゼパムは、ニトラゼパム(先発医薬品名:ベンザリン・ネルボン)をもとに開発されました(図1)。

図1 ニトラゼパムとフルニトラゼパムの化学構造式

ニトラゼパムとフルニトラゼパムの化学構造式

ニトラゼパムより約5倍強い催眠作用を有し、筋弛緩作用、抗けいれん作用も有しています1)、(図2)。

図2 ニトラゼパムとフルニトラゼパムの作用の強さの比較

ニトラゼパムとフルニトラゼパムの作用の強さの比較

1984年からエーザイ株式会社からサイレースの商品名で、中外製薬からロヒプノールの商品名で発売されました。

フルニトラゼパムと同じく強力な催眠作用を有し、依存・耐性・離脱症状が問題になるとともに、犯罪に悪用がされることがあり、販売中止となったニメタゼパム(商品名:エリミン)と構造式が類似していることが知られています(図3)。

図3 ニトラゼパムとフルニトラゼパムの化学構造式

ニトラゼパムとフルニトラゼパムの化学構造式

このため、フルニトラゼパムも諸外国を含め、犯罪への利用が多くあり、各国で販売中止となっています。

日本では2018年にロヒプノールが発売中止になりましたが、これは犯罪使用などへの対策でなく、サイレースを発売しているエーザイ株式会社が、ロヒプノールを発売している中外製薬から2017年に権利を委譲されたことにより、販売をサイレースに1本化したためです。

剤型

錠剤が1mg錠と2mg錠があります(図4)。

注射液2mgもあります(図5)。

図4 フルニトラゼパム(先発医薬品:サイレース)の剤型(錠剤)

フルニトラゼパム(先発医薬品:サイレース)の剤型(錠剤)

図5 サイレース注射液の剤型

サイレース注射液の剤型

錠剤にはあえて青色の色素を混ぜており、水に溶かしたりすると青くなるようして、犯罪等への使用の抑止が図られています。

効能・効果

効能・効果は不眠症、麻酔前投薬となっています。

用法・用量

用法・用量は、通常成人1回、0.5~2mgを就寝前又は手術前に内服します。

なお、年齢・症状により適宜増減しますが、高齢者には1回1mgまでとするとなっています。

薬物動態

フルニトラゼパム2mgを1回内服した際は、血液中の濃度は約45分で最高濃度に達し、約21時間後に半減します(図6)。

図6 フルニトラゼパム2mgを1回内服した際の血中濃度の推移

フルニトラゼパム2mgを1回内服した際の血中濃度の推移

フルニトラゼパム2mgを毎日内服すると、3日目から5日目で一定の濃度に達し、最高血中濃度は1日1回内服時の約1.3倍となります2)、(図7)。

図7 フルニトラゼパム2mgを毎日内服した際の血中濃度

フルニトラゼパム2mgを毎日内服した際の血中濃度

食後に内服すると、最高血中濃度は空腹時内服の半分ほどしか上昇せず、約3.5時間で最高濃度に達するため、空腹時より効果発現が遅れます3)、(図8)。

図8 フルニトラゼパム2mgを空腹時と食後に内服した際の血中濃度の推移

フルニトラゼパム2mgを空腹時と食後に内服した際の血中濃度の推移

フルニトラゼパム2mgを静脈内投与した際は、投与直後に最高濃度に達し、3相性に半減します。

約8分後に1相目の半減となり、約2時間後に2相目の半減となり、約24時間後に3相目の半減となります(図9)。

図9 フルニトラゼパム2mgを静脈内投与した際の血中濃度の推移

フルニトラゼパム2mgを静脈内投与した際の血中濃度の推移

内服での初回通過効果は約50%で、肝臓で主としてCYP3A4によって代謝されます4)、(図10)。

図10 フルニトラゼパムの肝臓での代謝

フルニトラゼパムの肝臓での代謝

代謝後は主として尿中に排泄されます。

副作用

調査症例13,205例中792例に副作用発現を認め、代表的なものは以下でした。

  • ふらつき(1.89%)
  • 眠気(1.81%)
  • 倦怠感(1.27%)

重大な副作用として以下があります。

  • 依存性
  • 呼吸抑制
  • 一過性前向性健忘、もうろう状態
  • 刺激興奮、錯乱
  • 意識障害
  • 肝機能障害
  • 横紋筋融解症
  • 悪性症候群

併用注意として以下が挙げられています。

  • アルコール
  • 中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体、鎮痛薬、麻酔薬等)
  • モノアミン酸化酵素阻害薬
  • シメチジン(先発医薬品名:タガメット)
    (タガメットは2023年4月販売終了となっています。)

飲酒との併用ではパフォーマンスに大きな影響を及ぼし、翌日朝の注意力に障害をもたらすことが報告されています5)。

スウェーデンの少年犯罪の調査では、フルニトラゼパムとアルコールの併用は記憶喪失、衝動的な暴力に関連していたことが報告されています6)。

文献

  • 1) 矢島 孝, 他. : Flunitrazepamの中枢薬理作用. 応用薬理, 21 : 123-142, 1981.
  • 2) 深沢 英雄, 他. : 健常日本人におけるFlunitrazepamの体内動態. 臨床薬理, 9 : 251-265, 1978.
  • 3) Bareggi SR, et al. : Effect of after-dinner administration on the pharmacokinetics of oral flunitrazepam and loprazolam. J Clin Pharmacol, 28 : 371-5, 1988.
  • 4) Hesse LM, et al. : CYP3A4 is the major CYP isoform mediating the in vitro hydroxylation and demethylation of flunitrazepam. Drug Metab Dispos, 2 : 133-40, 2001.
  • 5) Linnoila M, et al. : Effects of alcohol and flunitrazepam on mood and performance in healthy young men. J Clin Pharmacol, 21 : 430-5, 1981.
  • 6) Dåderman AM, Lidberg L. : Flunitrazepam (Rohypnol) abuse in combination with alcohol causes premeditated, grievous violence in male juvenile offenders. J Am Acad Psychiatry Law, 27 : 83-99, 1999.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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