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リスペリドン(リスパダール)について

公開日 2023.1.30

作用・特徴

リスペリドン(リスパダール)はドパミンD2受容体拮抗作用とともにセロトニン5-HT2受容体拮抗作用を有し、SDA(セロトニン・ドパミン・アンタゴニスト)と呼ばれています。

ヤンセンファーマ社により1984年に開発され、日本では1996年に統合失調症に対し、保険承認を取得しました。

統合失調症の幻覚妄想、陰性症状の改善効果を有するとともに1)、ハロペリドール(セレネース)などの第1世代抗精神病薬で生じやすい錐体外路症状の発現が軽減しています。

また、統合失調症に対する効果だけでなく、双極性障害(躁うつ病)の躁状態に対する改善効果(抗躁作用)も有しています2)、(図1)。

図1 双極性障害急性躁病相に対する抗精神病薬の効果の比較

双極性障害急性躁病相に対する抗精神病薬の効果の比較

(図中のカリプラジン、ジプラシドンは日本未承認)

効能・効果

日本での保険承認は以下となっています。

  • 統合失調症
  • 小児の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性

米国では「統合失調症」、「双極Ⅰ型障害に関連する急性の躁病エピソード又は混合エピソードの治療に対する、単独療法又はリチウム若しくはバルプロ酸を用いた補助療法」、「自閉症性障害に関連する易刺激性の治療」に保険承認を得ています。

欧州では「統合失調症」、「双極性障害に伴う中等度~重度の躁状態の治療」、「中等度~重度のアルツハイマー型認知症患者の持続的攻撃性の短期治療」、「5歳以上の小児及び青少年の素行障害における持続的攻撃性の短期対症治療」に保険承認を得ています(図2)。

図2 リスペリドン(リスパダール)の各国の保険適応

リスペリドン(リスパダール)の各国の保険適応

日本でも統合失調症、双極性障害、自閉スペクトラム症、認知症の周辺症状(BPSD)等に使用されています。

チック症にも有効であることが示されており3)、4)、(図3)、チック症の治療に使用されることがあります。

図3 チック症に対する抗精神病薬の有効性

チック症に対する抗精神病薬の有効性

用法・用量

統合失調症では、通常、成人では1回1mg1日2回より開始し、徐々に増量します。

維持料は通常1日2~6mgを原則として1日2回に分けて内服します。

なお、年齢、症状により適宜増減します。

但し、1日量は12mgを超えないこととなっています。

用法及び用量に関連する注意として、リスペリドンの活性代謝物はパリペリドン(インヴェガ)であり、パリペリドン(インヴェガ)との併用により作用が増強するおそれがあるため、リスペリドンとパリペリドン(インヴェガ)を含有する経口製剤との併用は、避けることとなっています。

統合失調症における抗精神病薬の治療では、脳内ドパミンD2受容体の約60~80%内を占拠することが適正と考えられています5)。

リスペリドンは2~4mgが60~80%内を占拠することが報告されています6)、7)、(図4)。

図4 リスペリドン(リスパダール)の用量とドパミンD2受容内占拠率の関係

リスペリドン(リスパダール)の用量とドパミンD2受容内占拠率の関係

薬物動態

リスペリドンは肝臓の薬物代謝酵素CYP2D6で代謝され、CYP3A4も関与するとされています。

パロキセチン(パキシル)はCYP2D6の働きを阻害し、リスペリドンの血中濃度が上昇するため、用量調整が必要になります8)。

リスペリドンは肝臓で主要代謝物の9-ヒドロキシリスペリドン(パリペリドン:医薬品名インヴェガ)に代謝されます(図5)。

図5 リスペリドン(リスパダール)の代謝

リスペリドン(リスパダール)の代謝

リスペリドン1mgを1回内服すると、血液中の濃度は未変化体は約1時間で、9-ヒドロキシリスペリド(パリペリドン)は約3時間で最高濃度に達します。

未変化体は約4時間で、9-ヒドロキシリスペリド(パリペリドン)は約21時間で血液中の濃度が半減します(図6)。

図6 リスペリドン(リスパダール)を1回内服した際の未変化体と主代謝物の血中濃度の推移

リスペリドン(リスパダール)を1回内服した際の未変化体と主代謝物の血中濃度の推移

毎日内服すると、7日以内で血中濃度はほぼ一定に達します。

副作用

統合失調症患者を対象とした承認時及び再審査終了時における総症例4,625例中、1,445例に(31.2%)副作用が認められました。

主な副作用は以下のものでした(図7)。

  • アカシジア(5.0%)
  • 不眠症(4.1%)
  • 振戦(3.1%)
  • 便秘(3.0%)
  • 易刺激性(3.0%)
  • 傾眠(2.6%)
  • 流涎過多(2.5%)
  • 不安(2.4%)
  • 倦怠感(2.3%)
  • 筋固縮(2.0%)

図7 リスペリドン(リスパダール)の主な副作用

リスペリドン(リスパダール)の主な副作用

他の第2抗精神病薬との比較ではリスペリドンと主代謝物のパリペリドンは高プロラクチン血症のリスクが高いことが報告されています9)。

文献

  • 1)Kishi T, et al. : Efficacy and safety of antipsychotic treatments for schizophrenia: A systematic review and network meta-analysis of randomized trials in Japan. J Psychiatr Res, 138 : 444-452, 2021.
  • 2)Kishi T, et al. : Pharmacological treatment for bipolar mania: a systematic review and network meta-analysis of double-blind randomized controlled trials. Mol Psychiatry, 27 : 1136-1144, 2022.
  • 3)Farhat LC, et al. : Comparative efficacy, tolerability, and acceptability of pharmacological interventions for the treatment of children, adolescents, and young adults with Tourette's syndrome: a systematic review and network meta-analysis. Lancet Child Adolesc Health, 7 : 112-126, 2023.
  • 4)Pringsheim T, et al. : Comprehensive systematic review summary: Treatment of tics in people with Tourette syndrome and chronic tic disorders. Neurology, 92 : 907-915, 2019.
  • 5)Uchida H, et al. : Dopamine D2 receptor occupancy and clinical effects: a systematic review and pooled analysis. J Clin Psychopharmacol, 31 : 497-502, 2011.
  • 6)Nyberg S, et al. : Suggested minimal effective dose of risperidone based on PET-measured D2 and 5-HT2A receptor occupancy in schizophrenic patients. Am J Psychiatry, 156 : 869-75, 1999.
  • 7)Kapur S, et al. : The D2 dopamine receptor occupancy of risperidone and its relationship to extrapyramidal symptoms: a PET study. Life Sci, 57 : 103-7, 1995.
  • 8)Spina E, et al. : Plasma concentrations of risperidone and 9-hydroxyrisperidone during combined treatment with paroxetine. Ther Drug Monit, 23 : 223-7, 2001.
  • 9)Huhn M, et al. : Comparative efficacy and tolerability of 32 oral antipsychotics for the acute treatment of adults with multi-episode schizophrenia: a systematic review and network meta-analysis. Lancet, 394 : 939-951, 2019.

執筆者:高津心音メンタルクリニック 院長 宮本浩司

  • 精神保健指定医
  • 日本精神神経学会認定専門医・指導医

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