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ジアゼパム(セルシン・ホリゾン)
の特徴・作用・副作用

公開日 2023.7.10

作用・特徴

ジアゼパムは抗不安作用、抗けいれん作用、筋弛緩作用をバランスよく有する薬剤です。

各ベンゾジアゼピン系抗不安薬の作用の強さを比較する際の基準となる薬です。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬として初めて開発された、クロルジアゼポキシド(先発医薬品名:コントール)に続き、ロシュ社のSternbachによって1960年に合成されました(図1)。

図1 クロルジアゼポキシドとジアゼパムの化学構造式

クロルジアゼポキシドとジアゼパムの化学構造式

先発医薬品は、武田テバ薬品社からセルシンの商品名で、丸石製薬社からホリゾンの商品名でそれぞれ発売されています。

抗不安薬としてだけでなく、抗けいれん作用を有するため、ロラゼパム(先発医薬品名:ワイパックス)クロナゼパム(先発医薬品名:ランドセン・リボトリール)とともにけいれんの治療にも使用されます。

特に坐薬のジアゼパム(商品名:ダイアップ)は小児科領域で熱性けいれんに使用されています。

また、主に抗精神病薬の副作用で生じるアカシジアの治療にも使用されます1)。

筋弛緩作用を有することから、クロナゼパムとともにジストニアの治療にも使用されます2)。

また、注射液はロラゼパムとともにカタトニア(緊張病)の治療に使用されることもあります3)、4)。

剤型

先発医薬品のセルシンは錠剤が2mg錠、5mg錠、10mg錠があります。

散剤(散1%)とシロップ(0.1%)があります。

先発医薬品のホリゾンは錠剤が2mg錠、5mg錠と散剤(散1%)があります(図2)。

図2 ジアゼパム(先発医薬品:セルシン・ホリゾン)の剤型(錠剤)

ジアゼパム(先発医薬品:セルシン・ホリゾン)の剤型(錠剤)

セルシンは注射液が5mgと10mgがあります。

ホリゾンは注射液が10mgがあります(図3)。

図3 セルシン・ホリゾンの注射液の剤型

セルシン・ホリゾンの注射液の剤型

先発医薬品のダイアップ坐薬には4mg、6mg、10mgあります(図4)。

図4 ダイアップ坐薬の剤型

ダイアップ坐薬の剤型

効能・効果

内服薬

内服薬の効能・効果は以下となっています。

  • 神経症における不安・緊張・抑うつ
  • うつ病における不安・緊張
  • 心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、更年期障害、腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ
  • 下記疾患における筋緊張の軽減
    脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛
  • 麻酔前投薬
注射液

注射液の効能・効果は以下となっています。

  • 神経症における不安・緊張・抑うつ
  • 下記疾患及び状態における不安・興奮・抑うつの軽減
    麻酔前、麻酔導入時、麻酔中、術後、アルコール依存症の禁断(離脱)症状、分娩時
  • 下記状態における痙攣の抑制
    てんかん様重積状態、有機リン中毒、カーバメート中毒
坐薬

坐薬の効能・効果は以下となっています。

  • 小児に対して次の目的に用いる
    熱性けいれん及びてんかんのけいれん発作の改善

用法・用量

内服薬

内服薬の用法・用量は、通常、成人では1回2~5mgを1日2~4回内服します。

ただし、外来患者では原則として 1日15mg以内とします。

また、小児に用いる場合には、3歳以下は1日量1~5mgを4~12歳は1日量2~10mgを、それぞれ1~3回に分けて内服します。

筋痙攣に用いる場合は、通常成人では1回2~10mgを1日3~4回内服します。

なお、年齢、症状により適宜増減します。

麻酔前投薬の場合は、通常成人では1回5~10mgを就寝前または手術前に内服します。

なお、年齢、症状、疾患により適宜増減します。

注射液

注射液の用法・用量は、疾患の種類、症状の程度、年齢及び体重などを考慮して用います。

一般に成人には、初回2mL(ジアゼパムとして10mg)を静脈内又は筋肉内に、できるだけ緩徐に注射します。

以後、必要に応じて3~4時間ごとに注射します。

静脈内に注射する場合には、なるべく太い静脈を選んで、できるだけ緩徐に(2分間以上の時間をかけて)注射します。

坐薬

坐薬の用法・用量は、通常、小児に1 回0.4~0.5mg/kgを1日1~2回、直腸内に挿入します。

なお、症状に応じて適宜増減しますが、1日1mg/kgを超えないようにします。

坐薬は内服薬に対し、抗けいれん作用は約1.8倍、筋弛緩作用は約1.6倍強く作用します5)。

不安とてんかんの治療に対する至適用量は示されていません6)、7)。

熱性けいれんでは、血中濃度150ng/mL以上が有効とされています8)。

薬物動態

1日1回10mgを内服した際は血液中の濃度は約1時間で最高濃度に達し、約27~28時間後に半分に下がります(図5)。

図5 ジアゼパム10mgを1回内服した際の血中濃度の推移

ジアゼパム10mgを1回内服した際の血中濃度の推移

毎日内服すると、約7日目に一定の濃度に維持されます。

主代謝産物のN-デスメチルジアゼパムは約14日目に一定の濃度に維持されます(図6)。

図6 ジアゼパムを毎日内服した際の血中濃度の推移

ジアゼパムを毎日内服した際の血中濃度の推移

静脈内投与では投与後より最高血中濃度に達し、2相性に半減します。

約6~28分後に1回目の半減を迎え、約12~56時間後に2回目の半減期となります。

坐薬は20~60分で最高血中濃度に達し、約12~45時間で半減します9)、10)、(図7)。

図7 ジアゼパムの静脈内投与と坐薬投与時の血中濃度の推移

ジアゼパムの静脈内投与と坐薬投与時の血中濃度の推移

筋肉内注射では1~24時間で最高血中濃度に達します11)。

ジアゼパムは主としてCYP2C19、CYP3A4によって代謝されます。

主代謝産物のN-デスメチルジアゼパム(通称ノルジアゼパム)も薬としての作用をもっています(薬理活性を有します)、12)、(図8)。

図8 ジアゼパムの代謝経路

ジアゼパムの代謝経路

代謝産物のテマゼパムは米国でレストリルの商品名で睡眠薬として承認されています。

同じく代謝産物のオキサゼパムも米国ではセラックスの商品名で抗不安薬として承認されています。

副作用

主な副作用は以下が報告されています。

  • 眠気(4.21%)
  • 疲労・倦怠感(0.9%)
  • ふらつき(0.84%)
  • 脱力感(0.66%)
  • 運動失調(0.45%)
  • めまい(0.42%)
  • 口渇(0.4%)

おひとりで悩んでいませんか?

不安症状がある場合は、我慢せずに心療内科・精神科に受診することをおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

文献

  • 1) Hirose S, Ashby CR. : Immediate effect of intravenous diazepam in neuroleptic-induced acute akathisia: an open-label study. J Clin Psychiatry, 63 : 524-7, 2002.
  • 2) Bragg DC, Sharma N. : Update on treatments for dystonia. Curr Neurol Neurosci Rep, 14 : 454, 2014.
  • 3) Huang TL. : Lorazepam and diazepam rapidly relieve catatonic signs in patients with schizophrenia. Psychiatry Clin Neurosci, 59 : 52-5, 2005.
  • 4) Hung YY, Huang TL. : Lorazepam and diazepam rapidly relieve catatonic features in major depression. Clin Neuropharmacol, 29 : 144-7, 2006.
  • 5) 花井 道夫, 他. : ジアゼパム坐薬の直腸内投与時の中枢作用に関する研究. 薬理と治療, 12 : 7213-7222, 1985.
  • 6) Tyrer P, et al. : Value of serum diazepam and nordiazepam measurements in anxious patients. J Affect Disord, 7 : 1-10, 1984.
  • 7) 日本神経学会. てんかん診療ガイドライン2018.
  • 8) Agurell S, et al. : Plasma levels of diazepam after parenteral and rectal administration in children. Epilepsia, 16 : 277-83, 1975.
  • 9) Dhillon S, Richens A. : Pharmacokinetics of diazepam in epileptic patients and normal volunteers following intravenous administration. Br J Clin Pharmacol, 12 : 841-4, 1981.
  • 10) Dhillon S, et al. : Bioavailability of diazepam after intravenous, oral and rectal administration in adult epileptic patients. Br J Clin Pharmacol, 13 : 427-32, 1982.
  • 11) Magnussen I, et al. ; Absorption of diazepam in man following rectal and parenteral administration. Acta Pharmacol Toxicol (Copenh), 45 : 87-90, 1979.
  • 12) Calcaterra NE, Barrow JC. : Classics in chemical neuroscience: diazepam (valium). ACS Chem Neurosci, 5 : 253-60, 2014.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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