公開日 2022.2.27
2016年にMayo-Wilson, E,らは社交不安障害に対する心理療法、薬剤クラス間での有効性の比較の解析結果を報告しています 1)。
その中で薬剤クラス間での比較ではMAOI(モノアミン酸化酵素阻害薬)、ベンゾジアゼピンについでSSRIとSNRIが有効であることが示されています(図1)。
薬物治療では、効果と忍容性を考慮するとSSRIが推奨されると著者らは述べています。
図1 社交不安障害に対する薬物治療の比較 薬剤クラス間での比較
(図中の抗てんかん薬は主にプレガバリン(リリカ)、とガバペンチン(ガバペン)です。NaSSAはミルタザピン(リフレックス・レメロン)です。プレガバリン(リリカ)は日本では神経疼痛の薬として知られていますが、世界では抗てんかん薬として知られています。
抗てんかん薬であると同時に神経疼痛を緩和する薬であり、また抗不安作用も有しています。
そのため欧州では抗てんかん薬、神経疼痛に加え、全般性不安障害でも保険承認を得ています。
これは抗てんかん薬のカルバマゼピン(テグレトール)が抗てんかん作用も有し、三叉神経痛にも有効であり、躁状態にも有効であることや、バルプロ酸ナトリウム(デパケン、デパケンR、セレニカR)が抗てんかん薬であり、片頭痛予防に有効であり、気分安定薬であることと似た関係です。
逆に言うとこれらの疾患・症状が生物学的に類似した神経の過敏・興奮を共有していることを示唆しています。)
2020年にWilliams, T.らにより、社交不安障害に対する各薬剤の有効性と忍容性を比較した解析結果が報告されました2)。
症状の改善度ではパロキセチン(パキシル)が優れている結果でした。
SSRI間で比較すると、有効性と忍容性を考慮すると、パロキセチン(パキシル)が優れていました。
エスシタロプラム(レクサプロ)は忍容性が優れていました。
一方、フルボキサミン(ルボックス・デプロメール)は忍容性が低い結果でした。
セルトラリン(ジェイゾロフト)は全体のおおよそ中間に位置する結果でした(図2)。
図2 社交不安障害に対する薬物治療の比較 SSRI間での比較
各薬剤を有効性のみで見た場合、ベンゾジアゼピンのブロマゼパム(レキソタン)、クロナゼパム(ランドセン・リボトリール)、Brofaromine(モノアミンオキシダーゼA;発売中止)、Phenelzine(モノアミン酸化酵素阻害薬;発売中止)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)、フルボキサミン(ルボックス・デプロメール)の結果でした。
図3 社交不安障害に対する薬物治療の比較 有効性の順位
ベンゾジアゼピンはブロマゼパム(レキソタン)、クロナゼパム(ランドセン・リボトリール)のみが解析されており、他のベンゾジアゼピンより優れているという結果ではありません。
しかし、クロナゼパム(ランドセン・リボトリール)は日本でも以前から社交不安障害に対し使用され、有効性が支持されていたことから、今回の結果は従来の治療と矛盾しない結果と言えます。
今回の解析結果から著者らは第1選択としてパロキセチン(パキシル)が推奨されるとしています。
一方、薬剤選択では忍容性も重要であり、忍容性の高いエスシタロプラム(レクサプロ)の選択も検討されます。
薬剤選択(特ににパキシル)の際には忍容性、副作用を考慮する重要性を上述のMayo-Wilson, E,らも述べています。
文献
- 1) Mayo-Wilson E, et al. : Psychological and pharmacological interventions for social anxiety disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Psychiatry, 1 : 368-76, 2014.
- 2) Williams T, et al. : Pharmacological treatments for social anxiety disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis. Acta Neuropsychiatr, 32 : 169-176, 2020.
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