片頭痛の予防薬はどれがよいか?

2026.08.15

はじめに

片頭痛は、頭痛そのものだけでなく、吐き気や光・音への過敏、仕事や家事への支障などを伴い、生活の質を大きく低下させることがあります。

うつ病、双極症(躁うつ病・双極性障害)やADHD等との併存が多いことが知られています。

両者は相互に症状を悪化させるため、片頭痛の治療も必要となります。

発作が頻繁に起こる場合には、発作時の薬だけではなく、発作そのものを減らす「予防治療」が重要になります。

片頭痛の予防薬には、以下などがあります。

  • β遮断薬
  • 抗てんかん薬
  • カルシウム拮抗薬
  • 抗うつ薬

また、CGRPを標的とした新しい治療薬(ナルティーク等)など、多くの薬剤が使用されています。

では、これらの薬にはどの程度の違いがあるのでしょうか。

2026年6月、Khaliliらは片頭痛予防薬の有効性と忍容性を比較した、大規模な系統的レビュー・ネットワークメタ解析を報告しました。

この研究では、成人の反復性または慢性片頭痛を対象とした199件のランダム化比較試験(RCT)、計47,420人が解析されました。

研究者らは「1か月あたりの片頭痛・頭痛日数」「発作回数」「50%以上改善した人の割合」に加え、「治療中止」や「有害事象による治療中止」などについても比較しました。

つまり、単にどの薬が効くのかだけでなく、どの薬が続けやすいのかも検討した研究です。

1か月の片頭痛・頭痛日数を減らした薬剤は?

「1か月あたりの片頭痛/頭痛日数」については、108件のRCT、33,514人のデータが解析されました。

プラセボと比較した減少日数は、主な薬剤群で次のようになりました。

プラセボと比較した片頭痛の減少日数(片頭痛の予防効果の比較)

ただし、この数字だけを見て「NMDA受容体拮抗薬が最も優れている」と判断することはできません。

NMDA受容体拮抗薬については、エビデンスの確実性が低いのに対し、CGRP標的薬は高確実性、カルシウム拮抗薬とβ遮断薬は中等度の確実性と評価されているからです。

片頭痛の予防において「効くこと」と「続けられること」は別

片頭痛の予防治療では、効果が高くても、副作用のために薬を続けられなければ十分なメリットを得られません。

そこで重要になるのが有害事象による治療中止率です。

抗てんかん薬では、有害事象による中止リスクがプラセボの2.27倍(RR 2.27)でした。また、カルシウム拮抗薬では1.73倍(RR 1.73)でした。

一方、CGRP標的薬ではRR 1.25(95%CI 0.95–1.65)で、95%信頼区間は1をまたいでいました。

つまり、片頭痛予防薬を評価するときには、

「頭痛を何日減らせるか」だけでなく、「副作用のために中止する可能性がどの程度あるか」も同時に考える必要があります。

片頭痛の予防においてβ遮断薬とCGRP標的薬のバランスが良好

この研究で特に注目されるのが、β遮断薬とCGRP標的薬です。

中等度~高確実性のエビデンスに限定すると、著者らはこの2つについて、片頭痛の頻度を減らし、比較的忍容性にも優れた予防治療であると結論づけています。

カルシウム拮抗薬や抗てんかん薬についても片頭痛頻度を減らす効果が認められました。

しかし、一部の患者さんでは忍容性が問題となる可能性があります。

では、どの薬を選べばよいのでしょうか?

今回の研究から分かる大切なことは、「最も効果量の大きな薬=すべての患者さんにとって最も良い薬」ではないということです。

片頭痛の予防薬を選択するときには、以下の3つの視点から考えることが重要です。

予防効果 × 副作用・中止リスク × エビデンスの確実性

また、この研究では薬剤クラスの解析と、個々の薬剤を比較する解析が含まれています。

そのため、実際の治療では、同じ薬剤群の中でも個々の薬剤の効果や副作用、患者さんの合併症などを考慮して選択する必要があります。

片頭痛の予防における「実薬 vs 実薬」の結果は?

今回の解析で、薬剤間同士で有効性(1か月あたりの片頭痛/頭痛日数)において有意差がついたのは以下の4組です。

  • 1)メマンチン+トピラマート>トピラマート
  • 2.89日/月少ない(95% CI 0.31~5.47日
  • 2) メマンチン>トピラマート
  • 1.66日/月少ない(95% CI 0.09~3.23日)
  • 3) フレマネズマブ>トピラマート
  • 1.14日/月少ない(95% CI 0.17~2.11日)
  • 4) バルプロ酸>トピラマート
  • 0.95日/月少ない(95% CI 0.11~1.80日)

実薬間比較では、トピラマートと比較して、

が有効な結果でした。

トピラマートと比較して1カ月の片頭痛/頭痛日数が何日少なかったか

有害事象による中止はどのくすりが多かったか?

個々の薬剤別では以下の3剤が有害事象による中止のリスクが高い結果でした。

  • トピラマート:2.46
  • バルプロ酸:2.44
  • アミトリプチリン:2.33

薬剤群でなく個々の薬剤における有効性と忍容性の比較

片頭痛の予防薬の有効性と忍容性の比較

まとめ

今回の解析では、片頭痛の予防薬の中で、β遮断薬とCGRP標的薬は「効果」と「忍容性」のバランスに優れた選択肢であることが示されました。

一方、カルシウム拮抗薬や抗てんかん薬も有効でした。

しかし、治療中止につながる副作用には注意が必要です。

メマンチンも有効ですが、まだ他の薬剤と比べ研究の数が少なく使用には慎重を要します。

片頭痛の予防治療では、「一番強い薬」を探すことではありません。

十分な効果があり、無理なく継続できる治療を選ぶことが大切だと考えられます。

文献

1)Khalili M, et al.: Effectiveness and tolerability of pharmacological prophylaxis for migraine headaches: a systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ Evid Based Med, 3:bmjebm-2025-114222, 2026.

執筆者

院長 宮本 浩司(みやもと こうじ)

院長 宮本浩司

川崎市・溝の口の心療内科・精神科
高津心音メンタルクリニック
・ 精神保健指定医
・ 日本精神神経学会認定専門医・指導医