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2024年上半期の
ASD・ADHDに関する主要な報告

公開日 2024.6.24

自閉スペクトラム症の易刺激性に対する薬理学的及び非薬理学的介入に対する効果の解析

2024年1月、Choiらは、自閉スペクトラム症の易刺激性に対する薬理学的及び非薬理学的介入に対する効果の解析を報告しました1)。

薬剤では従来通り、アリピプラゾール(先発医薬品名:エビリファイ)リスペリドン(先発医薬品名:リスパダール)が有効な結果でした。

今回の解析ではリスペリドンに対する補助療法の効果の解析も行われ、リスペリドン+トピラマート、リスペリドン+メマンチン、リスペリドン+スルフォラファン等の有効性も示されました(図1)。

図1 ASDの易刺激性に対するリスペリドンと補助療法の有効性

ASDの易刺激性に対するリスペリドンと補助療法の有効性

スルフォラファンはブロッコリーに多く含まれており、ASDの治療への研究が以前から行われていました。

自然由来の栄養成分で副作用が少なく、今後の更なる研究に期待がもたれます。

ASDとADHDの脳皮質の比較解析

ASDとADHDでは両者ともに注意の障がいの特性があることが知られています。

2024年3月、Youらは、ASD当事者とADHD当事者の脳画像の比較解析を行いました2)。

解析では、両者に共通して、デフォルトモードネットワーク上ある右側頭頭頂接合部の皮質の厚さが薄いことがわかりました(図2)。

図2 ASDとADHDに共通する脳構造変化

ASDとADHDに共通する脳構造変化

デフォルトモードネットワークはぼんやりしている時などに活性化している脳の機能的結合部位で、ASDでは社会的認知障害、ADHDでは注意欠如に関与しているとされています3)。

右側頭頭頂接合部は注意制御に関与しており、今回の画像解析の結果は、両者に共通した病態で、注意の障がいの特性が生じることを示唆しています。

ADHD治療薬に治療開始とADHD当事者の死亡率の低下の関連についての調査

2024年3月、Liらはスウェーデンのデータを用いて、ADHD当事者の薬物療法群と非投与群を比較し、診断から2年後の死亡率を比較した解析を報告しました4)。

報告では、薬物治療群では非投与群と比較して死亡率が低く、特に偶発的なケガや中毒などによる、不自然な死亡のリスクが有意に低い結果でした(図3)。

図3 ADHD治療薬による治療群と非投与群における死亡リスク

ADHD治療薬による治療群と非投与群における死亡リスク

ADHD当事者は健常者群と比較し、不自然な死亡率が高いことがわかっており5)、今回の研究は適切な薬物療法の介入が死亡を回避することに役立つ可能性を示唆しています。

著者らが考察で述べているように、ADHD治療薬により、不注意や衝動性などの中核的な特性が制御されることが、致命的なリスクの回避につながっていると考えられました。

妊娠間隔とASDリスクの関連

妊娠間隔とASDリスクについて報告はされていたものの、期間とリスクについて一貫した結果は得られていませんでした。

2024年3月、Zhangらは、妊娠間隔とASDリスクの関連について解析し、報告しました6)。

その結果、妊娠間隔36~60カ月の間が、リスクが軽減するという結果でした。

それより短い場合も長いもリスクが上昇するU字型のリスクを示す結果でした(図4)。

図4 妊娠間隔とASDリスクとの関連

妊娠間隔とASDリスクとの関連

ASDの性別による遺伝率の差の検討

自閉スペクトラム症(ASD)は女性と比較し、男性の方が多いことがわかっています。

2024年4月、Sandinらはスウェーデンの国民データベースを使用した、ASDの遺伝における男女差の解析を報告しました7)。

男性では遺伝率は87.0%で、女性では75.7%の結果で遺伝率に男女差が認められる結果でした(図5)。

図5 ASDの男女差と遺伝率の比較

妊娠間隔とASDリスクの関連

ASD当事者に女性より男性の方が多い理由に、今回の研究結果は、遺伝の関与が一定程度関与すること示唆します。

一方で著者らが述べているように、環境要因や文化的背景の違い等を十分考慮する必要があると考えられます。

ADHDの薬物治療が生活の質に与える影響

2024年5月、Bellatoらは、ADHD治療薬が生活の質に与える影響について、中枢刺激薬と非中枢刺激薬とを比較した解析が報告されました8)。

研究では、中枢刺激薬のメチルフェニデート(医薬品名:コンサータ)と非中枢刺激薬のアトモキセチン(先発医薬品名:ストラテラ)のいずれも、ADHD当事者の生活の質を改善させることが示されました(図6)。

図6 ADHD治療薬による生活の質の改善

ADHD治療薬による生活の質の改善

非中枢刺激薬のグアンファシン(医薬品名:インチュニブ)も有効性が示唆される結果でした。

一方で著者らは、治療薬のみでの介入には限界があり、薬物治療以外の介入や、薬物治療の副作用にも配慮することの重要性を考察で述べています。

特に副作用においては、長期使用において心血管疾患のリスクが増加することが報告されています9)、(図7)。

図7 ADHD治療薬の長期使用と心血管疾患リスクの関連

ADHD治療薬の長期使用と心血管疾患リスクの関連

参考

  • 1) Choi H, et al.: Pharmacological and non-pharmacological interventions for irritability in autism spectrum disorder: a systematic review and meta-analysis with the GRADE assessment. Mol Autism, 15:7, 2024.
  • 2) You W, et al.: Common and distinct cortical thickness alterations in youth with autism spectrum disorder and attention-deficit/hyperactivity disorder. BMC Med, 22: 92, 2024.
  • 3) Harikumar A, et al.: A Review of the Default Mode Network in Autism Spectrum Disorders and Attention Deficit Hyperactivity Disorder. Brain Connect, 11: 253-263, 2024.
  • 4) Li L, et al.: ADHD Pharmacotherapy and Mortality in Individuals With ADHD. JAMA, 331: 850-860, 2024.
  • 5) Catalá-López F, et al.: Mortality in Persons With Autism Spectrum Disorder or Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatr, 176: e216401, 2022.
  • 6) Zhang P, et al.: Association between interpregnancy interval and risk of autism spectrum disorder: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. Eur J Pediatr, 183: 1209-1221, 2024.
  • 7) Sandin S, et al.: Examining Sex Differences in Autism Heritability. JAMA Psychiatry, 17: e240525, 2024.
  • 8) Bellato A, et al.: Systematic Review and Meta-Analysis: Effects of Pharmacological Treatment for Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder on Quality of Life. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry, 30: S0890-8567, 2024.
  • 9) Zhang L, et al.: Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder Medications and Long-Term Risk of Cardiovascular Diseases. JAMA Psychiatry, 81: 178-187, 2024.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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